赤羽(Akabane)
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ACT、CFT、マインドフルネス..定番のメンタル療法はセルフコンパッションに効果があるのか?
セルフコンパッションとは「自分に今より少し優しく接する」ことで、メインはついつい自分を責める癖があったり、無茶しすぎたりする方にフォーカスしたトレーニングになります。
詳しいやり方は記事最後のリンクをご覧ください。一旦先へ進みましょう。
CFT、ACT、マインドフルネスベースド…定番のメンタル療法はセルフコンパッションを高めてくれるのか?
この問題については、2019年にエディンバラ大学が発表したメタ分析(#1)が参考になりそうです。
この研究では、22件のRCTから1172名(平均40歳)を対象に、次の3つのメンタル療法の効果をまとめています。
- コンパッション・フォーカスト・セラピー(CFT):8件の研究で検証
- アクセプタンス&コミットメントセラピー(ACT):1件の研究で検証
- マインドフルネスベースド療法(MBT)13件の研究で検証
どれもセルフコンパッションを高めてくれる定番の治療です。各メンタル療法について詳しくは記事最後のリンクをご覧いただくとして、一旦先へ進みます。
ではまず全体の結論から見ていきましょう。
- セルフコンパッションを高めるのに中くらいの効果があった (g= 0.52, 95% CIs 0.32~0.71)
- 不安改善に中くらいの効果があった (g= 0.46, 95% CIs 0.25~0.66)
- うつ症状改善に中くらいの効果があった (g= 0.40, 95% CIs 0.23~0.57)
どうやら定番のメンタル療法たちは不安やうつ症状だけでなく、セルフコンパッションの強化にも結構な効果が見られたようですね。しかもこの結果には、バラつきもそこまで大きいわけではなくて、まあまあ一貫性のある効果だと捉えて良さそうです。
また今回対象だった22件のうち16件では、セルフコンパッション度を測定するテスト「SCS」を使っていた様子。ここから分かったのは、メンタル療法が効果をもたらす経路は、セルフコンパッションにとって良い特性を伸ばす方向よりも、悪い特性を和らげる方向に働いているということでした。
これについて具体例を見ていきましょう。
- 良い特性:「自分の失敗は、人間のありようの1つであると考えるようにしている。」
- 悪い特性:「自分自身の欠点や不十分なところについて、不満に思っているし、批判的である。」
2つとも「SCS」の実際の質問文です。つまりメンタル療法がセルフコンパッションに効果的なのは、このうちの悪い特性を弱める方向に働いているからなんですね。
注意点・まとめ
ただし注意点も幾つかあります。
- 別の治療法と比較した時には有意な効果はなかった:外来の心理療法や薬物療法などと比べると、あまり効果に差がなかった(≒ほぼ同レベルの効果)
- 全体の7割ちかくが女性だった:男女ではメンタル療法への反応も変わってくるので、男性にも同レベルの効果が見込めるとは断言できない
- ACTについては1件しかない:今回の結果は「ACT」のセルフコンパッションへの効果を裏付けるには弱いかも
それでは以上も踏まえて、今回のまとめを見ていきましょう。
- 定番のメンタル療法は軒並みセルフコンパッションを高めてくれる
- どちらかというとセルフコンパッションに悪影響な特性を弱める方向で働いてくれそう
- ただ、既存の心理療法や薬物療法などと比較すると効果はどっこいどっこい
こんな感じでしょうか。セルフコンパッションの向上はメンタルヘルス全体とも関係しているので、日ごろから意識したいですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Alexander C. Wilson, Kate Mackintosh, Kevin Power,Stella W. Y. Chan. Effectiveness of Self-Compassion Related Therapies: a Systematic Review and Meta-analysis. Mindfulness, June 2019, Volume 10, Issue 6, pp 979–995.