赤羽(Akabane)
目次
健康な食事で寿命が延びる!DII(食事の炎症指数)とテロメアの深い関係性とは?
本題の前に、まずはタイトルにもある「DIIとは?」という説明からしていきます。
DII(食事の炎症指数)とは、食事の内容によって起こる炎症レベルをポイント形式で表したものです。具体的には、45項目ほどの食品アンケートに答えていくのですが、これが結構正確に体内の炎症レベルを的中させるのだとか。
実際に私も「DIIを簡単に測定できるアプリ(DII Screener)」で過去にプチ測定してみたことがありまして、結果は-4.19となかなか良さげでした。
テロメアの長さは寿命の長さ。テロメアとDIIの関係性とは?
次にテロメアとは?を簡潔に説明していきます。これは生き物の染色体の末端部分にあって、近年ではこの部分の長さで寿命の長さを予測できる!と話題ですね。図で表すとこんな感じになりまして、加齢とともに細胞は分裂を繰り返すので、テロメアも徐々に短くなっていってしまうと考えられています。
さて前置きが長くなりましたが、ようやく本題です。テロメアとDIIの関係で参考になるのが、2015年に発表されたナバラ医療病院の研究(#1)でしょうか。この研究によると、DIIのスコアが改善するほどテロメアも長くなったようです。ザっと研究の内容を見ていきましょう。
- 地中海式ダイエット研究で有名なPREDIMEDという大規模研究が舞台
- 二型糖尿病患者、心疾患のリスクが高い患者520名が対象(55~80歳)
- 患者らを食事パターンで以下のように分け、5年で様子を見る
- 地中海式ダイエット(エキストラバージンオリーブオイル多め)174人
- 地中海式ダイエット(ナッツ類多め)173人
- 普段通りの食事173人
そして白血球のテロメアを測りつつ、はじめと5年後にDIIも測ったようです。なぜ地中海式ダイエットなのか?と思われるでしょうが、これは地中海式ダイエットが現時点で最もデータの豊富な健康食だからです。
この類の地中海式ダイエット研究は過去の炎症と地中海式ダイエットの記事でも出てきましたね。違うのは今回はテロメアの長さを見ている点。それでは結果を見てみましょう。
DIIスコアが最高群 vs 最低群
- DIIスコアが高いとテロメアが短くなるリスクが80%高まった
- 実験後5年経過時には94%リスクが高まった
グループごとのDIIスコア
- 地中海式ダイエット(エキストラバージンオリーブオイル多め)…−2.76 (−5.97 to −1.70)
- 地中海式ダイエット(ナッツ類多め)…−0.96 (−1.69 to −0.14)
- 普段の食事グループ…1.12 (−0.13 to ≥3.91)
驚くべき数字です。つまり5年の間、健康な食事を心がけるかどうかでテロメアが縮むリスクが約2倍に跳ね上がったということになります。更にいうと、上の結果はBMIや運動習慣、喫煙や既往歴など多くの別要素を調整したうえでのものですので、より信憑性は高め。
グループ間でのDIIの差を見ても、地中海式ダイエットグループは圧倒的に良いスコアを出しております。中でもエキストラバージンオリーブオイル多めのグループはダントツの結果に。(私は-4.19でした)こうした結果になった要因として、研究者らはオメガ3脂肪酸を挙げています。例えば2014年に行われたオメガ3に関するRCT[ランダム化比較試験](#2)でも、以下のような結果になったようです。
- 106名の太り気味の中年~高齢者を対象に(1) 2.5 g/日 , (2) l.25 g/日, (3) プラシーボのカプセルでオメガ3サプリを与え続けたところ、4か月でオメガ6/オメガ3比率が下がり、酸化ストレスも減った
酸化ストレスはテロメアに悪影響を及ぼす要因のひとつですので、間接的にオメガ3でテロメアの短縮を抑えることができる!という見解ですね。ただし他の栄養も関わっているはずですし、「オメガ3大量摂取で寿命が延びる」という単純な話ではないので注意。
赤羽(Akabane)
参考文献&引用
#1 García-Calzón S, Zalba G, Ruiz-Canela M, Shivappa N, Hébert JR, Martínez JA, Fitó M, Gómez-Gracia E, Martínez-González MA, Marti A,”Dietary inflammatory index and telomere length in subjects with a high cardiovascular disease risk from the PREDIMED-NAVARRA study: cross-sectional and longitudinal analyses over 5 y.“,Am J Clin Nutr. 2015 Oct;102(4):897-904.
#2 Janice K.Kiecolt-Glaser,Elissa S. Epel,Martha A. Belury,Rebecca Andridge,Jue Lin,Ronald Glaser,William B. Malarkey, Beom Seuk Hwang,Elizabeth Blackburn,”Omega-3 Fatty Acids, Oxidative Stress, and Leukocyte Telomere Length: A Randomized Controlled Trial“,Brain Behav Immun. 2013 Feb; 28: 16–24.