赤羽(Akabane)
目次
朝食を抜いて運動しても食欲が暴走することはない!むしろ一日のカロリー収支はマイナスに…?
朝食+運動を色々なパターンでこなしてもらう実験
2019年にエディスコーワン大学が発表したランダム化クロスオーバー試験(#1)によると、朝食を抜いて運動をすると一日のカロリー収支はむしろマイナスになってダイエット効果が見込めるかも!みたいです。
この研究では、12名の活発な男性(平均23歳)を対象にしたラボ実験を行っていまして、実験では全員に以下3つのグループをランダム順でこなしてもらっていました。
- 朝食抜き+運動する(FE: Fasted and Exercise)
- 朝食を食べる+運動する(BE: Breakfast and Exercise)
- 朝食を食べる+運動しない(BR: Breakfast and Rest)
*朝食はオーツ麦のシリアルで431kcalを摂取。 運動は60分のサイクリングを行う。
参加者はそれぞれのグループの間に一週間以上の間隔を空けることで、前のグループでの影響がないようにしました。実験中には、血液サンプルを採取したり、耐糖能テスト(血糖値コントロールのチェック)やエネルギー代謝の測定を行い、実験後は同じ昼食が与えられます。
そしてこの実験の面白いところは、実験終了後の翌24時間までカロリー摂取を追跡している点です。昼食後、研究チームは参加者にその後24時間分の食事を与えていまして、グループによってどのくらい食べる量が違うのか?や、先述のエネルギー代謝のデータと組み合わせると一日のエネルギー収支はどうなるのか?というところまでチェックしています。
果たして実験の結果、以下のようなことが分かりました。
- 実験から24時間までのエネルギー収支は、FEで最もマイナスになっていた(-400kcal; 95%CI: −230~ −571 kcal)
- BRでは最もエネルギー収支がプラスになっており、BEではほぼプラマイゼロくらいだった(BR…+492kcal; 95%CI: 332~ 652kcal, BE…+7kcal; 95%CI: −153~ 177kcal)
- BRでカロリー摂取が増えた背景には、炭水化物が大きなウェイトを占めていた
どうやら、朝食を抜いて運動をしてもドカ食いをしてしまう心配はなさそうですね。むしろ、結果的に一日のエネルギー収支は他と比べてマイナス、しかもその差は菓子パン一個分相当です。
また運動後の糖耐能テストによると、FEでは運動中に肝グリコーゲンが主にエネルギー源として使われていたことが示唆されました。体内のエネルギーが枯渇したときの為に、肝臓ではエネルギーを貯蓄しておく機能があるのですが、朝食を抜いて運動をしたことで、ここからエネルギーが使われていた!と何とも納得のいく話です。上記のグラフを見ても、その代償としてFEで昼食のカロリー摂取量が若干多くなっているのが分かります。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 参加者数が少ないため、統計的なパワーは弱くなる
- サンプルは限定的: 活発な若い男性のみを対象にしているので、女性や高齢者、太り気味/肥満体系の人などの場合にどこまでの結果になるかはわからない
- 実験は短期決戦: 参加者一人につき、間隔を空けて3日分のデータしかないので、長期的に見た場合にカロリー収支などがどうなっているのか?は分からない
このように今回の実験だけでは心もとないですが、2019年にモナッシュ大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#2)では、質の高い13件の研究をまとめた結果、朝食は食べるより抜いたほうが痩せやすいのでは?という結論に達していました。これを踏まえると、朝食抜きに加えて運動をすることは一日のカロリー支出を高めるのに効果的なのではないかと考えられます。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 朝食を抜いて運動をすると、その後食欲が暴走して結局カロリー超過になるのでは?という懸念があった
- しかし今回の比較実験では、朝食を抜いて運動をした場合の方がカロリー収支がマイナスになり、朝食を食べて運動をした場合ではプラマイゼロ、朝食を食べて休んでいた場合では大きくプラスになっていた
- 朝食を抜いて運動をした場合、運動中には筋グリコーゲンや脂質ではなく肝グリコーゲンが主にエネルギー源として使われていた
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
朝食を抜くと結局太るの?痩せるの?に現時点で一番信頼できるメタ分析が出ていた件。朝食 vs. 夕食!全く同じ食事&カロリーを違うタイミングで摂ると代謝にどんな影響があるのか?朝食を毎日抜くと脳卒中で死ぬリスクが高まる!はどこまで信じていいのか?健康でいつまでも美しくいるための食事:カロリーは量ではなく”質”にこだわろう参考文献&引用
#1 Edinburgh RM, Hengist A, Smith HA, Travers RL, Betts JA, Thompson D, Walhin JP, Wallis GA, Hamilton DL, Stevenson EJ, Tipton KD, Gonzalez JT. Skipping Breakfast Before Exercise Creates a More Negative 24-hour Energy Balance: A Randomized Controlled Trial in Healthy Physically Active Young Men. J Nutr. 2019 Aug 1;149(8):1326-1334. doi: 10.1093/jn/nxz018. PMID: 31321428; PMCID: PMC6675614.
#2 Sievert Katherine, Hussain Sultana Monira, Page Matthew J, Wang Yuanyuan, Hughes Harrison J, Malek Mary et al. Effect of breakfast on weight and energy intake: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials BMJ 2019; 364 :l42