赤羽(Akabane)
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強行的な取り調べでは被疑者から真実を引き出せない!
警察ドラマの見すぎでしょうか、強行的な取り調べというとこんなイメージがあります。私は実際に体験したことも、他人の体験を見聞きしたこともないのでハッキリとは分かりませんが、どうも被疑者に対するひどい取り調べというのは少なくとも存在しているようです。
そこで気になるのが、「強行的な取り調べって効果はあるの?」という問題。この記事ではこのテーマについて参考になるデータを見ていきましょう。
強行的な取り調べは自白を引き出すのに有効?他の取り調べと比べるとどうなの?
2012年にテキサス大学が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、強行的な取り調べは自白を引き出すのに有効ではあるものの、無実の自白も増やしてしまうことが分かりました。
この研究では、最終的に5件の実地調査と12件のラボでの実験を集めて、大きく以下2種類の取り調べスタイルの効果を比較しています。
- 強行型: 被疑者を犯人だと決めつけ、犯行の否定を頑なに受け容れない、揉める、暴言を浴びせる、心理的に操ろうとするなど
- 情報収集型: 被疑者と友好的な関係を築く、アクティブリスニングで相手の話をしっかり聴く、真実を追求するなど
*基準…自白を引き出せたか?、その自白は真実だったか?など
強行型はアメリカでよく見られ、情報収集型はイギリスやオーストラリア、ニュージーランドなどで一般的なスタイルなようです。どちらも違ったアプローチで犯人検挙というゴールを目指していますが、結果やいかに。
- 実際の取り調べなど、実地調査の結果だけ見ると、どちらの取り調べスタイルでも同様に自白を引き出すことができていた
- ラボでの実験も含めると、真実の自白をより引き出せたのは「情報収集型」だった
- 「情報収集型」は真実の自白をより引き出しつつ、無実・嘘の自白を減らす方向で効果を発揮していることが分かった
まとめると、一見どちらも【自白を引き出す】という点においては効果的に思えますが、真実の自白を引き出すには「情報収集型」の方がずっと効果的だったんですね。
ではどうしてこうなったのでしょう?考えられる要因として以下のような説が挙げられていました。
- 「情報収集型」のコミュニケーション方法によって、被疑者の言葉数が増えることが想定されるため、その分、判断材料もたくさん集まり、嘘の証言が飛び出るチャンスも増える
- 「強行型」の被疑者に対する強硬な姿勢によって、彼らは必要以上に動揺したり不安になったりしてしまい、嘘つきとそうでない人を見分ける邪魔になった
イメージとしては、「情報収集型」のメリットと「強行型」のデメリットによって両者に差が生まれてしまっている!という感じでしょうか。被疑者を動揺させてしまうと、かえって証言の真偽が確かめづらくなる、というパラドックス..。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズは小さい: 研究数の割に、それぞれの実験のサンプルは少ないので、統計的なパワーは弱くなる
- 実地調査では自白の真偽が分からない: 実地調査の結果だけでは当てにならず、ラボでのよりコントロールされた場での結果が重視される
- 日本での研究は含まれていない: アメリカやイギリスの研究がほとんどで、こうした結果が日本の取り調べにどこまで適用できるか?は分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 強行的な取り調べでは被疑者から真実を引き出せず、間違った自白を強要してしまう可能性が高い
- 「強行型」と「情報収集型」の取り調べスタイルを比較すると、両者とも自白を引き出すには効果が認められたが、「強行型」では間違った自白を増やしてしまうことも分かった
- 「情報収集型」では、より多くの判断材料が集まるうえに、より真実の自白を引き出すことができる点で、「強行型」よりも優れていると言える
赤羽(Akabane)
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#1 Meissner, C. A., Redlich, A. D., Bhatt, S., Brandon, S. (2012). Interview and interrogation methods and their effects on true and false confessions. Campbell Systematic Reviews, 2012, Article 13. doi:10.4073/csr.2012.13