赤羽(Akabane)
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睡眠負債は日中の活動にどのくらい恐ろしい影響を及ぼすのか?
「私たちは睡眠の重要性を分かっていながら、睡眠の優先順位は低い(#1)」という報告があるように、人は睡眠を大事と理解しつつ他の活動の後回しになっているようです。
こうした睡眠負債は現代ではより一層問題になっていますが、ここでは日中のパフォーマンスに与える影響について見ていきましょう。
睡眠負債は毎日ちょっとずつでも認知機能に悪影響が
2003年にペンシルバニア大学医大学院が発表したRCT(#2)によると、毎晩数時間ずつの睡眠負債でも認知パフォーマンスを大きく低下させるようです。
この研究では48名の健康な男女(21〜38歳)を対象に、14日間の睡眠に関する実験を行いました。まず初日の睡眠を全体で8時間睡眠に揃えてから、彼らをランダムで以下の4通りのグループに分けました。
- 毎晩4時間睡眠
- 毎晩6時間睡眠
- 毎晩8時間睡眠
- 3日間ぶっ通しオール(このグループのみ3日間)
それから、参加者ら全員は夜起きている間は2時間ごとにワーキングメモリの認知タスクを課されました。この成績に睡眠負債がどのくらい影響するのか?を比較しているんですね。
すると実験の結果、こんなことがわかりました。
- 6、4時間睡眠グループでは睡眠負債がたまるほど認知タスクのパフォーマンスが低下していた
- こうしたパフォーマンスの低下は1~2日間ぶっ続けでオールした後に相当していた
- 一方で8時間睡眠グループの認知タスクの成績は14日間で普通の学習カーブを描いていた
まとめると、4~6時間睡眠が数週間にわたって慢性化すると、数日ぶっ続けでオールした後と同じくらい認知のパフォーマンスは下がる!という事です。どうやら、毎日ちょっとずつ..でも睡眠負債が溜まると恐ろしいことになるようですね。
しかもこうした認知機能の低下は、当の本人達には気づかれないようで、主観的な眠さなどはそれ程変わらなかった様子。自分ではわからない分、たちが悪いと言いますか..。
注意点・まとめ
今回の研究はラボ内で環境をコントロールしつつ行われている分、なかなか実験の質は高いです。ただ、対象は若い人が中心なので、高齢の方ではまた違った結果が出ると思われます。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 睡眠負債は日中の認知パフォーマンスを低下させる
- 4~6時間睡眠でも2週間程で数日オールした後と同等まで認知パフォーマンスが下がることが分かった
- しかもこうした影響は当の本人たちにはわからないようで、気づかないうちに負債が溜まっていくことも
こんな感じでしょうか。睡眠負債のせいで知らず知らずのうちに日頃のパフォーマンスが下がっているかも!と。
赤羽(Akabane)
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#1 National Sleep Foundation. National Sleep Foundation’s 2018 Sleep in America® Poll Shows Americans Failing to Prioritize Sleep. accessed on 24th Dec 2019.
#2 Hans P.A. Van Dongen, et al. The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation. Sleep, Volume 26, Issue 2, March 2003, Pages 117–126.