赤羽(Akabane)
目次
高齢者の認知機能低下を食い止めるにはどのくらい運動すればいいのか?
運動は健康な高齢者にも認知機能が低下している人にも効果的!短時間&高頻度がより効果的みたいだ
2019年にフローニンゲン大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、健康体から認知機能が低下している高齢者まで運動は認知機能の改善に小程度以上の効果がある!ということが分かりました。具体的な運動量の目安は後ほど触れます。
この研究では、36件の関連研究から高齢者2,007名分(平均73歳)のデータを集めて、運動でどこまで認知機能を改善できるのか?をまとめてくれています。うち23件は認知機能に問題のない高齢者、13件は認知機能が低下している高齢者を対象にしていました。
それぞれの実験の内容をざっと以下のまとめます。
- 運動をするグループはウォーキングやランニングから筋トレ、HIIT、サイクリングまで幅広く採用し、比較としてストレッチ、運動をしない、バランストレーニングといった非活発なグループを用意した
- 20〜90分(平均50分)の運動を週1〜5日(平均2.6日)の頻度で8〜52週間(平均22週間)続ける
- 認知機能の測定には認知症診断に使われる「ミニメンタルステート検査」の結果を採用し、他に実行機能や記憶力なども機能として調べた
そして分析の結果、以下のようなことが分かりました。
- 健康な高齢者には小くらいの認知機能改善効果が見られた(d = 0.17-0.27)
- 認知機能が低下している高齢者にはより大きな改善効果が見られた(d = 0.37)
- 認知機能が低下している高齢者では、短時間の運動を週の間に頻繁に行うほど高い効果が確認された(d = 0.43–0.50)
*d=〇〇の数値は効果量。直感的に効果の大きさを表し、一般的には「d≧0.7」で効果大とされる。
ここから言えるのは、運動は高齢者全般の脳にイイ!ということと、こうした効果は割と短いセッション&高頻度でこなした方がいいのでは?ということです。
ちなみに、「短時間の運動を高頻度」というのは大体30分ほどの運動を週3以上くらいです。ただ、健康な高齢者ではこうした追加効果は得られなかったようです。
注意点・まとめ
注意点としては、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 9割近くが女性だった: 高齢男性のデータがかなり少なかった
- 結果のばらつきは大きい: 全体的に効果の大きさはバラついており、運動の種類や強度の違いなどが筆頭に影響している可能性が高い
- 脳機能の変化を特定するには実験期間がやや短い: 大半の研究は半年未満で、目立った脳機能の改善効果が表れるには期間が短いかもしれない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 運動は高齢者の認知機能の改善に小程度以上の効果があり、認知機能の低下が見られる高齢者でより高い効果が確認された
- 認知機能の低下が進んだ高齢者は、短時間の運動を週の中で高い頻度でこなせば高い効果が得られるかもしれない
- 含まれた実験を見渡すと、1日30分を週に3回以上程度続けると良さそうだ(ただし運動の種類や強度などは考慮されていない)
赤羽(Akabane)
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#1 Sanders LMJ, Hortobágyi T, la Bastide-van Gemert S, van der Zee EA, van Heuvelen MJG (2019) Dose-response relationship between exercise and cognitive function in older adults with and without cognitive impairment: A systematic review and meta-analysis. PLoS ONE 14(1): e0210036. doi:10.1371/journal.pone.0210036