赤羽(Akabane)
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寝酒は睡眠の質を下げる
寝る前のお酒で睡眠の質が下がる!というのは有名な話。ザっとその仕組みを書きだすと、
- アルコールによる酔いで入眠は楽になる
- しかし眠っている間アルコールの代謝に体が奮闘する
- 心拍数が上がって交感神経が優位に
- 睡眠の質が下がる
このような感じ。実際に寝酒で気持ちよく眠れるという方は結構居るみたいですが、実際のところ体はそんなに休まっていないんですね。
この問題については、私も過去に自分の体でデータを取ってみたことがありまして、数字がものすごいことになってました。ご参考までに以下をザっとご覧いただくとよろしいかと思います。

たった一杯のアルコールでもその晩の睡眠の質を下げる?
といったところで、今回は「寝る前に飲む酒はどのくらいだと睡眠を邪魔するの?」という疑問について面白い研究が出ていたので紹介します。
2018年にフィンランドのユヴァスキュラ大学が発表した研究(#1)では、アルコール摂取が自律神経や睡眠に与える影響について調べてくれていました。研究の中身はザっとこんな感じです。
- フィンランドの4098名の男女(平均45.1歳、太り気味)を対象に、
- アルコールを摂取した日/しなかった日それぞれの心拍変動データを最低1日から記録した
- 心拍変動データは入眠3時間のデータの平均を使った
心拍変動というのは心拍の揺らぎのことで、簡単に言うとコレが高いと体が回復していてストレスへの適応力も高い状態なんですね。詳しくはこちらをザっとご覧いただければと。

そして今回の結果は大きく2パターンで比較していて、以下の通りです。
- 対象者がアルコールを摂取した日 vs. 摂取しなかった日
- 対象をアルコール摂取量で3つのグループに分ける:少ない(≦0.25g/kg)、普通(>0.25-0.75 g/kg)、多い(>0.75 g/kg)
そして以上の調査の結果、こんなことが分かりました。
- アルコール摂取量が増えるごとに交感神経が優位になって、副交感神経が弱まった(興奮状態)
- アルコール摂取による自律神経への影響は摂取量が少ないグループでも見られた
- 性別や運動習慣、座り時間の影響は見られなかったが、若い人は特に悪影響を受けやすかった
どうやらアルコールは少量でもその晩の睡眠の質を下げるには十分なようです。またこの影響は若い人のほうが強かったみたい。
また、もう少し具体的にデータを見ていくとこんなことも分かったようです。
- 心拍数:少ない..1.4bpm↑ 普通..4.0bpm↑ 多い..8.7bpm↑
- LF/HF比:少ない..0.1↑ 普通..0.3↑ 多い..0.5↑
- RR間隔の標準偏差:少ない..2.0 ms↓ 普通..5.7 ms↓ 多い..12.9 ms↓
ちなみにLF/HF比とは、心拍変動の高周波に対する低周波の比率のことで、この数字が高いほど体が休まっていない証拠。全体的にアルコール摂取が増えるほど、体が興奮して休まっていないのが分かりますね。
また各グループの対象者らの回復レベルを心拍変動をもとに算出したところ、
- 少ない..9.3%↓
- 普通..24.0%↓
- 多い..39.2%↓
だった様子。ちなみに「少ない」グループはお酒1~2杯相当を飲んでいたようで、つまりたった一杯でも自律神経や睡眠に影響する可能性があるんですね。
注意点・まとめ
ただし今回の結果には幾つか注意点もありまして、
- フィンランドでしか調べていない→日本人にも同じことが言えるか不明
- アルコールの摂取や摂取量は自己申告制(セルフレポート)→正確なデータとは言えない
この辺りは押さえておくとよろしいかと思います。要は研究のデザインとしてはそれ程質が良くないので、あくまで「お酒は少量でも睡眠に影響するかも」くらいの大まかな結果として捉えたほうが良さそうです。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Pietilä J, Helander E, Korhonen I, Myllymäki T, Kujala UM, Lindholm H,”Acute Effect of Alcohol Intake on Cardiovascular Autonomic Regulation During the First Hours of Sleep in a Large Real-World Sample of Finnish Employees: Observational Study“,JMIR Ment Health. 2018 Mar 16;5(1):e23.