赤羽(Akabane)
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スマホなどのタッチスクリーンのデバイスは乳幼児の学習効果を促進してくれるのか?
今ではスマートフォンをはじめ、タッチスクリーン機能を搭載した機器がかなり流通していますね。
こうした機器は学習用途でも使われることが多くて、しばしば「デジタル vs. アナログ論争」みたいなのが起こるわけです。
そこでこの記事では、乳幼児期にタッチスクリーンの教材に触れることで学習効果は高まるのか?という問題について見ていきます。
タッチスクリーンのデバイスは学習教材としても役に立つみたいだ
2018年に華中師範大学が発表したメタ分析(#1)によると、タッチスクリーン式のデバイスは子どもの学習教材としても効果的であることが分かりました。
この研究では、36件の関連研究から4,206名の乳幼児(0〜5歳まで、平均生後21.33〜71.3ヶ月)を対象に、以下のような疑問を追究していきました。
- タッチスクリーンのデバイスは乳幼児の学習効果を高めるのか?: 効果量(効果の大きさを分かり易く示した数値)「d = 」で表す
- その効果に影響を与えている要素は何か?: 年齢、学習教材、テスト形式、効果の比較対象、実験の環境
そして、まずタッチスクリーンの学習効果の全体的な効果を見ていくと、こんな結果になったようです。
- タッチスクリーンのデバイスによる乳幼児の学習効果は全体で中くらいだった(d = 0.46, 95% CI 0.35 ~ 0.57, p < 0.001, I2 = 91.00%)
ここから言えるのは、「タッチスクリーンの教材は、そうでないものよりもある程度は学習効果が高かった」ということですが、何やら「I2 = 〇〇」で表される効果のバラつきの数値が大きいですね。これは、効果が実験によってバラバラであることを意味しています。
そこで、もう少しそれぞれの実験を詳しく見てみると、こんなことも分かりました。
- 年齢が上がるにつれてタッチスクリーンの学習効果は高まった
- 学習教材は、STEM教育の場合に、そうでない教材よりも高い効果があった
- 効果の比較対象は、何もしない場合と比べると最も高く、他にも従来の授業、マウスを使ったPCでの学習、紙、物体といった学習方法よりも有意に効果があった
- 紙か口頭か?といったテスト形式はあまり関係がなかった
- ラボよりも実際の教室で行われた方がタッチスクリーンの学習効果は高まった
「STEM教育」というのは、「Science, Technology, Engineering and Mathematics」の頭文字をとったもので、科学、技術、工学、数学の4科目の総称です。これらの分野では、いわゆる批判的思考力(クリティカルシンキング)や問題解決力などが求められまして、タッチスクリーンはこうした学習にはもってこいだ、と。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 5歳までの乳幼児以外で同様の結果が得られるか?は分からない
- タッチだけでなく、ドラッグやズームなどデバイスの使い方によって効果が変わるかどうか?までは分からない
- 細かく調べた分析では、それぞれの要素を一つずつ分析していったので、二つ以上の要素によるシナジー効果などは考慮できていない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- タッチスクリーンのデバイスによる乳幼児の学習効果は効果量で表すと中くらいだった
- この効果は年齢とともに高まっていって、従来の教室での学習や紙ベースの学習、PCとマウスを使った学習よりも効果は高いことが分かった
- 細かく見ると効果にバラつきは大きいが、乳幼児の教育のためにタッチスクリーンの教材を使うメリットはありそうだ
赤羽(Akabane)
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#1 Xie H, Peng J, Qin M, Huang X, Tian F, Zhou Z. Can Touchscreen Devices be Used to Facilitate Young Children’s Learning? A Meta-Analysis of Touchscreen Learning Effect. Front Psychol. 2018;9:2580. Published 2018 Dec 18.