赤羽(Akabane)
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加熱式たばこは有害物質が少ないから安全ですよ!はどこまで本当なのか?
当サイトでは健康長寿対策の一環で禁煙について書いていたり。当然ながら、たばこがあらゆる面で健康に悪いことが分かっているからで、詳しくは以下の過去記事をザっと見していただければと思います。
そして今回は最近のたばこ業界の動向について。近年では煙が出ないタイプの「加熱式たばこ」なんかが徐々に進出していまして、アイコスがその先駆者ですね。こうした新型のたばこは、
というのを売りにしていたり。確かに煙が出なかったりで何となくクリーンなイメージはありますが、実際のところどうなんでしょう?
【喫煙者閲覧注意】意外と答えられない?たばこが健康にとって最悪な5つの理由加熱式たばこは有害物質が少ないから安全!は本当なのか?
といったところで今回は、加熱式たばこは普通のたばこより安全なのか?をザックリ調べてみました。参考になるのが2017年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンやキングス・カレッジ・ロンドンが発表した系統的レビュー(#1)でして、31件の加熱式タバコ研究をまとめてくれています。
ザっと中身を覗いてみると、こんな感じでした。
- 16件が加熱式タバコの副流煙、15件が人による使用について調べた
- 31件中、20件がタバコ産業による提携のもと行われていた(タバコ産業にとって都合の良い結果が出ているかも)
- 主な舞台はイギリス、スイス、日本、ポーランド
調査対象の加熱式たばこは、
- アイコス(最も多い)
- グロー
- プルーム
主にこれらが含まれました。そして加熱式たばこの主流煙、副流煙、吐き出す煙+副流煙で分類して調査したところ、
- 普通のタバコと比べて、加熱式タバコはニコチン、有害物質全般、微粒子状物質(PM2.5とか)をそれぞれ最低でも17%、62%、75%カットしていた
- 人を対象にした実験では、人が有害物質に晒される割合は42~96%減っていた(*加熱式タバコは一箱分のみ検証だった)
- 全体的に加熱式タバコは喫煙欲を抑えたが、喫煙者らは加熱式タバコでは本物のタバコほど満足はできないと答える傾向が
という結果に。確かに加熱式たばこのほうが従来のたばこよりも有害物質量は軒並み少なかった様子。しかし細かく見ていくと、加熱式たばこによって量が少ないモノもあれば、普通のタバコと変わらないモノもあったり。更に重要なポイントとして、有害物質の種類では普通のタバコと変わらず多かったんですね。
・有害物質の種類..加熱式と従来のたばこで変わらず多かった
例)アセトアルデヒド、アクロレイン、ホルムアルデヒド、微粒子状物質(PM2.5とか)
他にもこの研究では「独立機関の研究 vs タバコ産業提携の研究」でも比べてくれていまして、ニコチン量や一酸化炭素、主流煙に含まれる微粒子状物質の量では近い結果が出た一方で、両者の意見にこんな食い違いも。
- フィリップモリス提携の研究 : アイコスは普通のタバコと同じくらい満足感があるよ、加熱式タバコ副流煙の室内の空気への影響は僅かなモノ。
- 独立機関の研究 : 加熱式タバコの満足感は普通のタバコより低く出ているよ。確かに有害物質の排出量は少ないが、依然加熱式タバコの健康へのリスクはある。
これはアイコスのフィリップモリス社の例ですが、こうした主張の食い違いを見ても、やはり少なからずタバコ産業が介入してると都合の良い解釈になりがちなのかな?と勘繰らざるを得ません。
ちなみに私は独立機関側の意見寄り。「有害物質に晒される割合が減っているから、加熱式タバコはマシなのでは?」と思われるかもしれませんが、大事なポイントは、
- 含まれる有害物質の量が減る ≠ タバコによる健康被害のリスクが減る
という点。有害物質に触れる割合が減ったからといって、それに応じて健康被害のリスクも下がるという報告は上がっておりません。現に過去に紹介したタバコ記事でも、一日1本タバコを吸う場合と、20本吸うヘビースモーカーでは、心臓疾患にかかるリスクが半分しか違わない!ということが分かっていたり。
タバコは本数を減らしても意味がない?一日一本のタバコでも心臓疾患のリスクが高まる。つまり、有害物質の量が減ったからといって健康被害のリスクも減るという報告はないし、従来のたばこと同じ種類の有害物質は入っているから、安易にマシな選択肢だ!とは言い切れないんですね。
赤羽(Akabane)
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加熱式タバコによる健康障害が日本でも報告され始めているみたいだ加熱式たばこは喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎のリスクを高めるかもしれない参考文献&引用
#1 Erikas Simonavicius,Ann McNeill,Lion Shahab,Leonie S Brose,”Heat-not-burn tobacco products: a systematic literature review“,Tobacco Control Published Online First: 04 September 2018.