赤羽(Akabane)
目次
冬にビタミンDサプリを飲んでおくと来春のストレスに強くなる?
ビタミンDサプリで冬〜春にわたってストレス耐性がアップ?!
2020年にベルゲン大学が発表したRCT(#1)によると、ビタミンDサプリを冬から飲み続けることで来たる春にストレス耐性やレジリエンスが改善することが分かりました。
この研究では、虐待などで精神状態が不安定な86名を対象に、ビタミンDサプリを数ヶ月飲み続けてもらう実験を行っています。実験ではストレスレベルの変化を調べていまして、その為にまず参加者を以下の2グループにランダムで振り分けたようです。
- ビタミンDサプリ: 1600IU相当のビタミンDをサプリで摂取する
- プラセボ: ビタミンDサプリに似せた効果のない偽薬を飲む(120mgのオリーブオイル入り)
実験期間は1月〜5月で季節は冬から春にあたります。そして実験前後で、参加者らを微弱なストレス下に晒す認知テストを行い、その間の心拍数や心拍変動の測定をしたり、唾液や血液サンプルの採取、心理面のコンディションを尋ねる問診を行い、サプリによってこれらの結果にどのような改善が見られるのか?を見ていきました。
果たして実験の結果、以下のようなことが分かりました。
- 実験期間が経つごとに、ビタミンDサプリグループでは体内のビタミンDレベルが上昇し、プラセボでは逆に減少していった
- 心拍数や心拍変動を基準にしたストレス耐性テストでは、両グループで耐性&ストレスからの回復力アップが確認されたが、ビタミンDサプリグループでのみ有意な改善が見られた
- セロトニンやコルチゾール(ストレスホルモン)に対しては、ビタミンDサプリによる有意な効果は見られなかった
まとめると、冬から春にかけてビタミンDを飲み続けたグループではちょっとしたストレスにもより強くなり、そこから立ち直る力もアップしていた!と。一方で唾液や血液から採取したセロトニンやコルチゾールには大して効果がなかった様子。
ビタミンDレベルに関しては予想通りの結果かと思います。冬は日照時間が減るので、日光を浴びて体内で合成されるビタミンDの濃度も減ります。そして今回の結果では、これをビタミンDサプリの追加摂取で食い止められる!という可能性が示唆されたんですね。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 参加者数が少ない分、統計的なパワーは弱くなる
- サンプルに偏りが見られる: 参加者はアメリカのみで集められており、大半が白人で男性のみ
- 他の要素の影響があまり考慮されていない: 参加者の年齢や性別をはじめ、既往歴や経済ステータス、学歴などの人口統計学的な変数は結果に影響を与えうるが、今回は年齢しか考慮されておらず、ビタミンDサプリ以外の要素の影響が残っている可能性がある
実験デザインはなかなか良かったですが、サンプルの面では課題が多い印象です。今後は同様の研究が色々な地域・人種の人たちを対象に行われるとエビデンスの質もグッと上がりそうです。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- ビタミンDサプリを冬から春にかけて飲み続けると、ストレス耐性がつく!という実験結果
- 精神状態が不安定な男性を対象にした実験では、ビタミンDサプリを春先にかけて数ヶ月飲むことでストレス耐性&回復力がアップし、冬の体内のビタミンDレベルの減少も食い止められることが分かった
- ただし、サンプルサイズが小さいことや、サンプルがかなり限定的であることが課題としてあり、どこまで一般化できる内容なのかは現段階で未知数
赤羽(Akabane)
関連記事はこちらもどうぞ
ビタミンD摂取の最重要経路「日光浴」は窓ガラス越しでも効果があるのか?ビタミンDは呼吸器系や認知機能、自己免疫疾患、メンタルヘルスの改善にどこまで効果があるのか?ビタミンDサプリのがん・心血管疾患リスク予防効果が質の高い実験で否定されたみたいだ参考文献&引用
#1 Hansen, A.L.; Ambroziak, G.; Thornton, D.; Mundt, J.C.; Kahn, R.E.; Dahl, L.; Waage, L.; Kattenbraker, D.; Araujo, P.; Murison, R.; Rypdal, K.; Grung, B. Vitamin D Supplementation during Winter: Effects on Stress Resilience in a Randomized Control Trial. Nutrients 2020, 12, 3258.