赤羽(Akabane)
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「赤肉や加工肉は普通に食べてOK!」という最新ガイドラインはどこまで信じていいのか?
2019年現在、赤肉や加工肉は「なるべく減らすべき食品」として世界各国でガイドラインが組まれています。国際がん研究機関(#1)でも、赤肉と加工肉はそれぞれ発がん性レベルで「おそらく人に対して発がん性がある(グループ2A)」「人に対して発がん性がある(グループ1)」に分類されていて、割と反対意見も少ない主張ではありました。
最新ガイドライン?!赤肉と加工肉は今まで通り普通に食べてよし!はどこまで信じていいのか?
ただ、2019年にマクマスター大学が発表した系統的レビュー(#2)では、これまでの風潮に異論を唱える立場をとっていました。
これは7か国から14名のパネラーが集まって、計5回の系統的レビューをまとめた内容で、うち4回分はRCTや観察研究をレビューして【赤肉や加工肉の循環器疾患やがんへの影響】を調べていて、残り1回は【人々の赤肉や加工肉に対する評価】をまとめていました。
そしてこの結果、次のような最新ガイドラインが提唱されたようです。
赤肉や加工肉に対する最新ガイドライン
- 赤肉や加工肉を減らすことで発がんリスクは下げられない
- 多くの人々は肉を健康だと思って食べていて、その食生活を変える気はないと答えていた
- 赤肉や加工肉は今まで通り食べていても健康にさほど悪影響はないので、そのままでOK
完全に今までのガイドラインとは正反対の見解ですね。赤肉や加工肉は今まで通り食べていて問題ないですよ!と。
ただ、よく見てみると気になる部分もあります。それは結論の導き出し方と結果の食い違いで、ザっとこの辺りになります。
つまり結論と結果が微妙に違っていて、3件で確認された結果についてパネラーたちは「些細な効果だ」と捉えたわけですね。これは、同じエビデンスを見ていても、見ている人によって解釈が異なってくる典型的な例かと。
また実験デザインの観点でも注意点があります。RCTが他よりも優れた手法なのは間違いないんですが、観察研究と違って、どうしても長期間の実験が難しかったりするんですよね。
観察研究では頑張れば30年間は追跡できるんですが、RCTだと現状出来て2~3年といったところでしょうか。その間被験者のコントロールが難しいし、実験に莫大な費用がかかるし、今回のように早死にリスクや慢性病の発症リスクを検証する場合だと、長期のデータが欲しいところ。
これらを踏まえると、今回のケースでは観察研究が向いてると言わざるをえません。
注意点・まとめ
今回の内容を受けて、赤肉や加工肉は制限せずに好きなだけ食べていいんだ!と解釈しないようにしたいですね。また研究内でも注釈が入っていますが、どちらの主張に転がっても【現時点ではエビデンスは弱め】なので、その点も気に留めておくと良さげです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 新ガイドラインによると、赤肉や加工肉は今まで通り食べていてもOKとの結論が出た
- ただし結果をよく見ると、赤肉や加工肉を減らすことで十分慢性病リスクを下げる効果が得られていたり、結論を導き出す過程の考えにも問題がありそう
- どちらに転んでもエビデンスレベルは高くないので、これまで通り赤肉や加工肉はなるべく減らす方向が良いのかも
こんな感じでしょうか。特に牛肉を減らすことは、温室効果ガスの削減にも繋がるので、環境と健康への配慮、ということでおひとつ。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Bouvard V, Loomis D, Guyton KZ, et al. Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. Lancet Oncol. 2015 Dec;16(16):1599-600.
#2 Johnston BC, Zeraatkar D, Han MA, et al. Unprocessed Red Meat and Processed Meat Consumption: Dietary Guideline Recommendations From the Nutritional Recommendations (NutriRECS) Consortium. Ann Intern Med. 2019 Oct 1.