赤羽(Akabane)
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抗酸化サプリに遅発性筋肉痛(DOMS)を和らげる効果はあるのか?
抗酸化作用がある成分や栄養素には、体の酸化ストレスを抑えて炎症を和らげる働きがあります。そして筋肉痛、専門的には遅発性筋肉痛(DOMS)なんて言われますが、こちらの原因は結合組織や筋組織の炎症が原因だと言われています。
となると抗酸化サプリには筋肉痛を和らげる効果があってもおかしくないのでは?という話になりますが、今回はこの問題について深堀りしてみましょう。
抗酸化サプリのDOMSへの効果を総まとめした系統的レビューの結果..
2020年にシェフィールド・ハラム大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、どうやら抗酸化サプリによるDOMSの緩和効果はパッとしなかったようです。
この研究では、過去50件のRCTから1089名(16~55歳)分のデータを対象に、抗酸化サプリのDOMS緩和効果を検証していました。
実験のデザインはシンプルで、①抗酸化サプリを飲むグループ、②プラセボグループ(効果のない偽のサプリ)で筋肉痛の度合いを比較するのみ。抗酸化サプリには自然な食品源やその抽出物、ビタミンCやEといった抗酸化ビタミンが使用されていました。
そして最短1日~最長91日間の実験期間でグループごとの差を比較していくと、こんな感じなりました。
- 全体的に抗酸化サプリはプラセボよりも確かに筋肉痛を緩和していた
- しかしそれは医療の観点から見て有意な効果ではなく個人の誤差程度だった
- 筋肉痛を測るタイミングで分けると、間隔が短いほど高い効果は見られた(6〜168時間、こちらも有意な改善ではない)
ここから言えるのは、抗酸化サプリにはDOMSを和らげる効果は大して見られなかったということです。何とも残念な結果になってしまいました。
しかも、今回集められた実験ではどれも推奨量より多めの摂取量が設定されていたようで、たくさん摂ったとしても大した効果がない!ということになりそうです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 選択バイアスの恐れがあったり統計的手法に問題がある実験が多くあった:参加者のグループ分けの際のランダム化方法が書かれていなかったり、参加者が客観的な方法で集められていなかったりした
- 9割ちかくが男性の参加者だった:今回の結果が女性やもっと高齢の層にも当てはまるとは限らない
- 測定メジャーはバラバラだった:筋肉痛を測る基準がばらばらだったり、方法もスクワットをしたり、患部を押してみたり、色々な種類があった
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 抗酸化サプリは炎症により痛む筋肉痛に理論上は効果があると考えられている
- ただ比較試験をまとめた今回のレビュー&分析では、有意な筋肉痛緩和効果は確認されず
- 全体的にエビデンスの質は高くない上実験デザインも結構ばらばらなのでハッキリした結論は出ない
こんな感じでしょうか。抗酸化サプリは補助程度ならいいかもしれませんが、これだけに頼って筋肉痛が改善するとは思わない方がいいかもしれませんね。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Ranchordas MK, Rogerson D, Soltani H, et al. Antioxidants for preventing and reducing muscle soreness after exercise: a Cochrane systematic review. British Journal of Sports Medicine 2020;54:74-78.