赤羽(Akabane)
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筋トレの定番サプリ「BCAA」に体の疲労を和らげる効果はあるのか?
BCAAとは、必須アミノ酸「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の3種類を指しています。詳しくは以下で取り上げていますが、これらは必須アミノ酸の中でも特に筋たんぱく合成に関わっているので、サプリは筋トレマニアたちにも重宝されています。
筋トレ定番サプリ「BCAA」とは?筋肉回復効果のエビデンスを検証してみたら…。
BCAAの中枢から末端までの疲労回復効果をまとめたメタ分析によると…
2019年にイランのAhwaz Jundishapur医科大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、BCAAのサプリは中枢疲労の回復には大して効果がないものの、筋疲労を減らしたり疲労物質を取り除く効果があることがわかりました。
この研究は、31件のRCTやランダム化クロスオーバー試験を集めて、BCAAの疲労回復効果を分析したものです。疲労とひと口に言っても、ここでは以下のように幅広い定義を含んでいます。
- 中枢疲労…セロトニンなどによって脳が感じる疲労
- 疲労物質…乳酸、アンモニア
- エネルギー代謝物…グルコース、遊離脂肪酸
- 筋疲労&ダメージ…クレアチンキナーゼ、乳酸脱水素酵素
実験の内容としては、1日〜1ヶ月間の期間でサイクリングやランニングなどの運動プログラムを行い、運動前にBCAAサプリを摂取するというものでした。実験の期間はバラバラでして、1日以内のものは「短期間」、それ以上のものは「長期間」という風にここでは定義されていました。
そして上記の分析結果をまとめると、ザッと以下のようなことがわかりました。
- BCAAは中枢疲労には有意な効果がなかった
- 血中の乳酸濃度は有意に低下させた
- グルコースや遊離脂肪酸も有意に低下させたが、グルコースの減少は短期間での実験でのみ確認された
- 乳酸脱水素酵素には有意な効果はなかったが、長期間の実験でのみクレアチンキナーゼの有意な減少が確認された
兼ねてから、BCAAにはセロトニンが血液脳関門を通って疲労感をもたらすのに競合してくれる作用があるとして、中枢疲労への効果が期待されていたんですが、今回の結果によるとその効果は微妙みたいですね。
一方で、BCAAは筋肉の疲労・ダメージを抑えたり、エネルギーの供給を助けたりするということが改めて実証されました。血中のグルコースが減っていたということは、すなわち、BCAAがエネルギー源として、肝臓に貯蓄されているグリコーゲンの肩がわりをしていた可能性が高いということになります。
注意点・まとめ
ただし注意点として、以下の点も押さえておくと良さそうです。
- 大半が若い男性のみを対象としている: 31件中26件が男性のみの対象で、女性のデータはかなり少ない。高齢者を対象にした研究はなかった
- BCAAの摂取量はバラバラ: 1日4.5〜50gまで摂る量にばらつきが見られ、どのくらいの量が良いのか?は分からない
- 実験期間はかなり短い: 今回「長期間」とされた実験でも最長で31日だったので、数ヶ月や年単位での結果は不明
今回の結果をどこまで一般化していいのか?という点から、長期的な結果はどうなるか分からないという点まで、なかなか課題は山積みな感じです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動前のBCAAサプリは中枢疲労の抑制にはあまり効果がなかった
- しかし、筋疲労・ダメージやエネルギー供給のサポートには有意な効果が見られた
- ただし、今回の結果は大半が男性や若者を対象にしているので、女性や高齢者にどこまで当てはまるか?はわからないうえに、摂取量もバラバラ
赤羽(Akabane)
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#1 Hormoznejad, R., Zare Javid, A. & Mansoori, A. Effect of BCAA supplementation on central fatigue, energy metabolism substrate and muscle damage to the exercise: a systematic review with meta-analysis. Sport Sci Health 15, 265–279 (2019). https://doi.org/10.1007/s11332-019-00542-4