赤羽(Akabane)
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社会に出て周りと協力できる人間は【アレに耐える能力】が高いらしい
早速ですが、この問題について興味深い研究を見ていきましょう。
周りと協力プレイできる人は不確実な未来への忍耐力があるらしい
これは2018年にポンペウフェブラ大学が発表した研究(#1)で、250名を対象に大きく3つの実験を行っています。
結論から言ってしまうと、答えは「不確実性(≒先の見えない未来)」でした。どういうことなのか?ここでは実験①を覗いてみましょう。
- ギャンブルタスク:103名の大学生(平均28.1歳)を対象に、まず参加に対して10ドルが支払われて、その後追加でもらえるボーナスをめぐってギャンブルゲームをしてもらう。ここで各参加者の不確実性に対する耐性を見てから次のゲームに移る
- パブリックタスク:次に他の参加者と一緒に協力するゲームを行った。このゲームは4人一組で一つの銀行のような場所を共有している。ラウンドごとに、各参加者は自分たちの銀行にドルを投資するか?するなら幾らか?を決める。で結果的に「投資された額×2」がチームに分配される。つまり一人の参加者が8ドル投資した場合、残りのただ乗り勢も皆4ドルはもらえるということ
実験①はザっとこんな流れでした。ギャンブルタスクでは、お金を増やせるかどうか?という確率の部分をいじって、参加者らがどのくらい不確実な未来に投資するか?をチェック。そしてチーム戦の協力プレイで、他人次第でどう転がるかわからない投資にどのくらい乗るか?をチェックしていったんですね。
こうした【不確実性への耐性と未来が曖昧な協力プレイへの貢献度の関係を調べる】といった趣旨の実験を3つ行った結果、こんなことがわかったようです。
- 不確実性への耐性がある人ほど結果が分からない投資や相手への信頼によって、周りに協力をする傾向が見られた
つまり、不確実な未来に耐える力がある人ほど、先の見えない投資でチームに協力していた、ということです。
ただ面白いことに、2つ目の実験ではこんなことも分かっています。
- 不確実性が後の協力行動に影響するのは、パートナーが信頼に値する人物だと思われていた時だけだった
つまり、そもそも「この人は信頼できそうだ」と思われていなければ、その後の結果が明確だろうがどうだろうが協力行動には結びつかなかったんですね。結局は信頼が大事みたい..この辺りは頷ける話で、協力すれば自分のメリットになる!と分かっていても、信用できない人物と一緒に組むのは..ちょっと…と気が引けますからね。
また面白いことに、3つ目の実験ではこんなことも分かっています。
- 不確実性に耐える力がある人は、不確実性が大きい状況では協力行動をする傾向があったが、自由にパートナーの情報収集をしても良かった場合、この傾向は消えた
つまり、不確実に耐える力がある人は、不確実性がある程度解決されてしまうと協力行動に結びつかなかったということ。
例えばパブリックタスクで言えば、周りが投資をするか?するなら幾らぐらいか?といった曖昧だった部分がハッキリしてくると、状況によっては協力するかどうか考え直す基準になりますからね。
まとめ
では最後に今回の内容をまとめて見ていきます。
- 不確実性に耐える力がある人ほど、先の見えない投資や周りへの信頼によってチームに協力する傾向が見られた
- ただしそもそも「信用ならない」と思われた人に対しては、先が明確であろうが協力行動が起こりにくかった
- パートナーやチームのメンバーに関する情報が多く集まって不確実性が薄まるほど、この傾向は見られなくなった
こんな感じでしょうか。先の分からない未来に対して努力できたり、何かを賭けられる人は、そんな状況でも周りと協力して動ける人なのかもしれません。
赤羽(Akabane)
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#1 Marc-Lluís Vives& Oriel FeldmanHall. Tolerance to ambiguous uncertainty predicts prosocial behavior. Nature Communications (2018) 9:2156.