赤羽(Akabane)
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「信頼できる人ってどんな人?」この問いの意外な答えとは?
この記事では、上記の疑問について面白いデータをみていきます。
「この人は信頼できる!」と思われる人の特徴…それは罪悪感。
2018年にシカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスの研究者らが発表した研究(#1)によると、信頼できる人だとよく思われる人には「罪悪感を感じやすい」という特徴があることが分かりました。
実験の概要に入る前に、「罪悪感を感じやすいってどういうこと?」という定義の部分だけはっきりさせておきましょう。似ている概念「羞恥心」と比べると、こんな感じです。
他人に対して間違ったことや傷つけるようなことを言う、するなどしてしまったとき…
- 罪悪感…申し訳なさを感じたり、相手に対してその埋め合わせをしようという気持ちになる
- 羞恥心…恥を感じて、してしまったことを周囲に悟られないように隠そうという気持ちになる
では本題へ戻ります。この研究は、信頼性に関する6つの実験を行ったもので、全体のテーマはザックリこんな感じでした。
- 罪悪感は信頼されやすい行動を取る傾向とリンクしているのか?
- 罪悪感は、性格特性のビッグ5と比べても、人の信頼性を予測する有力な要素なのか?
- 罪悪感が信頼性とリンクしているなら、そのメカニズムとは?
- そのメカニズムを基に、どんな人でも他人から見た信頼性を高めることができるのか?
実験の具体例を挙げると、今回の研究では、ほぼ一貫して「信頼ゲーム」の結果でその人の信頼度が測定されました。詳しい内容は以下の関連記事をご覧いただいたほうが分かり易いかと思いますが、実験でよく使われる、お金の投資にまつわるチーム戦のゲームの事です。

まとめると、罪悪感を感じやすかった人ほど、信頼ゲームで相手から信頼されやすい行動を取る傾向にあることが分かりました。具体的な例で見ると、ある実験では、「罪悪感の感じやすさ」が1ポイント上がる毎に、スコアが平均的な人と比べて、ペアにお金をちゃんと返す確率が1.64倍アップ、「罪悪感からその行為の埋め合わせをするか?」が1ポイント上がる毎に、1.60倍アップしたようです。
ちなみに、今回の実験では「メカニズムを応用すれば、罪悪感の感じやすさが低い人でも信頼されやすくなるんでは?」という可能性も検証済み。結果は、ペアへの責任感を感じさせるような状況では、罪悪感の感じやすさが低い人でも信頼されやすい行動を取るようになることが分かりました。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 現実のシチュエーションにどこまで応用できるか?は分からない: 今回の実験のほとんどが「信頼ゲーム」を舞台としているため、他の状況やリアルな人間関係にどこまで当てはまるか?は未知。
- 参加者は北米大陸の人のみ: 他の国や文化圏の人では、違った価値観を持っていることが想定されるので、結果がまた変わってくるかもしれない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 「信頼できる人ってどんな人?」この問いの一つの答えは「罪悪感を感じやすい人」
- 罪悪感の感じやすさと信頼されやすい行動の関連を調べた研究によると、罪悪感の感じやすさが高い人は、ビッグ5などの定番の性格特性を差し置いて、信頼されやすい行動を取る傾向が確認されたようだ
- 罪悪感の感じやすさと信頼されやすい行動がリンクするメカニズムとしては、彼らの対人関係における責任感の強さや、先回りして罪悪感に苛まれるような行動を避ける性質、善い行いを通してポジティブな気持ちになりたい欲求などが関係していることが分かった
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Levine EE, Bitterly TB, Cohen TR, Schweitzer ME. Who is trustworthy? Predicting trustworthy intentions and behavior. J Pers Soc Psychol. 2018;115(3):468‐494. doi:10.1037/pspi0000136