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クリティカルシンキングを育む上質な教育法「ソクラテス式問答法」の取り入れ方

クリティカルシンキングを育む上質な教育法「ソクラテス式問答法」の取り入れ方

赤羽(Akabane)

今回は「ソクラテス式問答法とは?教育現場で活用する秘訣や具体例はどんな感じ?」というお話です。

クリティカルシンキングを育む上質な教育法「ソクラテス式問答法」の取り入れ方

ソクラテスと言えば、古代ギリシャ期に活躍した有名な哲学者ですが、彼の逸話として有名なのは「無知の知」にまつわるお話でしょうか。

ソクラテスは、自分よりも賢い者を探し求めて、政治家や専門家など、その当時「賢者」として評判のあった人物に片っ端から会って話をしました。そして、彼らの知恵を確かめるべく、クリティカルな質問を浴びせ続けた結果、ある真実に辿り着きます。

賢者と言われている彼らも、自分でそう思ってはいても、実は知らないことの方が多いんじゃないか..? それなら、自分自身で「私はまだ世界の何も知らない」と自覚する者の方が、ずっと賢いのでは…?

ソクラテス自身は、決して悪気があった訳ではなくて、純粋な気持ちから問答を繰り返したんですが、これが賢者たちに恥をかかせる結果となってしまい、終いには「けしからんヤツだ!」ということで投獄されてしまいます。

というわけで、そんな逸話から生まれた「ソクラテス式問答法」について、教育での取り入れ方を見ていきましょう。

ソクラテス式問答法を教育現場に取り入れる

参考になるのが、インテルが主宰する「Intel® Teach Program」の資料(#1)でして、ソクラテス式問答の心構えから具体的な質問例まで、詳しく書かれています。

ではまず、ソクラテス式問答とは?というところから見ていきましょう。

ソクラテス式問答法とは?

ソクラテスが賢者たちにしたように、教育者が生徒に向けてクリティカルな質問をし、それに生徒たちが論理的に答えていくのを繰り返す、対話方式の学習法です。

ソクラテス式問答法は、より多くの生徒が積極的に授業に参加して考えるようになるので、いわゆるアクティブラーニングの実現がしやすいですね。また、質問に答えていくうちにクリティカルシンキングも上達すると考えられています。


ソクラテス式問答法を上手に取り入れる秘訣

ソクラテス式問答法を行う上で、幾つかの秘訣があるようです。

  1. 対話に意味や方向性をもたせるような質問を予め考えておくべし
  2. 質問の後、熟考してもらうために少なくとも30秒間は時間を置く
  3. 生徒たちの返答を拾って更に質問をぶつける
  4. 返答をもっと掘り下げるような質問をする
  5. 議論の内容はこまめに板書などにまとめて見えるようにする
  6. より多くの生徒を議論に引き込むようにする
  7. 教育者の質問によって生徒たちが新たな知見を自分自身の手で見つけられるように手助けをする

これを踏まえると、ソクラテス式問答法の真価を存分に発揮できるかは、大半が教育者の腕にかかっているということになりそうです。


ソクラテス式問答法の質問例

次に、ソクラテス式問答法の実際の質問例をカテゴリ別に見ていきます。

  • 明確化する質問
    • 〜とは、どういう意味ですか?
    • 何か別の言い表し方はありませんか?
    • 何が主な問題だと思いますか?
    • 何か例を挙げてもらえますか?
    • その視点について、もう少し踏み込むと?
  • 最初の質問・問題に関する質問
    • この問題はどうして重要なんだと思いますか?
    • この問題は答えるのが簡単ですか、それとも難しいですか?
    • それについて、どうしてそう思うのですか?
    • この問題を踏まえて、どんなことが推測できますか?
    • この問題は何か他の重要な問題につながりますか?
  • 推定する質問
    • どうしてそのような推測になるのでしょうか?
    • 〜はこの場面でどうしてそう推測するのでしょう?
    • 他には、どのような推測ができるでしょうか?
    • あなたは〜という風に推測しているんですね。
    • 私はあなたの推測を正しく理解できているでしょうか?
  • 理由・証拠の質問
    • 具体的にどんな例があるでしょう?
    • どうしてそれが正しいと思うのでしょう?
    • 他にはどんな情報が必要でしょうか?
    • そう思う理由を私たちに説明してくれますか?
    • どういった根拠でその結論に行き着いたのでしょうか?
    • その根拠を疑うに値する理由はないですか?
    • そのように思うに至った根拠はありますか?
  • 出どころ・ソースの質問
    • それはあなた独自の意見ですか、それともどこか別の場所で聞いたことですか?
    • 日頃からそのように感じているのですか?
    • あなたの意見は誰か、もしくは何かの影響を受けていますか?
    • どこでその意見を得たのですか?
    • 何がそう感じるきっかけになったのですか?
  • ニュアンス・結果の質問
    • それはどんな影響を与えるでしょうか?
    • それは本当に起こり得るでしょうか、それとも可能性としてあり得るということでしょうか?
    • 他に代わりとなる考えはありますか?
    • それはどういうことを意味してるのでしょう?
    • もしそうなったら、他にどんなことが起こりうるでしょうか?それは何故?
  • 視点の質問
    • 他のグループの人たちはこの質問にどう答えるでしょうか?
    • ~の反論に対して、あなたならどのように答えるでしょうか?
    • そういった意見の人たちにはどんな考えがあるのでしょうか?
    • 他に代わりとなる考え方はありますか?
    • 〇〇と△△はどんな点で似ているでしょうか?違いは?

