筋トレを行う時の動作の「可動域」ってどれくらい大事なの?

筋トレを行う時の動作の「可動域」ってどれくらい大事なの?

赤羽(Akabane)

今回は「筋トレをこなす時の動作の可動域って筋肉の発達にどれほど大事なの?」というお話です。

筋トレを行う時の動作の「可動域」ってどれくらい大事なの?

筋トレ中の動作は、最後までゆっくりと曲げて伸ばすことが大切だ!下ろす動作の最後まで負荷が逃げないように効かせることで、筋肉がデカくなるんだ!

筋トレ中の可動域については、こういった意見が一般的かと思いますが、実際のところはどうなんでしょうか?この記事では、上記テーマについて、現時点での科学的な見解を見ていきます。

筋トレ時のモーションの可動域による筋肉の発達効果をまとめた系統的レビュー

2020年にニューヨーク市立大学が発表した系統的レビュー(#1)によると、筋トレ時のモーションの可動域は、鍛える部位によって違うかもしれないが、フルレンジでこなした方が効果的である!ということが分かりました。

この研究は、条件をクリアした質の高い6件の関連研究から、125名分のデータをまとめてレビューしたものです。関連研究の中身をザックリ見ていくと、こんな感じでした。

  • 上半身の筋トレ、および筋肉の発達を調べた研究が2件、下半身が4件
  • 可動域については、下半身のトレーニングでは【フルレンジ…0~140°】【パーシャルレンジ…0~90°】、上半身のトレーニングでは【フルレンジ…0~130°】【パーシャルレンジ…45~100°】という風に定義された
  • 実験期間は平均10.5週間で、筋トレは週2~3日だった

そしてレビューの結果、こんなことが分かりました。

結果
  • 下半身の筋肉に関しては、フルレンジの方がパーシャルレンジよりも筋肥大効果が高い傾向が見られた
  • 上半身の筋肉に関しては、エビデンスが少なかったため、結論が出せなかった

まとめると、フルレンジの可動域で行った方が、下半身の筋肉群の発達に対しては効果的であることが分かりました。

一方で、上半身の筋肉への効果については、エビデンス不足ということでしたが、詳しく見てみると2つの研究でも結果が割れていました。1件ではフルレンジに軍配が、もう1件ではパーシャルレンジに軍配が上がっていて、この辺りの差には実験で行われた筋トレ内容の違いが大きく関係していそうです。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • サンプルサイズは小さい: 6件の研究が含まれたが、対象になったのは人数は135名と少なめ。この分、統計的なパワーは弱くなる
  • サンプルの9割は若い男性: 今回レビュー対象に含まれた94%の人が若い男性だったので、女性や他の年齢層の人たちで同じ結果になるか?は分からない
  • 筋トレ経験者を対象にした研究は1件しかない: 今回レビュー対象に含まれた研究は、大半が筋トレ初心者を対象にしていた。同じトレーニングでも初心者と上級者では筋肉の発達が変わってくるので、経験者で同じ結果になるか?は分からない

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 筋トレを行う時の動作の可動域によって、筋肉の発達に一部効果の違いが見られた
  • 6件の過去の研究を含んだ今回のレビューでは、下半身の筋肉の発達については、フルレンジでの動作の方が効果的であるという結果がある程度得られた
  • 一方で、動作の可動域の広さによって上半身の筋肉の発達はどう変わるか?に関しては、まだ十分なエビデンスがないみたいだ

現段階では、思ったよりもエビデンスが少ない印象を受けましたが、ひとまず下半身のトレーニングで筋肥大を狙いたい場合は、フルレンジが良さげでしょうか。

赤羽(Akabane)

今回の系統的レビューは、筋トレ研究で活躍されているブラッド・ショーンフェルド氏の主導研究でした。同氏の研究は過去にもいくつか紹介させていただいていますので、興味のある方は続きもご覧ください。

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参考文献&引用

#1 Schoenfeld BJ, Grgic J. Effects of range of motion on muscle development during resistance training interventions: A systematic review. SAGE Open Med. 2020;8:2050312120901559. Published 2020 Jan 21. doi:10.1177/2050312120901559