赤羽(Akabane)
目次
うつ病の改善には運動が最強だが、強度は好きに選んでいいの?どうなの?というお話
うつ病をはじめメンタルの病にめっぽう効くと分かっているのが運動ですが、実際のところ当人からしたら「運動のやる気すら出ないよ」ということは結構あるんではないでしょうか。
そんな場合を想定して、ここからは運動の強度は各自で好きに選んでも効果はあるの?という疑問について見ていきましょう。
うつ病改善の運動強度を好きに選ばせた場合 vs. 予め決められた場合の結果..
2019年にテッサリア大学が発表したRCT(#1)では、イギリスに住む43名のうつ病を抱えた女性(平均45~65歳)を対象に、次の2つのグループにランダムに分けて過ごしてもらうという実験を行っていました。
- お好み運動強度グループ:週3回、公共のジムのトレッドミルマシンで好きな強度で走る
- スケジュール運動強度グループ:週3回、公共のジムのトレッドミルマシンで予め決められた強度で走る(結果的にお好みよりもちょっとキツくなったみたい)
実験期間は4週間で、運動中は心拍数やキツさを尋ねる「ボルグスケール」などを測った様子。また実験の前後でうつ病の度合いを確かめる診断テストもやってもらって、各グループでどの位改善しているか?を比較しました。
すると結果、こんなことが分かったようです。
- お好みで選んだグループでは6名のうつ病スコアが実験前後で有意に改善していた
- 10名のうつ病スコアも実験前後で改善していたが、こちらは有意な結果ではなかった
- スケジュールされていたグループでは、うつ病スコアに有意な改善は見られなかった
まとめると、程度はありますが自分で運動強度を選んだグループの方が明らかにうつ病が改善していたんですね。
しかも有意な改善を見せたお好みの6名は、実験後のスコアが通常レベルまで善くなっていたみたい。これはなかなかすごい効果かと。全体で見ても逆効果は見られなかったようですし、やはり運動は最強ですね。
注意点・まとめ
ただし注意点も幾つかあって、以下の点は押さえておくとよろしいかと思います。
- 参加者は女性のみ:壮年期〜実年期の女性しか含まれていないので、どこまで一般化できるかはわからない
- サンプルサイズが小さい:参加者数が少なくて統計的なパワーが弱いので、細かい分析もできない
一般化の是非については、若い男女を対象にした同様のRCT(#2)でもお好みの運動強度でうつ病の有意な改善が確認されていたり、年齢や性別に関係なく効果はありそうです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- うつ病対策の運動は決められた強度よりも各自お好みの方が改善効果が高かった
- うち32%が有意な改善を見せて、うつ病スコアも通常まで善くなった
- 予め決められた強度だと期間内では有意な効果は見られなかった
こんな感じでしょうか。うつ病対策としての運動も、やはり個人差をしっかり考えて調整していくのが大事みたいですね。
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
「あそこはもっと..こうだ!」セルフトークはスポーツや学習のパフォーマンスを高めてくれるのか?一歩間違えると怪我や燃え尽き?運動への正しい情熱の注ぎ方参考文献&引用
#1 Morres ID, Hinton-Bayre A, Motakis E, et al. A pragmatic randomised controlled trial of preferred intensity exercise in depressed adult women in the United Kingdom: secondary analysis of individual variability of depression. BMC Public Health. 2019 Jul 12;19(1):941.
#2 Tim Carter, Boliang Guo, David Turner, et al. Preferred intensity exercise for adolescents receiving treatment for depression: a pragmatic randomised controlled trial. BMC Psychiatry. 2015; 15: 247.