赤羽(Akabane)
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他人が無礼な振る舞いをしているのを見ると認知的なパフォーマンスが落ちる
無礼な振る舞いをしている人を見かけると、何だかこちらまで嫌な気分になりますよね。
というわけで、この記事では「他人が無礼な振る舞いをしているのを見るとネガティブな影響が…」というデータを共有していきます。
無礼な人を見ると脳のパフォーマンスが落ちる?
2020年にテルアヴィヴ大学が発表した研究(#1)によると、無礼な態度を取る人を見ると脳のリソースを奪われてパフォーマンスが落ちるかもしれない事が分かりました。
この研究では、メーリングリストで募集した112名(平均28歳)を対象に、以下のような流れで実験を行いました。
- まず年齢や性別などの基本情報と共感力診断ツールに回答してもらう
- 結果を集計し、共感力の中央値を算出、その数値より上の人、下の人で大きく2グループに分類した
- 2種類の実験パターンを用意して、彼らを均等に振り分けた
- 実験は、まず1~2分ほどの映像を見てもらい、その内容に関する記憶テストを行うという流れ
映像の内容は、一方では①病院の待合室を舞台に、看護師が患者に罵られている様子、もう一方では②TV番組で隣り合った二人組が礼儀正しく話している様子を映していました。
そして、その後にそれぞれの映像に関する質問に答えてもらったり、アナグラムや創造性のタスクなどのテストを実施したようです。
*アナグラム…文字を入れ替えて単語を作るような問題
すると実験の結果、こんなことがわかりました。
- ①の映像を観たグループで、全体的にタスクのパフォーマンスが低かった
- 共感力が高く、①の映像を観た人は特に創造性や思考の柔軟性、流暢さが低下していた
まとめると、病院の待合室で無礼な人を観たグループでは、その後のタスクパフォーマンスが低い傾向が見られました。
では、どうしてこうなるのでしょうか?考えられているのは、無礼な振る舞いを見て感じる心理的なストレスが脳のリソースを奪ってしまうという線です。ストレスが思考力を低下させるのは既に明らかでして、この線が濃厚な感じはします。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 一部有意な効果ではない項目もある: 性別の影響を調整して偽陽性を確かめる分析をしたところ、例えば”流暢さ”の低下は有意な結果ではなくなった
- どこまで現実の体験に適用できるか分からない: 映像を通しての実験なので、リアルな体験よりは他人事に思えてしまうかもしれない(その分、現実的な結果が反映できていないかもしれないということ)
- 認知タスクや無礼な振る舞いのバリエーションが少ない: 例えば、ワーキングメモリの性能は調べていなかったり、無礼な振る舞いも看護師を罵る1パターンしか用意されていない
同様の結果は過去研究でもちらほら確認されていますが、認知のどんな領域に特に悪影響なのか?といった細かい部分はこれから追試が必要な印象です。また、無礼な振る舞いとひと口に言っても、色々な状況がありますからね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 他人が無礼な振る舞いをしているのを見ると認知的なパフォーマンスが落ちるようだ
- 今回の実験では、無礼な振る舞いが映った映像を観た参加者で、全体的な認知タスクの成績が落ちる傾向が確認された
- こうした傾向は、特に元の共感力が高い人で強く見られ、共感力が高い分、持っていかれる脳のリソースが多くなってしまった可能性が考えられる
赤羽(Akabane)
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#1 Gadi Gilam, Bar Horing, Ronny Sivan, Noam Weinman and Sean C. Mackey. The Decline in Task Performance After Witnessing Rudeness Is Moderated by Emotional Empathy—A Pilot Study. Front. Psychol., 07 July 2020.