赤羽(Akabane)
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【脳科学的にも判明】第三者の視点からのセルフトークで感情コントロールがお手軽に上手くなる?
この記事では、こうしたテーマについて参考になるデータを見ていきます。
第三者の視点から客観的に語りかける「セルフトーク」が省エネで感情コントロールを促進
2017年にミシガン大学が発表した研究(#1)によると、第三者の視点から自分自身に語りかけるセルフトークは感情コントロールに効果的だ!ということが分かりました。
この研究では、大きく2つの実験を行っていまして、概要をまとめるとザっとこんな感じでした。
- 実験1…29名の学生を対象に、彼らの脳の事象関連電位(ERP)を測定しつつ、嫌悪感を抱くような写真と普通な写真を織り交ぜて見せる。また、この時、揺さぶられた感情を整えるためにセルフトークを行ってもらい、その方法は「一人称」と「三人称」で自問するパターンに分けられ、この時のERPを比べた。
- 実験2…50名の学生を対象に、上記の内容に加えて、fMRIを使って脳活動を測定した。また、感情の揺さぶりをよりリアルにするため、参加者らに過去にあった最も嫌な出来事を8つ、事前に書き出してもらい、これらの記憶の引き金となるようなキーフレーズがスクリーンに映し出される。その際に、同様のセルフトークで対処してもらい、脳の反応の違いをチェックした。
*ERP…外的・内的な要因に伴って引き起こされる脳の電位変動で、何もしなくても常に生じている「脳波」とは異なる。
ちなみに、セルフトークの具体的な内容は、一人称で「私は今どんな気持ちだろうか?」、三人称で「ジョン(自分の名前)は今どんな気持ちだろうか?」みたいな感じでした。後者の方が、より客観的な視点で自分を見ることができそうですね。
そして上記の実験の結果、以下のようなことが分かりました。
- 実験1の結果、三人称視点でセルフトークを行なった場合、一人称よりもERPが感情のコントロールを示す内容だった
- 実験2の結果、三人称視点でセルフトークを行なった場合、一人称よりも、理性や認知の制御に関わる「左内側前頭前皮質」と「前帯状皮質」の活動が低下していた
まとめると、第三者の視点からセルフトークをおこなうことで、脳科学的にも省エネしながら感情コントロールができる!という感じでしょうか。
実験2の結果の解釈は、ザっと以下のような感じになります。
- ERPが感情のコントロールを示す内容だった
- 一方で、fMRIによって測定した「理性」や「認知の制御」などに関わる部位が、活性化ではなくむしろ落ち着いていた
- → 脳の容量を使わずに感情の制御が出来ているということでは?!
客観的に自分を眺める「メタ認知」的視点
今回のように、第三者の視点から客観的に自分自身を見つめることを、「メタ認知」とも呼びます。イメージは以下の画像の通りです。
詳しくは以下で取り上げていますが、緊張や不安、ストレスまであらゆるメンタルコントロールに効果的とされている手法です。
「メタ認知」の意味とは?勉強やスポーツの成績を効率的に伸ばすための活用法注意点・まとめ
ただし今回の研究にも注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 対象は同大学の学生のみ: 他の年齢層や文化圏の人でどこまで同様の結果が得られるか?は分からない
- サンプルサイズは小さい: 2つの実験を合わせて100未満であり、統計的なパワーは弱め
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 自分自身を客観視するために、あえて三人称の視点で自分に語りかける「セルフトーク」
- ネガティブな体験を想起させて、その感情に第三者の視点からのセルフトークで対処したところ、一人称のセルフトークよりも、脳の感情コントロールにまつわる部位が落ち着きつつ、感情コントロールはできていた(脳の容量の省エネ)
- このように、自分自身を客観視しようとすることを「メタ認知」とも呼び、メンタルのセルフコントロールに効果的との呼び声が高い
赤羽(Akabane)
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#1 Moser, J.S., Dougherty, A., Mattson, W.I. et al. Third-person self-talk facilitates emotion regulation without engaging cognitive control: Converging evidence from ERP and fMRI. Sci Rep 7, 4519 (2017). https://doi.org/10.1038/s41598-017-04047-3