風力タービンの騒音で睡眠の質はどれくらい下がるのか?という実験

風力タービンの騒音で睡眠の質はどれくらい下がるのか?という実験

赤羽(Akabane)

今回は「環境音のノイズで睡眠の質はどのくらい下がるの?」というお話です。

風力タービンの騒音で睡眠の質はどれくらい下がるのか?という実験

風力タービンの騒音は睡眠にどんな影響を及ぼすのか?

2020年にイェーテボリ大学が発表したRCT(#1)によると、風力タービンの騒音で主観的な睡眠の質はガクッと下がるものの、客観的な指標には一部の悪影響しかないことがわかりました。

この研究では、50名(平均51歳)を対象に睡眠データを比較する実験を行なっています。参加者はラボで3日間を過ごすことになるんですが、その際、睡眠環境によって以下2つのパターンにランダムで振り分けられました。

  • 騒音環境(24名): 風力タービンの音を寝室の付近で夜通し流される。音は振幅(大or小)と音の大きさ(窓を密閉するか少し開けるか)で2×2の4パターン用意され、日や時間帯によってランダムで流れた。音は一晩で平均45dBになるよう調整された
  • 比較環境(26名): 騒音とは無縁の環境で気持ちよく眠る

*睡眠時間は23:00〜7:00。睡眠の変化を試すため、騒音グループも一晩につき4回、10分間の静寂が用意された

測定項目は、睡眠ポリグラフ検査を使って客観的な睡眠のデータを集めたり、アンケート調査から主観的な睡眠の質も聞き取りをした様子。また、唾液中のストレスホルモン(コルチゾール)も採取して、いろいろな視点から睡眠の質を比べています。

そして3日分のデータを集計したところ、こんなことが分かったようです。

結果
  • 風力タービンの騒音有りの晩は、REM睡眠に入るまでの時間が増加し、トータルのREM睡眠時間が減った(+16.8分、-11.1分)
  • また主観的にも翌朝の疲労感やイライラが増し、眠れなかった、睡眠の質が低かったと答える傾向が見られた
  • 入眠時間や総睡眠時間、中途覚醒、起床時のストレスホルモンなどはグループ間で特に違いが見られなかった

まとめると、タービンの騒音があった晩は主観的・客観的にも睡眠の質が下がっていた様子。ただ、客観的なデータはREM睡眠への悪影響しか出ておらず、「思ったほどではないかも…?」という感じが漂っております。

詳しい調べによると、どうやら騒音に敏感な人ではタービンの騒音があった晩に総睡眠時間が減っていたようです。つまり、タービンの騒音で睡眠に悪影響を受けるかどうかは個人差による部分が意外と大きいかもしれないと。

また騒音のパターンで比較すると、窓を閉め切っている場合、振幅が大きい音の時に中途覚醒が起きやすくなっており、逆に窓が少し開いている場合は、振幅が小さい音の時に起こりやすくなっていたようで、こうしたパターンはREM睡眠に対しても同じく確認された様子。

この辺は解釈が難しいですが、窓が開いていて大きな音が聞こえる場合には、音の振れ幅が大きいリズミカルな騒音が睡眠を邪魔しやすく、逆に締め切っていて音が小さめな時は、振れ幅が小さく一定した騒音の方が悪影響が大きかったんだ!といった見方ができます。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • サンプルサイズは小さい: 参加者数が少ない分、統計的なパワーは弱くなる
  • サンプルはやや限定的: 参加者は北欧の一部地域で集められたため、人種や生活環境などが偏っているかも。その為、どこまで一般化できる内容かは分からない
  • 音の種類までは考慮されていない: 今回は風力タービンの音のみでの検証なので、電車の音など他のパターンでどうなるかは分からない

サンプルに関する問題を除けば、かなり色々な要素が考慮されていたりと、質の高い実験デザインだったと思います。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 風力タービンの騒音で主観的な睡眠の質はガクッと下がったものの、客観的な指標には一部の悪影響しかなかった
  • 具体的には、REM睡眠への悪影響や翌朝の疲労感やイライラ、主観的に睡眠の質が落ちたと感じるなどの影響が見られた
  • その他にも、騒音の大きさや振幅、騒音に対する過敏性の個人差などによっても結果は変わってきそうだ

赤羽(Akabane)

個人的には、客観・主観的なデータで結果の程度が違うのが気になります。客観データには睡眠測定のゴールドスタンダードである「睡眠ポリグラフ」を使っているわけですし、主観的なデータが大袈裟に出ているだけだ!と考えられますが、一方でポリグラフ検査でも微細な変化までは読み取れないことを踏まえて、客観データでは測れない何か悪い影響があるのかもしれない!とも言えます。この辺りは現段階ではよく分かりません。

関連記事はこちらもどうぞ

夜勤の仕事で満足に寝れないあなたへ「ナイトシフトで睡眠を最適化するルール」夜勤の仕事で満足に寝れないあなたへ「ナイトシフトで睡眠を最適化するルール」快眠をデザインする寝室の室温とパジャマの材質とは?快眠をデザインする最適な寝室の室温とパジャマの材質とは?木造の家や木に囲まれた寝室で眠る人ほど不眠症を訴える割合が少ないらしい木造の家や木に囲まれた寝室で眠る人ほど不眠症を訴える割合が少ないらしい

参考文献&引用

#1 Michael G Smith, Mikael Ögren, Pontus Thorsson, Laith Hussain-Alkhateeb, Eja Pedersen, Jens Forssén, Julia Ageborg Morsing, Kerstin Persson Waye, A laboratory study on the effects of wind turbine noise on sleep: results of the polysomnographic WiTNES study, Sleep, Volume 43, Issue 9, 1 September 2020, zsaa046, https://doi.org/10.1093/sleep/zsaa046