赤羽(Akabane)
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砂糖入り飲料や果汁100%のフルーツジュースでがん発症リスクが高まる?!
早速ですが、この件について新しい研究が出ていました。
フランス政府による調査データでわかった「ジュースとがんリスクの関係」
これは2019年にパリ13大学が発表した研究(#1)で、101257名の男女(平均42.2歳、男女比=8:2)を対象に、中央値5.1年間の調査期間で彼らの食事内容とがんリスクを追ったもの。
調査データにはフランスが政府規模で行っているコホートデータ「French NutriNet-Santé cohort」を使用して、対象者らの食事内容や身体情報、生活スタイルなどをセルフレポート(自己申告制)で6ヵ月ごとに刻んで報告させた様子。この手の研究は入り口の1回しかアンケートを取らないことが多いんで、この点ではナイスですね。
ちなみにここでいう「ジュース」の定義をハッキリさせておくと、
- 5%以上の単純糖質を含む飲料
- 100%フルーツジュース(砂糖添加なし)
- 一般的なソフトドリンク
- シロップ、その他フルーツジュース、ミルクベースのジュース
- スポーツドリンク、エナジードリンク
こういった条件のモノは全て含まれていた模様。つまりスーパーで売っているようなジュースはほぼ全部当てはまる、と。
で食事内容のデータから、砂糖入りジュースと人工甘味料入り飲料の消費量も調べて、その後のがん発症リスクとの関係を見ていきました。
するとこの調査の結果、2193件のがん発症が報告されて、こんなことがわかったようです。
- がん全般の発症リスクが18%増えた
- 特に乳がんの発症リスクは22%増えた
- 前立腺がんと直腸結腸がんリスクとは相関が見られなかった
- 一日100 mL増でがん全般の発症リスクは12%増えた
- 一日100 mL増でがん全般の発症リスクは19%増えた
- がん全般の発症リスクと優位な相関は見られなかった
どうやらジュースを飲む量が毎日ちょっとずつ増えるだけで、がん全般のリスクが徐々に高まっていくみたい。100mLは自販機で買える一缶の1/3未満の量なんで、かなり少量でもリスクを上げちゃうかもしれない、と。
考えられるメカニズムは…
ではジュースががん全般リスクを高めるメカニズムはどうなっているのでしょうか?考えられるメカニズムとしては次のような経路が挙げられます。
- 太り気味/肥満になること:体重の超過はあらゆるがんのリスクを上げる可能性
- 内臓脂肪の増加:脂肪細胞の分泌、伝達回路の変化によって発がんが促進される可能性
- 高GI値:インスリンの大量分泌や二型糖尿病に繋がる可能性
- 終末糖化産生物(AGEs):砂糖入り飲料にもいくらか含まれていて、体内に蓄積して発がんリスクを上げる可能性
- 全身の慢性炎症:上記4つとも関わり合って体内で発生、C反応性たんぱく質(CRP)などの炎症サイトカインは発がんリスクを上げる可能性
どの経路が大きく影響しているか?など詳しいところは分からないものの、どれもままあり得るメカニズムですね。
注意点・まとめ
ただしこの研究にも幾つか注意点があって、
- 食事内容の調査はセルフレポート:対象者らの主観やバイアスが混じりやすくて正確性には欠ける
- フランスのみの研究である:他の地域や文化でも同じような結果が得られるとは限らない
- 女性が多い:性別によって代謝やホルモン分泌など違いがあるし、男性よりも健康的な生活を意識している可能性がある
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。現に3つ目に関しては、女性のほうが一日当たり平均ジュース消費量が少ない傾向が確認されていますね。(男性:90.3 mL vs 女性:74.6 mL)
では以上を踏まえて今回のまとめといきましょう。
- 100%果汁のフルーツジュースも含めたジュース全般消費量はがん発症リスク増と相関があった
- 人工甘味料入りジュースでは相関は見られなかった
- ジュースによる発がんのメカニズムは結構あって信憑性は高いものの、今回出た数字は正確さに欠ける
こんな感じでしょうか。今回出た数字は正確とは言えないので、あくまで参考に程度に留めておくとよろしいかと思います。
赤羽(Akabane)
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#1 Eloi Chazelas, Bernard Srour, Elisa Desmetz, et al. Sugary drink consumption and risk of cancer: results from NutriNet-Santé prospective cohort. BMJ 2019; 366.