説得の心理学「スリーパー効果」とは?大規模研究でわかった発動条件や効果が高まるパターン

人間心理, 認知と五感

説得の心理学「スリーパー効果」とは?大規模研究でわかった発動条件や効果が高まるパターン

説得の心理学「スリーパー効果」とは?大規模研究でわかった発動条件や効果が高まるパターン

今回は「心理学で有名なスリーパー効果」についてのお話です。
 
 
スリーパー効果とは、最初は信用できない情報でも、時間が経つにつれて真実味が増してきたりする不思議な心理現象です。
 
 
最初にこの現象が確認されたのは1940年代の研究で、第二次世界大戦の米軍兵士たちを対象に、プロパガンダ映像を観てもらって、その後数週間で彼らの考え方を変えられるか?を調べていました。
 
 
映像の内容は彼らの立場とは反対の主張だったので、最初は彼らも「こんなのは信じられない!」と反対しましたが、時間が経つと、同じ立場でも映像を観た者と観なかった者では主張に大きな違いが見られました。つまり、映像を観た者の考え方が時間の経過とともにプロパガンダ寄りになっていた、と。
 

説得の心理学「スリーパー効果」が強力な力を発揮する条件とは?大規模なメタ分析の結果..

ではこのスリーパー効果、実際にどのくらい有効な心理現象なのでしょう?この疑問を調べたのが2004年にフロリダ大学が発表したメタ分析(#1)で、24件の研究結果をまとめて、ザっと以下のポイントを調べたものです。

 

  • スリーパー効果は一般化できる現象なのか?
  • スリーパー効果はメッセージが受け取られる状況や経過時間の長さによってどう変わるのか?
  • スリーパー効果はメッセージを受け取る側の特性によってどう変わるのか?

 

含まれた研究の特徴としては、アメリカで学生を対象にした研究が大半で、出版年の平均は1979年と結構古いデータが多い感じ。
 
 
参加者らがメッセージに説得されたかどうか?は実験中に2回以上はチェックしていて、1回目~2回目の間には平均2週間以上の期間が設けられたみたい。
 
 
でスリーパー効果とひと口に言っても、ここでは2種類あって、実験デザインによってこんな風に分けられました。

 

  • 絶対スリーパー効果:メッセージを受ける前と後で説得の度合いがどう変わっているかを指す場合(実験前後の変化)
  • 相対スリーパー効果:比較グループ(メッセージを受けない、初めから受け容れやすいメッセージを受け取る等)と説得の度合いを比較して効果が表れているかを指す場合(グループ間での変化)

 

つまり、何と比べてスリーパー効果を測定するのか?の違いですね。特に絶対のほうだと、最初に受け入れがたいメッセージを受け取った結果、反対意見が強くなって、それが時間の経過で薄れて結局元に戻るだけなんじゃないの?(マイナスからゼロになっただけ)みたいなこともあり得ますからね。こうしたブーメラン効果の可能性もしっかり調べる必要があったんですね。
 
 
では前置きはこの辺で、結果を見ていきましょう。

 

  • 絶対的に見るとブーメラン効果は確認されなかったが、逆に実験グループで、最初にメッセージを受け取る段階で説得度がちょっと高くなっていた
  • 相対的に見ると実験グループでは比較グループよりもわずかながら一貫したスリーパー効果が確認された(効果量d+ = 0.08)

 

ここから言えるのは、全体的に相対スリーパー効果が僅かに確認された!ということです。比較グループと比べると、最初に信用できないメッセージを受け取ったほうが、時間の経過でちょっぴりスリーパー効果が表れたんですね。
 
 
ちなみに【効果量d+ = 0.08】というのはそのまま「説得の効果の大きさ」を表していて、この数字は一般的にかなり小さいほうです。ただ、比較対象である「受け容れやすいメッセージを受け取る」グループでは、時間の経過と共に逆に説得の度合いが下がる傾向(効果量d+ = -0.21)が確認されていて、この結果と足し合わせれば「そこそこ効果はあるんじゃないかな?」と言えるのかなと思います。
 
 
また詳しく見てみると、こうした効果は①最初のメッセージのインパクトが強烈だった時②受け取る側にメッセージの背景知識が豊富 or 理解しようとするモチベーションが高い時で特に強く見られたようで、状況や受け取る側によっても大きく変わるという点は押さえておくとよろしいかと思います。
 

スリーパー効果が発動するメカニズムとは?

ではスリーパー効果はどうやって起こるんでしょう?メカニズムとしては【最初の「受け容れられない」という印象が時間の経過で忘れ去られていく】が最もあり得る話かと思います。
 
 
実際に、最初の印象を後になって忘れている程スリーパー効果が高く見られたようで、最初の印象がどんどん薄れていくことで、すんなりそのメッセージに説得されてしまう、という流れが濃厚ですね。
 
 
ただこれだけで全部説明がつくわけではないので、あくまでメカニズムの大事な一角を担っているという解釈になります。
 

注意点・まとめ

ただし今回の研究にも幾つか注意点があります。

 

  • 研究のサンプルサイズが小さい:メッセージを受ける実験グループに割り振られたサンプルの数が一件当たり平均で27名しかおらず、統計的なパワーを発揮するのに十分でない
  • 説得に関する測定方法が有効なのか分からない:参加者らがメッセージに説得されたか?を調べる測定方法は態度や主張を聞き取りするものだったが、これらツールの有効性は実証できていない
  • データは多いが一般化できるかは分からない:研究の大半はアメリカで行われていて、学生を対象にした研究が多いので、国や人種、年齢などに多様性がなくて一般化できる内容かは分からない

 

まとめると、実験のデザイン的にまだ不安定な要素が多い印象です。傾向としてスリーパー効果は確認されたものの、詳しい部分については参考に程度に留めておいたほうが良いのかもしれません。
 
 
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

 

ポイント
  • スリーパー効果とは、最初は信用できない情報でも、時間が経つにつれて真実味が増してきたりする不思議な心理現象
  • 最初に受け入れがたいメッセージを受け取った場合、そうでない場合よりもスリーパー効果が確認された
  • こうした効果は、メッセージが何回も渡されたり、受け取る側にとって関連や背景知識がある情報だったりするとより高まった
 

実用的な場面を想定すると、最初にかなり反感を買うようなことを言ったときでも、時間の経過で徐々に相手もその意見を受け容れやすくなることがある、といった感じでしょうか。トランプ大統領はこのテクニックを上手く使っているんだろうな~と思います。

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赤羽(Akabane)

スリーパー効果も奥が深いですね。発動条件や効果が高まるパターンなどなど、詳しい部分は今後の追試に期待しましょう。心理学用語については度々触れているので、興味のある方は続きもご覧ください。

心理学用語について詳しくはこちらもどうぞ

参考文献&引用

#1 G. Tarcan Kumkale and Dolores Albarracín. The Sleeper Effect in Persuasion: A Meta-Analytic Review. Psychol Bull. 2004 Jan; 130(1): 143–172.