赤羽(Akabane)
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認知行動療法の超新星「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)」とは?基本となる6つのポイントも解説
ではまずACTって何?というところから見ていきましょう。
認知行動療法の超新星「ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)」とは?
ACTは「Acceptance & Commitment Therapy」の略で、1999年に臨床心理学者のスティーブン・C・ヘイズ氏が提唱した認知行動療法の一種(#1)です。
その根底は、文字通り「受容の精神(アクセプタンス)」と「目標へ向けた実践の繰り返し(コミットメント)」にあります。目の前で起きる出来事を受け容れて開放的になりつつ、目標に向けたテクニックをどんどん実践、そして巻き起こる感情や出来事に対して歪んだ解釈をしないようになることを目的にしています。
ACTはその頭文字をとって、
- A(acceptance):感情や状況の変化をあるがままに「受け容れる」
- C(choose):自分にとって価値あるものを「選ぶ」
- T(take action):選んだものを「実行する」
こんな風に表現されることもありますね。正に言い得て妙という感じかと思います。
ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の基本モデル6つのポイント
では次にACTの基本治療モデルとなる6つのポイントについてです。2010年に吉備国際大学が発表したレビュー研究(#2)を参考に見ていきます。
ACTの6つのポイントはよく六芒星のような図で解説されることが多くて、次のような感じです。
これら6つが治療を成功させるうえでどれも欠かせない大事なものだ、と。全体的にマインドフルネスと通ずるものがありますね。
ちなみに「脱フュージョン」というのは、「出来事ー思考のパターン」といった既に定番化した思考の一連の流れを切り離すテクニックのこと。具体例として、次のようなネガティブ思考の流れがあるとしましょう。
出来事ー思考のパターン
- 出来事:休みの日は早起きしてジム!の予定が毎回寝坊してしまう
- 思考のパターン:自分はだらしのないダメ人間だ
これだとどんどん気分が悪い方向へいってしまいます。そこで、こうした思考の歪みに対して脱フュージョンを使ってみると、
- 「自分はだらしのないダメ人間だ!…と私は考えてみた」と文章風に言ってみる
- 「自分は~だらしのぉぉ~ないダメェェェェェ人間ッ!」などと歌ってみる
- 「ほんと私ってレイジーダメ太郎なんだから!」とネガティブな言葉に面白おかしいラベリングをしてみる
ザっとこんな風に対処できます。要はネガティブな思考の波にさらわれないように、一旦その波から距離を置くイメージですね。脱フュージョンのテクニック自体はたくさんあるので、その中からしっくりくるものを使えばよいかと思います。
ACT(アクセプタンス&コミットメントセラピー)の治療具体例
では最後にACTでの治療過程の例をザっと見ていきましょう。ここでは例として「あがり症」な人を対象にした治療の流れを挙げます。
- 失敗を恐がって人前で極度に緊張して上手く話せなくなってしまう:まず「失敗することが恐い」「人前で緊張してしまう」「結果的に上手く発声ができなくなる」といったネガティブな現状を受け容れる
- 徐々に症状は緩和したが、まだ人前で話す時にメンタルが敏感に反応することがある:脱フュージョンを使ってネガティブな感情に囚われないように対処していく
- 人前で話すことに抵抗がなくなってくる:治療が効いてきたら「人前でも普通に話ができている自分」という目標に向けて、初めて会う人ともどんどん交流を持ったり、人前で何かを発表する機会も持ってみる
まず自分の現状の立ち位置を客観的に把握して、それを受け容れる。最初こそこの作業が大変だけれども、徐々に「受け入れること自体も受け容れられる」ようになっていきます。
細かい段取りは、症状や個人に応じて変えていかなければいけないですが、最初にも挙げた「受容の精神」「目標へ向けた実践の繰り返し(コミットメント)」という根底は変わりません。
まとめ
では最後に今回のまとめといきましょう。
- ACTは「アクセプタンス&コミットメントセラピー」という認知行動療法の一種
- ACTで「Acceptance= 受容」「Choose= 選ぶ」「Take action= 行動する」と表現されることもある
- 基本の治療モデルを構成する6つのポイントは「今この瞬間との接触」「受容の精神」「認知的脱フュージョン」「価値の選択」「目標に向かって行動」「文脈としての自己」
この辺りを押さえておくと良さそうです。科学的にも信頼が厚い認知行動療法の新しいモデルです、と。
赤羽(Akabane)
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#1 Hayes, S. C., Strosahl, K. D., & Wilson, K. G. (1999). Acceptance and commitment therapy: An experiential approach to behavior change. New York, NY, US: Guilford Press.
#2 園田順一「ACTとは何か What is ACT ?」吉備国際大学,臨床心理相談研究所紀要,第7号,45-50,2010年。