気温の変化と日照時間は自殺率にどのくらい影響を与えているの?

2019年9月3日その他ストレス対策, バイオフィリア

気温の変化と日照時間は自殺率にどのくらい影響を与えているの?

気温の変化と日照時間は自殺率にどのくらい影響を与えているの?

気候の変化が心身の健康に大きな影響を与えるのは有名な話。というのも我々の体は微妙な気温や湿度の変化、日光の照射時間なんかに非常に敏感に反応するからでして、この辺りは結構体感されるんではないでしょうか。
 
 
そんな中でも、気候と自殺率の関係はかなり注目されていて、2016年のヨーロッパ29か国のデータを集めた研究(#1)でも、自殺率の変動の約3~4割近くが気候変動に因るものとして説明できると報告されていたり。ちなみにこの数字は経済的な問題が占める割合よりも大きかったのだとか。いかに気候が我々の心身に影響を与えているか、よくわかりますね。

 

気候の変化..男性の37.6%、女性の28.1%
経済的な問題..男性の26.9%、女性の11.5%

気温と日照時間は自殺率とどのくらい関係しているの?を調べたメタ分析が。

ではここから本題へ。気温や日照時間と自殺率について参考になるのが、2019年に安徽医科大学が発表したメタ分析(#2)です。
 
 
この研究は温度と自殺率の横断研究14件、日照時間と自殺率の横断研究4件を集めて、それぞれの関係を総まとめしたもので、各研究の調査期間は4,5年~10年くらいが大半で、長いと20年程調査しているものもありました。
 
 
気候の問題なので地域差が激しいことが予想されますが、この点も対象国にはアジア圏、アメリカ、オセアニア、ヨーロッパと幅広い地域が含まれていて、横断研究ですが質としてはそこそこ。(日本で行われた研究はありませんでしたが..)
 
 
分析の方法としては、気温や日照時間の測定方法、対象国の所得レベル、気候帯(温帯、熱帯とか)に応じた相関まで調べたようで、この結果、気温と日照時間の関係についてこんなことが分かりました。

 

  • 気温が1℃上昇する毎に自殺率が1%高まった(発生率=1.01; 95%CI=1.00–1.02; p≦0.05)
  • 日照時間の長さは自殺率と相関がみられなかった(発生率=1.00; 95%CI=0.99–1.01; p>0.05)

 

どうやら気温の上昇は自殺率と優位な相関が見られた様子。一方で、意外なことに日照時間は1時間ずつ延びても自殺率に影響がなかったようです。これまでの研究では、結果こそまちまちでしたが高い気温と短い日照時間は自殺率の上昇と相関があるという主張が強かったもので、これは意外な結果。
 
 
ちなみにもう少し詳しいデータを見ていくと、以下の条件で気温と自殺率の相関が高かったとのこと。

 

  • 気温の測定を日別、週別で行った場合
  • 所得レベルが中くらいの国
  • 温帯と熱帯エリア

 

まとめると、月別とかよりももっと微細な気温の変化が自殺率に大きく影響している可能性があって、高所得よりも中所得のほうが気温と自殺率の相関が強かったんですね。これは経済的な余裕がないと、例えば「夏場にエアコンが使えない!」みたいなことが起こるからでは?との見解がありました。
 
 
もう一つ気候エリアに関して言うと、亜熱帯あたりも関係しているんでは?と考えられますが、今回入っていないのは研究数が少なかったせいだと思われます。

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赤羽(Akabane)

結論、この問題についてはまだまだ予断を許さない状況ですが、現状では気温の高さがメンタルに影響を与えて、結果的に自殺率が高まってしまう可能性はありそう。一方日照時間はあんまり影響ないみたいですが、季節性情動障害の方では日照によるメンタルへの影響を受けやすいので、こういった例外はあるかと。

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参考文献&引用

#1 K.N. Fountoulakis, I. Chatzikosta, K. Pastiadis, P. Zanis, W. Kawohl, A.J. Kerkhof,”Relationship of suicide rates with climate and economic variables in Europe during 2000–2012“,Ann. General Psychiatry, 15 (19) (2016).

#2 Jiaojiao Gao,Qiang Cheng,Jun Duan,Zihan Xu,Lijun Bai,Yanwu Zhang,Heng Zhang,Shusi Wang,Zhihua Zhang,Hong Su,”Ambient temperature, sunlight duration, and suicide: A systematic review and meta-analysis”,Science of The Total Environment,Volume 646, 1 January 2019, Pages 1021-1029.