赤羽(Akabane)
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「写真を撮ったらSNSに…」その下心がリアルの楽しさを半減させてしまうかも
友達や家族との旅行、恋人とのデート…楽しい思い出を形に残すため、私たちは写真を撮ります。
その意図は色々あって、単に思い出に残すというだけではなくて、最近ではSNSにシェアをするため、なんていう狙いで写真を撮るケースも少なくないかと。
そこでこの記事では、楽しい思い出をSNSでシェアしたい!という下心が目の前の出来事にどんな影響をもたらすのか?見ていきましょう。
写真を撮る意図によってリアルの体験の楽しさはどう変わるのか?を調べた研究
2018年にニューヨーク大学が発表した研究(#1)によると、思い出に残すためというよりも、誰かにシェアしよう!という意図で写真を撮ると目の前の体験の愉しみが半減してしまうようです。
この研究では5つの実験を行なっていて、全体を通して研究チームが掲げた仮説は以下の通りです。
- 思い出にするために写真を撮る場合と比べて、他人とシェアしようという意図で撮った場合は、目の前の体験の楽しさが減ってしまうのではないか
- 同時に、写真に映る自分の見映えや、他人からどう見られるか?が気になってしまうのではないか
- こうした懸念によって、直接的に楽しさが減るうえに、目の前の体験への意識が逸らされることで間接的にも楽しさが減ってしまうのではないか
例えばある実験では、フィラデルフィアのロッキー像前に並んで写真の順番待ちをしている観光客153名を対象にして、写真を撮る目的とその時のワクワク度を選択肢から選んでもらう調査を行なっていたり…。
はたまたラボで行われた実験では、207名の学生を対象に、3分間のアフリカ探検をバーチャル体験してもらい、彼らを①思い出として残すために道中写真を撮る、②他人にシェアするために写真を撮る、③両方のバランスを考えて写真を撮る、という3つのグループにランダムで割り振っていました。そして実験後、バーチャル体験がどのくらい楽しかったか?や自分が他人の目にどう映るかをどのくらい気にしてるか?といった項目をチェックしています。
するとこうした実験の結果、一貫してこんなことが分かったようです。
- 写真を思い出に残そうという気持ちよりも他人にシェアしようという気持ちが強い場合、目の前の体験に対する楽しさが減ってしまう傾向が見られた
- 同時に自分がどう見られるか?といった自己表現の部分において、体験中の不安感が高い傾向も見られた
- ただし写真をシェアするのが親しい友達だけであれば、シェア目的の写真で楽しさが減ることもあまりなくなった
まとめると、SNSなどで他人にシェアしよう!という下心で写真を撮ろうとすると、目の前の出来事をフルに楽しめないということが分かりました。
ではどうして写真をシェアしようという下心で楽しさが減ってしまうのでしょう?考えられるメカニズムとして、以下が挙げられていました。
- 他人の目に留まるとなると、途端に自分がどう見られるか?や見映えが気になってくるから
- 写真の映りに意識が向きすぎて目の前の体験への注意が逸らされてしまうから
どちらも、「写真をシェアしよう!」と思い立った結果、違うモノに意識がいってしまい、目の前の出来事をフルに楽しめなくなってしまうんじゃないか?という感じですね。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- シェア後の他人からのリアクションによる影響は考慮していない:あくまで、リアルの出来事の最中に「写真をシェアしよう!」という意図で写真を撮った場合の楽しさについての研究である
- 「楽しさ」についてもその瞬間の気持ちしか調査していない:上記のような実験デザインである以上、長い目で見た「楽しさ」の感覚までは調べられていない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- リアルな体験を写真に残す目的には、思い出用からSNSでのシェアまで様々ある
- 写真を思い出に残そうという気持ちよりも他人にシェアしようという気持ちが強い場合、目の前の体験に対する楽しさが減ってしまう傾向が見られた
- 他人の目に自分の写真がどう映るか?が気になったり、写真に意識が向きすぎて目の前の体験が疎かになってしまうことが原因だと考えられる
赤羽(Akabane)
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#1 Alixandra Barasch, Gal Zauberman, Kristin Diehl, How the Intention to Share Can Undermine Enjoyment: Photo-Taking Goals and Evaluation of Experiences, Journal of Consumer Research, Volume 44, Issue 6, April 2018, Pages 1220–1237.