共通しているのは、生徒が自分自身の意見や考えをより深めるための助けになるような質問だという事です。彼らの回答をしっかり拾って、そこから一歩踏み込んでみたり、別の可能性がないか探ってみたり、そう思うに至った理由を聞いてみたり、とにかく色々な方向からアプローチをかけていきます。


ソクラテス式問答法の対話例

最後に、ソクラテス式問答法の対話例を見てみましょう。

新型コロナウイルス感染が拡大してから、今世界はどうなっている?
感染拡大がもっともっと進んでいて、世界各国で「第二波が来た!」って言われてます。

生徒A

感染拡大が進んでいるというのはどこで知った情報でしょう?「第二波が来た!」とはどういうことでしょう?また、その話に根拠はありますか?
ニュースでもやってますし、ジョンズホプキンズ大学がリアルタイムで更新している最新のデータでも、すでに1500万人以上の感染者が報告されてます。第二波っていう表現は、最初の感染者急増から一旦落ち着いて、規制を緩和したらまた増加の波が押し寄せて来ているという現状に由来しているんだと思います。

生徒A

なるほど。他にこの問題について聞いたことがある人はいますか?
私もあります。そもそも第二波が来ているのは、第一波の時に感染者数の抑え込みに成功して、各国が規制を緩めたからだと聞いたことがあります。日本でも経済活動が再開して、外がまた人で溢れかえっているのをTVの映像で見たことがありますし、感染者も最近かなり増えてしまっていて危険なんじゃないかと思います。

生徒B

感染者が増えているというのはTVの情報だと思いますが、その傾向を危険と判断するには他にどんな情報が必要でしょうか?
正確な判断を下すのなら、感染者数の他に、PCR検査数や陽性率、重症患者の割合、残りの病床数も知っておいた方がいいかなと思います。でも、TVでは細かい数字は全然教えてくれません。

生徒B

では、そのことで私たちにはどんな影響がありそうですか?
例えば、本当は重症患者が多いのに全体の感染者数は少ないっていう時、みんなそれを知らずに安心して外に出ちゃうんじゃないかな、とか思います。その結果、感染者数はもっと増えちゃうみたいなこともあり得てくるんではないでしょうか。

生徒B

確かにそうですね。では今後、新型コロナウイルスの世界的な感染状況はどうなっていくと予想されますか?この問題について見通しがある人は?
僕は、新型コロナの感染拡大はこの先1年以上続いていくんじゃないかと予想してます。

生徒C

面白い意見ですね。Cさんの考えをみんなに聞かせてください。
感染症の推移を予測する「SIRモデル」っていう数理モデルがあるんです。これは、感染症の感染力と人口当たりの未感染者・感染者・免疫保持者のデータを参考に、今後の感染推移予測を立てていくものなんですが、数か月前に発表されたこうした予測が、今になって結構当たっていることが分かりまして。それで、この予測に照らすと来年、再来年くらいまでは新型コロナの影響が続くという見通しが立てられるんです。

生徒C

興味深い話ですね。ではその話の通りになったとして、現実にはどんな問題が起こると考えられますか?
世界中で経済活動が縮小して、資金繰りが難しくなった企業がどんどん経営破綻や倒産をしていくと思います。このたった2ヵ月弱でも、世界中で有名な企業が破産申請をしていたり、大規模なリストラも問題になっているようですから。

生徒C

それは可能性としてあり得ますね。色々な意見が出ましたが、ここまでのお話を一旦ホワイトボードにまとめてみましょう!

まとめ

赤羽(Akabane)

余談ですが、ソクラテス式問答法は認知行動療法なんかでも使われていて、不健全な思考のクセやメンタルの問題を治すのにも役立つと考えられています。メタ認知を鍛えたい方やロジカルな思考を身につけたい方は、ぜひ普段の暮らしにも取り入れてみてください。

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参考文献&引用

#1 Intel® Teach Program. Designing Effective Projects: Questioning The Socratic Questioning Technique. accessed on 19th July 2020.