赤羽(Akabane)
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実はHIITの方が慣れたら楽しい?しっかりやれば痩せるわ時短になるわでメリットが大きい説
運動を始めるにあたって、HIIT(高強度インターバルトレーニング)と中強度の運動という選択肢があります。HIITは、タバタ式みたいに激しい運動と細かいインターバルを繰り返すイメージですね。
主な違いは運動の強度でして、高強度であるHIITの方がその分短時間で済ませることができます。また、体内の脂質プロファイル(コレステロールや中性脂肪など)への効果も微妙に違うことが分かっていたり、この2つは目的によって選び分けることが大切だと言えます。
HIITか中強度の運動を1年間続けてもらう実験!人はどちらを選びどのくらい痩せるのか?
そんな中、2018年にオタゴ大学が発表したRCT(#1)では、HIITと中強度の運動だとどっちの方が痩せるの?というよくあるテーマで実験を行なっていました。
この研究では、250名の太り気味/肥満体型の成人を対象にしたダイエット実験を行なっていまして、まず彼らに以下2つの方法のうち好きな方を選んでもらったようです。
- HIIT…最低週3日以上、RPEで8〜9くらいの強度設定で1セット20〜30秒の運動を3〜5セット行うよう推奨した。インターバルは1〜3分が目安。スプリントや坂道ダッシュ、有酸素マシンを使った高強度トレーニング、バーピー、ジャンプなど
- 中強度の運動…ニュージーランドの現行の運動ガイドラインに沿って1日30分の速歩き、サイクリング、エクササイズクラスへの参加など
実験は1年間続き、実験前後と半年経過時点の計3回で体型や血圧測定を、実験前後で血液サンプルや運動に関するアンケート調査などを行った様子。運動をしっかりやっているか?は装着したアクチグラフィで測定していました。
正直、この手の研究は既にたくさん発表されていて斬新さはないのですが、当研究が面白いのは「現実問題、人はHIITと中強度の運動のどちらを好むのか?またそれぞれどのくらい続きやすいのか?」というところまで見ている点。こうしたモチベーションまで考慮に入れた研究は少ないので、なかなか参考になるのではないでしょうか。
果たして実験の結果、104名(42%)がHIITを選んだようで、両者の効果は以下のようになりました。
- 半年・1年経過時点で、HIITと中強度運動で体重や体脂肪、血圧に有意な差は見られず、最大酸素摂取量や運動時の自己効力感にも違いはなかった
- ただし半年・1年経過時点で、HIITの方が中強度運動よりも有意に「運動の楽しさ」のスコアが高かった
- 両グループで総合的な運動量はほぼ同じくらいだった
まとめると、HIITと中強度運動ではダイエット効果に大差はないものの、HIITの方が楽しくこなせた!という感想が多かったんですね。これは意外…。
また、実験への遵守率で参加者を比べると、1年間しっかりHIITのノルマをやり遂げた人は、そうでないHIIT参加者よりも体重(−2.7 kg; 95% CI = −5.2 to −0.2)や内臓脂肪(−292 cm3; −483 to −101)、ウエスト周り(−2.4 cm; −4.7 to −0.2)、HbA1c(−0.9 mmol·mol−1; −1.7 to 0.0)が有意に減少していました。モチベーションの面でいえば、運動中の自己効力感はアップした反面、楽しさは減ってしまっていたようです。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ざっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- HIITの離脱率はかなり増えた: 運動のデータが来なくなった参加者は、実験開始当初は18名(17.6%)だったのが、1年経過すると73名(71.6%)まで増えており、有効なデータが少なくなった
- HIITの楽しさは実験のノルマまで完遂した人では低かった: もしかすると、「HIITの方が楽しい!」という結果はHIITを楽してこなした人が多かったからかもしれない
- 参加者は限定的: 太り気味や肥満体験の参加者のみをニュージーランド国内のみで募っており、標準体型の人や日頃から良く動く人、文化的に異なる地域などで同様の結果になるとは限らない
実験を通してHIITのノルマをしっかりやり遂げたのは24名(23.1%)で、大体やり遂げたのは17名(16.3%)だったようで、大半が実験のノルマを達成できていませんでした。また、しっかりやり遂げた人ほど楽しさが少なかったことから、今回の「HIITの方が中強度運動より楽しいよ!」という結果自体の信憑性が揺らぐ可能性は大いにあり得ます。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- HIITと中強度の運動では、半年や1年間続けた場合のダイエット効果はさほど変わらないが、HIITの方が楽しいという評価が高かった
- ただし、HIITをノルマをクリアしつつ1年間やり遂げたのは全体の2割程度で、こうした人たちでは体型などの改善は著しかった反面、楽しさはあまり感じていなかった様子
- データが少ないので何とも言えないが、自分に合ったを選んで継続的に追い込めればどちらでも減量効果は見込めそうだ
赤羽(Akabane)
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#1 Roy M, Williams SM, Brown RC, et al. High-Intensity Interval Training in the Real World: Outcomes from a 12-Month Intervention in Overweight Adults. Med Sci Sports Exerc. 2018;50(9):1818-1826. doi:10.1249/MSS.0000000000001642