赤羽(Akabane)
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大気汚染がうつ病リスクや自殺率を高めるかも。PM2.5など汚染物質がメンタルに及ぼす影響とは?
元々、都市部に住む人はうつ病などメンタルを病む傾向(#1)が強く見られていて、こうした原因の一つとして「大気汚染」も挙げられているんですね。
そしてこの度、この問題について大規模な研究が出ていたので、中身を覗いてみましょう。
各国の大気汚染物資レベルとうつ病や自殺率との相関をまとめたメタ分析によると..
これは2019年に北京大学が発表したメタ分析(#2)で、14件の過去研究から延べ684859名(平均41.3~72.4歳)を対象に、大気汚染がうつ病リスクや自殺率に与える影響を調査しています。
具体的には、PM2.5やPM10といった汚染物質の空気中濃度と、そこに住む人たちのうつ病、自殺率との相関がどのくらいか?を汚染レベルごとに計測していく流れでした。
その他詳しい情報はこんな感じです。
- うつ病リスクと自殺率で調べた研究が7件ずつあった
- 研究が行われたのは北アメリカ、ヨーロッパ諸国、アジア諸国で一部日本も含まれた
- 大気汚染レベルは平均で、PM2.5が9.8~84.9μg/㎥、PM10が24~106.8μg/㎥だった
割と幅広い国で調査されているし、細かいところまで見てくれています。
そしてこの結果、次のようなことが分かりました。
- PM2.5が10μg/㎥増加するごとに、うつ病のリスクが19%高まった
- PM2.5が10μg/㎥増加するごとに、自殺率が5%高まった
- PM10ではうつ病や自殺率との相関関係は見られなかった
まとめると、話題のPM2.5の大気中濃度が高まるほど、うつ病発症や自殺のリスクが上がっていたんですね。しかもPM2.5とうつ病の相関は、長期になるほど高かったようです。つまり大気汚染に晒される期間が長いほどうつ病発症リスクも高くなる、と。
一方でPM10のほうは、うつや自殺と特に有意な相関は見られませんでした。厳密には全体で自殺率が34%増加していたんですが、これは1件だけドでかい数字が出ていた研究の影響でした。実際にコレを外したところ、相関が全く見られなくなったみたい。
ではどうしてPM2.5のほうがメンタルヘルスへの悪影響が大きかったんでしょう?考えられる要因としては、物質のサイズです。PM2.5のほうが微小でその分有害物質の濃度が高いうえに、肺に吸い込まれやすいから、という説が有力かと。
注意点・まとめ
ただし注意点も幾つかあって、
といった点は押さえておくとよろしいかと思います。大気汚染、特にPM2.5が悪影響なのは間違いないんですが、それがどのくらいのレベルなのか?までは細かく分かっていない、と。
では以上を踏まえて今回のまとめです。
- PM2.5はうつ病発症リスクや自殺率をちょっとずつ高めるかもしれない
- 体に酸化ストレスや慢性炎症を起こしたり、自律神経を乱したりする経路が考えられる
- 濃度がもっと高い地域ではこのリスクがもっと高まるかもしれない
こんな感じでしょうか。大気汚染は体に酸化ストレスを与えたり、慢性炎症を引き起こす原因(#3)なので、こういった経路でうつ病発症に繋がる可能性はままあり得そうです。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Kalpana Srivastava. Urbanization and mental health. Ind Psychiatry J. 2009 Jul-Dec; 18(2): 75–76.
#2 Gu X, Liu Q, Deng F, et al. Association between particulate matter air pollution and risk of depression and suicide: systematic review and meta-analysis. Br J Psychiatry. 2019 Aug;215(2):456-467.
#3 Liu Q, Gu X, Deng F, et al. Ambient particulate air pollution and circulating C-reactive protein level: A systematic review and meta-analysis. Int J Hyg Environ Health. 2019 Jun;222(5):756-764.