赤羽(Akabane)
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【人間関係の科学】私たちが「孤独」を克服するのにベストな方法は何なのか?
孤独が体に悪い!というのは近年では定説になりつつあります。例えば2015年に発表されたメタ分析(#1)では、孤独はタバコと同じくらい体に悪く、早死にリスクを高める!といった結果が報告されているんですね。
2018年にも同様の結果(#2)が出ていて、こちらでも【孤独は早死にリスクを25%高める】と報告が上がっています。
では私たちが孤独を克服するのに最適な方法は何なんでしょう?現時点のデータを見ていきましょう。
孤独から抜け出すのに効果的なアプローチとは?
参考になるのが2017年にユニバーシティ・カレッジ・ロンドンが発表したレビュー研究(#3)で、精神疾患を抱えた人が孤独を克服するためのアプローチを幾つか挙げた内容になっています。
結論から言ってしまうと、やはり【自分自身の認知や思考プロセスを変える】のが現状最も効果的なアプローチみたいですが、今回はここに新しい見方が加わっていていい感じでした。
他のアプローチと並べてザっと見てみると、こんなラインナップでした。
孤独から抜け出す4つのアプローチ
- 認知や思考を変える
- 社会的スキルを訓練する
- 社会的サポートを受ける
- 広いコミュニティの一員になる
では次に各アプローチではどんなことをするのか?を詳しく見ていきましょう。
認知や思考を変える
まずは自分自身の根っこから変えるアプローチです。孤独感が高い人は思考の歪みがが大きいことがわかっていて(#4)、この根本を矯正していきます。
具体的には認知行動療法で使われているテクニックが定番で、例えばこんな孤独な人が居たといましょう。
→みんな自分のことを忘れてるんじゃないのかな?
→寂しい…でもこっちから連絡したらしつこいと思われるかも…
これではどんどん悪い方向に思い込みが進んでしまいます。そこでこの癖を治すには、次のような考え方がとっさに出来るようにしていきます。
一見簡単に見えて、長年染みついた思考のクセはなかなか抜けません。最初は苦労するかもしれませんが、まずはその歪みに気づいて、徐々に新しい健全な思考ができるように移行していきます。
社会的スキルを訓練する
これは社会的に必要なスキルを学ぶ方法で、他人との会話やボディランゲージを正確に理解する訓練をしていきます。
こうしたアプローチは孤独感を改善するのに効果的だ、とするデータも幾つかありますが、2015年の系統的レビュー(#5)では、関係のない偽のセラピーと比較しても有意な効果が見られなかったとの報告も上がっています。
今後は具体的にどんな訓練内容だと効果が出やすいのか?または出ないのか?といった部分も分かってくると良いですね。
社会的サポートを受ける
新しい活動やコミュニティをを探すサポートを受ける方法で、プロから友達、身内まで色々な人がサポーターになれます。
ここでのゴールは、孤独を感じている人に社会的な繋がりを作ってあげることで、サポートが終わった後もずっと続くような関係が持てるようにするのがベストです。
広いコミュニティの一員になる
立場に関係なく、色々な人に門戸を開いているコミュニティに参加する方法で、「自分はこの大きなコミュニティの一員なんだ」と自信が持てるように積極的に活動に参加していきます。
中には、地域規模でコミュニティの形成を手伝っているところもあるみたいで、人との出会いの場を設けたり食事をセッティングしたり色々やっているようです。
注意点・まとめ
ただしこのテーマには注意点や課題もあって、ザっと以下の通りです。
- 孤独感を測定するスケールはバラバラ:現時点で最も使われるのが「UCLA Loneliness Scale(#6)」などだが、色々な方法があっていまいち「孤独」の定義が統一されていない
- 孤独を克服するアプローチの効果は他の要素がかなり影響している:そもそも参加者にモチベーションや人生において自立感・自己コントロール感がないと効果が出ないかも?という主張もある
- 孤独を正確に測定するのは難しい:測定ツールの違いだけでなく、回答者が孤独感をさらけ出すのを恥に感じていたりすると、回答が低く見積もられたりすることがある
つまり、「孤独」の定義自体は各研究でハッキリしているものの、統一見解が出ていないという点や、そもそも正確に測定するのが難しい問題があるんですね。
では最後に今回の知見を「社会規模」別にまとめると、こんな感じです。
ここでは各アプローチを「個人」「地域」「社会全体」という規模別で当てはめていて、まずは個人でできることからやって、そして段々と規模を広げていけばいいんじゃないか?という見解ですね。
赤羽(Akabane)
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#1 Nicole K Valtorta, Mona Kanaan , Simon Gilbody , et al. Lonliness and social isolation as risk factors for coronary heart disease and stroke: systematic review and meta-analysis of longitudinal observational studies. Vol.102,pp1009-1016,2016.
#2 Rico-Uribe LA, Caballero FF, Martín-María N, et al. Association of loneliness with all-cause mortality: A meta-analysis.. PLoS One. 2018 Jan 4;13(1).
#3 Farhana Mann, Jessica K. Bone, Brynmor Lloyd-Evans, et al. A life less lonely: the state of the art in interventions to reduce loneliness in people with mental health problems. Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology, June 2017, Volume 52, Issue 6, pp 627–638.
#4 Robustelli BL, Newberry RE, Whisman MA, Mittal VA (2017) Social relationships in young adults at ultra high risk for psychosis. Psychiatry Res 247:345–351.
#5 Orfanos S, Banks C, Priebe S (2015) Are group psychotherapeutic treatments effective for patients with schizophrenia? A systematic review and meta-analysis. Psychother Psychosom 84(4):241–249.
#6 Stanford University. UCLA Loneliness Scale (Version 3). accessed on 21th Oct 2019.