赤羽(Akabane)
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マッサージはスポーツのパフォーマンスアップや疲労回復にはほとんど効果がない…が他にメリットはあるかも!
以前紹介した2017年の系統的レビュー&メタ分析(#1)では、マッサージが運動後の疲労や筋肉痛を和らげるのに効果的なアプローチ!という結論になっていました。
今回はマッサージの効果を総合的に見たアップデート版を見ていきます。
【マッサージかストレッチか】運動後の筋肉痛や疲れから立ち治る最適なアプローチは?
過去研究をまとめたメタ分析の結果!マッサージはパフォーマンス向上にはほとんど効果がないが..
2020年にシェフィールド大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#2)によると、マッサージによって競技のパフォーマンスや疲労が直接改善することはほとんどない!という結論になっていました。ただ、他にも大事なポイントがありますので、順を追って紹介します。
この研究は、29件の過去研究から1,012名分のデータを集めたものでして、マッサージの以下のような項目への効果を総まとめしてくれています。
- スポーツパフォーマンス…筋力(11件)、ジャンプ(5件)、スプリント(7件)、筋持久力(3件)、柔軟性(7件)
- 回復効果…疲労(5件)、DOMS(10件)
冒頭の研究ではマッサージ以外にも色々なアプローチを含めて回復効果のみを検証していましたが、今回のはマッサージに焦点を絞ってスポーツパフォーマンス全般まで分析対象を広げています。
そして上記の分析結果をザックリまとめると、こんな感じです。
- マッサージはスポーツパフォーマンス全般に大した効果がなかった
- 但し、柔軟性やDOMS(筋肉痛)には僅かながら有意な効果が見られた(柔軟性…SMD 1.07, 95% CI 0.21 – 1.93; p<0.01; I2=90%, DOMS…SMD 1.13, 95% CI 0.44 – 1.82; p<0.05; I2=86%)
つまり、マッサージにはスポーツパフォーマンスを直接改善する効果はないが、柔軟性を高めたり筋肉痛を和らげたりして間接的にコンディションを善くしてくれる可能性はある!と。
ちなみに、上記の結果の中身を詳しくみると、「僅かに効果がある!」「大して効果がないようだ…」という報告が入り乱れているイメージです。そしてその中に、「マッサージ逆効果かも…?」という報告も一部含まれていました。何れにせよ、スポーツパフォーマンス全般には目覚ましい効果がないということは言えそうです。
注意点・まとめ
ただし注意点として、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 一件ずつのサンプルサイズは小さい: 各研究に含まれた参加者の数が少ない上に、マッサージの種類や分析項目が多岐に渡るため、各々の統計的なパワーを担保するには弱い
- 柔軟性やDOMSへの効果はばらつきが大きい: どちらも含まれたうち1件の研究で大きな効果が報告されており、これを除くと全体の効果は一貫してわずかなものだった
- マッサージは単発や数回のものがほとんど: ほとんどの研究では競技前に数十分マッサージを施すだけだった為、定期的に行なった場合の効果は分からない
項目を分けた時にまだデータが少なかったり、マッサージを長期的に行なった研究は全然含まれていませんでした。もしかすると、定期的に続ければもっと高い効果があるのかもしれません。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- マッサージによって競技のパフォーマンスや疲労が直接改善することはほとんどないが、柔軟性や筋肉痛は改善するという
- マッサージで直接、スポーツパフォーマンスを高めるのは難しいが、柔軟性を高めたり筋肉痛を和らげたりすることで、間接的にメリットを享受することはできるかも
- ただし、今回の結果は単発や短期間のものがほとんどなので、長期的なマッサージの効果は分からない
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Dupuy O, Douzi W, Theurot D, Bosquet L, Dugué B. An Evidence-Based Approach for Choosing Post-exercise Recovery Techniques to Reduce Markers of Muscle Damage, Soreness, Fatigue, and Inflammation: A Systematic Review With Meta-Analysis. Front Physiol. 2018;9:403. Published 2018 Apr 26. doi:10.3389/fphys.2018.00403
#2 Davis HL, Alabed S, Chico TJA. Effect of sports massage on performance and recovery: a systematic review and meta-analysis. BMJ Open Sport & Exercise Medicine 2020;6:e000614. doi: 10.1136/bmjsem-2019-000614