【若者 vs. 高齢者】睡眠不足でワーキングメモリの性能が落ちやすいのはどっち?

2019年6月2日教育&勉強法, 睡眠時間&質の考察, 考察編

「高齢者vs.若者」睡眠不足で脳の短期記憶や情報処理性能が落ちやすいのは?

睡眠不足 ワーキングメモリ 機能 年齢

今回のテーマは「ワーキングメモリと睡眠不足」についてです。
 
 
まずワーキングメモリって何ぞや?という点から軽くおさらいすると、これは脳の小さい貯蓄タンクみたいなもの。前頭葉という部位がメインになって、入ってきた情報を一時的にキープしておいたり、複数の情報を同時に処理したりする大事な機能なんですね。
 
 
でこのワーキングメモリのキャパが睡眠不足によって低下する!(#1)という傾向が過去にも見られてまして、しっかり睡眠をとらないと、前頭葉の活動に異常をきたして、日頃の情報処理力が下がる可能性が高いんですね。
 

 
といったところで、今回は睡眠とワーキングメモリに関するもう一歩踏み込んだお話を。参考は2018年にモナーシュ・ユニバーシティクレイトンが発表した研究(#2)で、睡眠不足はワーキングメモリに良くないけど、年齢別でみたらどうなの?という内容。
 
 
この研究では、31名の若者(19~38歳)と33名の高齢者(59~82歳)を対象に、

 

  • 普通に睡眠をとる
  • 32時間ぶっ通しで寝ずに過ごす

 

このように普通の睡眠、睡眠不足の2パターンの状態を2週間ほど空けて体験してもらったんですね。そしてそれぞれの状態で翌日に言語と視覚の2種類のワーキングメモリテストを受けてもらったみたい。
 
 
で具体的にワーキングメモリのどんな性能をみたか?というと、

 

  • エンコーディング:新しい外部からの情報に注意を向けてワーキングメモリに取り込む性能。
  • ディスプレイスメント:新しい情報が入ってきたときに既存情報と入れ替える性能。ワーキングメモリのキャパが低いとここの入れ替えが激しくなる。
  • エピソード記憶:取り込んだ情報がまた現れたときに思い出す関連記憶の量。正しく記憶を取り出す際に重要。

 

この3つを測定した様子。まとめると、情報の出し入れや思い出す際の正確さやボリュームを調べた、と。するとこの結果、

 

  • 全体的に若者の方が高齢者よりテストの成績は良かった
  • 睡眠不足の状態だと、若者の方が高齢者よりテストの成績が落ちた

 

どうやら高齢者よりも若者のほうが睡眠不足で受けるワーキングメモリ低下被害が大きかった模様。これは高齢の方だと元々性能が落ちてるから、その分低下の幅が少なかったのかも、とも捉えられますね。
 
 
そしてもう少し詳しくみていくと、

 

  • 睡眠不足でエンコーディングとディスプレイスメントの性能が特に落ちた
  • 中でも言語テストのディスプレイスメントが一番落ちていた
  • エピソード記憶には影響はなかった

 

こんなことも判明。この辺りは過去の研究(#3)では、「ディスプレイスメントよりエンコーディングが影響受けたよ!」との報告もあって食い違いがありますが、どちらも影響を受けるというのは間違いなさそう。

dummy
赤羽(Akabane)

ということで以上をまとめると、
 

  • 高齢者より若者のほうが睡眠不足でワーキングメモリに被害が大きい
  • 中でも記憶のメンテナンス(取り出し、入れ替え)に関わる性能が主に低下するかも

 
こんなことが言えそうです。脳の性能のためにも質の高い十分な睡眠を目指しましょう!具体的にすぐできることは以下にザっと並べておきましたので、ご参考までに。

参考文献&引用

#1 Sean P. A. Drummond, Gregory G. Brown, J. Christian Gillin, John L. Stricker, Eric C. Wong & Richard B. Buxton ,”Sleep Less, Think Worse: The Effect of Sleep Deprivation on Working Memory“,Nature 403, 655–657 (2000).

#2 Pasula EY, Brown GG, McKenna BS, Mellor A, Turner T, Anderson C, Drummond SPA,”Effects of sleep deprivation on component processes of working memory in younger and older adults“,Sleep. 2018 Mar 1;41(3).

#3 Turner THet al. “Effects of 42 hr of total sleep deprivation on component processes of verbal working memory.”, Neuropsychology . 2007; 21(6): 787–795.