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ビタミンDサプリはアスリートの筋力アップに役立つのか?
今回は「ビタミンDサプリの筋力アップ効果」についてのお話です。
ビタミンDはここ十数年で着実に注目を集めてきている栄養素で、オフィスワーカーなど日光を十分に浴びられない人たちはサプリで補給する必要がある!という主張も強くなっています。
というわけでこの記事では、そんなビタミンDサプリのアスリートへの効果を検証したデータを覗いてみましょう。
ビタミンDサプリはアスリートの筋力アップ補助アイテムなるか?
2019年に国立スポーツ科学センターが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、ビタミンD3サプリだけでは残念ながら筋力アップ効果は確認されなかったみたいです。
この研究では5件のRCTから163名のアスリート(ラグビー、サッカー、武道)を対象に効果を総まとめしていて、彼らはランダムで以下の2つのグループに分けられていました。
- サプリグループ(86名):毎日3570IUや週に20000IU、多いものでは一度に150000IUのビタミンD3サプリを飲む
- プラセボグループ(77名):効果のない偽薬を同量飲む
そして8日間〜12週間の実験期間の前後で、体内のビタミンDレベル(25(OH)D)や筋力の測定を実施、グループ間でどのくらいの差が生まれるのか?を比較したんですね。
するとこの結果149名が最後まで実験をやり遂げて、以下のようなことがわかりました。
- 血中のビタミンD濃度はプラセボに比べてサプリグループで有意に増加していた
- 胸や脚などの1RM(1回ギリギリ挙げられる重量)に伸びは見られなかった
まとめると、たしかにビタミンDサプリで血中のビタミンD濃度は増えていたけれども、これが筋力アップに繋がることはなかった!ということに。
こうした結果は同時期の2019年に上海体育学院専門学校が発表したメタ分析(#2)でも報告されていて、やはり全体的にビタミンDサプリだけで筋力をどうこうしよう!というのは無理があるかもしれません。ただ上半身と下半身で分けてみると、下半身でのみ筋力アップ効果が確認されたとも書いてあるので、この点はまだ何とも言えない感じです..。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、今回の結果はメタ分析と言えど規模は小さめ。5件の実験から200名に満たないサンプルサイズなので、統計的なパワーは弱めかと。
また実験期間も最大12週間と短いので、筋力の成長を見るならもう少し長期のデータも欲しいところです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ビタミンD3サプリは確かに血中のビタミンD濃度を高めた
- しかし筋力アップには繋がらなかった
- 実験の規模が小さかったり、期間も短いのでまだはっきりとした結論は出ない
こんな感じでしょうか。現時点ではまだデータが少ないので断言はできませんが、ビタミンDサプリだけで筋肉がどうこうなる!とは考えない方がよさそうです。
赤羽(Akabane)
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#1 Han Q, et al. Effects of vitamin D3 supplementation on serum 25(OH)D concentration and strength in athletes: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. J Int Soc Sports Nutr. 2019 Nov 26;16(1):55.
#2 Zhang L, et al. Effect of vitamin D supplementation on upper and lower limb muscle strength and muscle power in athletes: A meta-analysis. PLoS One. 2019 Apr 30;14(4):e0215826.