赤羽(Akabane)
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メンタルの問題解決に定評がある「エクスプレッシブ・ライティング」
「Expressive Writing」は直訳で「筆記開示」みたいな意味になります。これは、その時の感情や思っていることをひたすら紙に書き出したりすることを指します。
「緊張や不安で頭真っ白」はどうして起こるの?
では次に、「緊張で頭真っ白現象」と絡めてみてみます。
2016年に行われた大規模なメタ分析(#2)によると、「緊張で頭真っ白」現象は脳のワーキングメモリー(短期記憶)の情報処理機能が不安や緊張で邪魔されて弱くなってしまうことが原因であると結論づけられています。この研究は177もの関連論文を選出して22061人の被験者を対象に行われておりまして、中々信憑性は高いです。
でこうした緊張や不安がワーキングメモリを妨害するのを、エクスプレッシブライティングで防ぐことができると言われているんですね。これを踏まえて次にいきましょう。
大学と高校で実際に実験してみた!
最後に「エクスプレッシブライティングの効果やいか程?」という点について。
参考になるのが、シカゴ大学の教授らの研究(#1)。これは学校を舞台に学生たちを集めて、テスト前にエクスプレッシブライティングをやってもらうというもの。大きく4つの実験に分かれていましたが、その中で重要な部分の大まかな流れを書いていきます。
実験その1
- 参加者は大学生20人
- 事前テストをまずやってもらう
- 生徒たちにプレッシャーをめちゃくちゃかける
- 10分間時間が与えられてここで3つのグループに分かれる
- 10分間座ってるだけのグループ
- 10分間これからやる数学のテストに向けての気持ちや心境をなるべくオープンに書き出すグループ(エクスプレッシブライティング)
- 10分間これからやる数学のテストとは関係ないことを書き出すグループ
- 数学のテストをやる
ちなみに「プレッシャーをめちゃくちゃかける」というのは具体的に、
- 高得点を出せば奨学金としてお金がもらえるよ!
- チーム戦でペアの人と合わせた得点で決まるからね!
- ちなみにペアの子はもう終わってて良い改善っぷりだったよ!
- このテストはビデオで録画されて先生や他の学生も観るからね!
こんな感じで、学生たちのメンタルを非情にエグるものだったみたいです。お腹が痛くなりそうなプレッシャーを一身に受けて、参加者は数学のテストに臨んだと。
すると、面白い結果になりました。
- エクスプレッシブライティングのグループは事前テストから7%テストの成績がアップ
- 何もしなかったグループ、関係ないことを書き出したグループでは事前テストから4%テストの成績がダウン
こうした結果を受けて、エクスプレッシブライティングでテストに対する心配事や不安を書き出す→脳のワーキングメモリー(短期記憶)が整理される→テストに集中できた!という流れなんでは?と考えられたと。
実験その2
そうは言っても上の実験では参加者の数も少なく、たまたまそうなった可能性も拭えません。
そこで今度は実際の高校を舞台に期末テストを2年間にわたって観察していったようです。この実験の流れはこんな感じ。
- 同じ学校で2年間、計2回の学期末テスト(一番大事なやつ)を観察
- 1年目は51人の生徒、2年目は55人の生徒が参加
- テストの6週間前に学期末テストへの緊張度を測るアンケートを実施
- 学期末テスト前に10分与えられて、生徒はランダムに2グループに分けられる
- 10分間テストに向けての気持ちや心境をなるべくオープンに書き出すグループ(エクスプレッシブライティング)
- 10分間テストとは関係ないトピックについて考える
- いざ、学期末テストへ
- テスト結果は彼らの中間テスト(春秋冬)と比較
そしてアンケートの結果から、学生たちを“緊張しやすいグループ”と“不安・緊張が少ないグループ”に分けたようです。今回は学期末テストなので学期の成績を大きく左右する大一番。緊張と不安は半端ないでしょう。
そして結果は次のようになりました。
- エクスプレッシブライティングをしたグループの生徒のほうが中間テストと比べてスコアが上がった、B+の成績
- 【エクスプレッシブライティング】 VS 【関係ないトピック考える】ではエクスプレッシブライティングのほうが6%成績が良かった
- エクスプレッシブライティンググループは緊張しないグループの生徒たちと同様にテストで上手くいった
やはりエクスプレッシブライティングで僅かに成績がアップ。ちなみにこの効果は緊張しやすい人ほど高かったようで、元々勝負事で緊張しない人には効果が薄いみたい。この辺りを踏まえても、エクスプレッシブライティングには緊張や不安からワーキングメモリを守ってくれる効果があるかも..?と考えられます。
赤羽(Akabane)
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他にもこんな研究が…
# Kitty Klein,Adriel Boals”Expressive Writing Can Increase Working Memory Capacity“,Journal of Experimental Psychology,Vol.130,No.3,pp520-533,2001.
#1 Gerardo Ramirez, Sian L. Beilock,”Writing about Test Worries Boosts Exam Performance“,Science,Vol.331,pp211-213,2011.
#2 Tim P.Moran,”Anxiety and Working Memory Capacity: A Meta-Analysis and Narrative Review“,Psychological Bulletin,Vol.142,No.8,pp831-864,2016.