ダークトライアドは12種類の性格で成り立っている!簡単なようで複雑な真の姿とは?

ダークトライアドは12種類の性格で成り立っている!簡単なようで複雑な真の姿とは?

赤羽(Akabane)

今回は「ダークトライアドに関わる12の特性とちょっとした中身のアップデート」についてのお話です。

ダークトライアドは12種類の性格で成り立っている!簡単なようで複雑な真の姿とは?

ダークトライアドと呼ばれる3つの性格があるわけです。これは、以下のような癖のある性格を指していまして、その内容ゆえにダーク(闇)なのですね。

  • マキャベリズム:(主に政治的活動で)目的の為にはそれが非道徳的でも手段を選ばない特性のこと。自分が果たしたい目的の為に、他人を操って利用したり出し抜くことに何も思わない。
  • ナルシシズム:自己愛傾向が強い特性で、いわゆる「自分大好き人間」のこと。権力や特権など自分を美しく飾るモノが好きで、優越感を感じやすかったり、自分のためなら他人を利用することもいとわない。
  • サイコパシー:他人への共感や罪の意識が欠けていて、無責任になりがちな特性。衝動的で、計画性がないことも特徴に挙げられる。この特性を持つ者は「サイコパス」と呼ばれる。

とはいえ、近年では「性格はもっと複雑なものだ!」と過度な単純化問題が指摘されていて、個人的にも、ヤバいなと感じた人を何でも「サイコパスだ!」みたいに押し込めようとする気運はよろしくないなと感じます。

というわけで、この記事では「ダークトライアドの構成要素には12の性格特性がある!」という面白い研究データを共有します。
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従来のダークトライアドへの理解を大幅に修正した最新レビュー研究

参考は2020年にステファンウィジスキ枢機卿大学が発表した研究(#1)でして、どうやらダークトライアドの構成要素として12の性格が浮かび上がっただけでなく、中身の構成にも若干変動があったようです。

この研究では、Facebookを通してオンライン調査の協力を呼び掛けていまして、最終的に1,012名(17~35歳)の回答データが集まったようです。調査の内容は、ダークトライアド診断として「SD3」を、またビッグ5性格診断として「IPIP-50」を使用し、その他の性格に関しては「PVQ-57」に答えてもらった様子。

そして、ダークトライアドの傾向とその他の性格特性がどのくらい関係しているのか?を分析していきました。具体的には、まずダークトライアドを「ダークダイアド(サイコパシー/マキャベリズム)」と「ナルシシズム」の2つに分け、そこから更に細かく分けていく流れになります。兼ねてから、「サイコパシーとマキャベリズムって結構似通ってね?」なんて言われていて、現状では両者の見分けはつきにくいと考えられていました。

果たして分析の結果を見ていくと、ダークトライアドは最終的に12の性格特性にさかのぼることが分かりました。

12の性格特性

  • Impulsive revengefulness(衝動的な復讐心)
  • Law of jungle rivalry(情け容赦がない)
  • Ingratiative manipulation(他人を操ろうとする)
  • Leadership/Authority(リーダーシップ・権威性)
  • Grit(粘り強さ)
  • Grandiosity(尊大な態度)
  • Admiration(自己賞賛)
  • Foolhardiness(無鉄砲さ)
  • Grandiose Fantasies(誇大妄想)
  • Compliance with rules(ルールの遵守)
  • Exhibitionism(自己顕示欲)
  • Suspiciousness(猜疑心)
ダークトライアドは12種類の性格で成り立っている!簡単なようで複雑な真の姿とは?

(#1)より引用。頂点「ダークトライアド」から始まり、最下層が12の性質。

「Grit(粘り強さ)」と「Compliance with rules(ルールの遵守)」に関しては逆の相関なので、それぞれ「粘り強さがない」「ルールを守らない」という解釈になります。

また、上記12種類の性質を「ダークダイアド」「ナルシシズム」「両者の共通項」という風に分類すると、こんな感じです。

ダークトライアドは12種類の性格で成り立っている!簡単なようで複雑な真の姿とは?

(#1)を参考に筆者作成。

ここから言えるのは、ダークダイアドとナルシシズムでは明らかに性質が違うが、サイコパシーとマキャベリズムの間にはほとんど似通った性質があるということ。こうした結果を受けて、研究チームも以下のように述べていました。

(ピラミッドの図で)ナルシシズムの尊大な態度と自己顕示欲が差別化されるまでは、マキャベリズムとサイコパシーの違いもハッキリ表れていないため、理論的には、ダークトライアドとしてナルシシズムやサイコパシーと同列にマキャベリズムを置くことは正しくないであろう。[筆者訳](#1)

つまり、細かい分析の中でもかなり後半の方でマキャベリズムとサイコパシーの違いが表れるくらいなので、やはり両者は相当似ており、ダークトライアドという大きな括りで同列に置くのはちょっと違うんじゃない?と。また、マキャベリズムの性質はサイコパシーに比べると限定的であるとし、正しくは「サイコパシーの中のマキャベリズム」という順列なのでは?という指摘もありました。

注意点・まとめ

ただし注意点として、以下の点も押さえておくと良さそうです。

注意
  • 現状での調査データ源はセルフレポートに頼っている: マキャベリズムやサイコパシーは、アンケート調査による自己申告制では傾向がハッキリ出てくれないことがあり、リアルな場面で検証する実験的な手法の方が顕著に出やすい
  • 調査サンプルの性別がアンバランス: 今回使用した調査データでは女性の割合が8割と断然多く、男性のデータが不十分だったかもしれない
  • 調査サンプルは限定的でどこまで一般化できるか分からない: 調査はポーランド人のみを対象に行われたが、性格は国や文化によっても多少異なるので、今後はもっと広い範囲での追記が期待される

分析が細かいところまでゴリゴリな点は良かったのですが、肝心のサンプルに課題ありといったところでしょうか。まだこの手の分析は初歩な気もするので、今後はより広範囲のサンプルを対象にした研究が期待できます。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • ダークトライアドは12種類の性格で成り立っていることが判明。その性格特性とは、「衝動的な復讐」「情け容赦がない」「他人を操ろうとする」「リーダーシップ・権威性」「粘り強さがない」「尊大な態度」「自己賞賛」「無鉄砲さ」「誇大妄想」「ルールを守らない」「自己顕示欲」「猜疑心」
  • マキャベリズム・サイコパスに特有な性質は「衝動的な復讐」「情け容赦がない」「他人を操ろうとする」「無鉄砲さ」「猜疑心」で、ナルシシズムに特有なのは「リーダーシップ・権威性」「尊大な態度」「自己賞賛」「誇大妄想」「自己顕示欲」だった。両者の共通項としては、「粘り強さがない」「ルールを守らない」があった
  • マキャベリズムはサイコパスが持つ性質の一部であって、ダークトライアドの中でサイコパシー・ナルシシズムと同列の性質ではないという指摘も挙がった

赤羽(Akabane)

個人的にも、ダークトライアドを単純に捉えすぎる風潮には反対です。今回のような細かい分析は徐々に増えてきている印象ですので、新しく定義などが改訂される日もそう遠くないかもしれません。

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参考文献&引用

#1 Rogoza, R., Cieciuch, J. Dark Triad traits and their structure: An empirical approach. Curr Psychol 39, 1287–1302 (2020). https://doi.org/10.1007/s12144-018-9834-6

※当記事はメンテナンス済みですが、2020年10月5日に公開された時点での内容となっておりますので、情報が古くなっている場合もあります。