赤羽(Akabane)
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高齢者が筋トレを無理なく楽しく続けられるための最適なアプローチとは?
筋トレが、世代を問わず健康にイイというのは間違いないですが、続けるのは言うほど簡単ではありません。特に高齢者になるほど、体は衰えていきますし、長く続けるのは難しいかもしれません。
そこで、この記事では「高齢者でも無理なく筋トレを続けられる最適なアプローチが分かったかも!」というデータを見ていきます。
高齢者が無理なく筋トレを続けるには「自覚的運動強度(RPE)」でメニューを組むべし
2019年にマイアミ大学が発表したRCT(#1)によると、高齢者が無理なく楽しく筋トレを続けるには、自覚的運動強度(RPE)を使ってメニューを調整していくのが最適であることが分かりました。
この研究では、82名の高齢者(平均71.8歳)を対象に、12週間の筋トレプログラムを実施していまして、その内容別に以下のようなグループに分けられたようです。
- 1RM%グループ(20名): 1RM80%の強度でトレーニングを行う方法
- RPEグループ(20名): 主観的な運動のキツさに応じて負荷を調整する方法。具体的には、RPEスケールで8以下が数日続いたメニューは負荷を上げるという感じ
- RMグループ(21名): 決められたセット数・レップ数を補助なしで数日こなせた場合に、上半身で5%、下半身で10%ずつ負荷を増やしていく方法
- RIRグループ(21名): RMグループと大体同じだが、各セットは「もう挙がらない…」の1回手前で止めるように指示する
*1〜3週目は慣らし期間、4〜7は週2回、8〜11は週3回の筋トレを行う
*各種目は3セット×7レップ、インターバルは最低1分間で全グループ共通の設定
どのやり方も、筋トレメニューを組む上ではよくある方法でして、RPEやRIRも主観でキツさを判断する割には、客観的なデータと比べて精度が高いことがわかっています。
トレーニング種目としては、フリーウェイトは使わずにマシン8種目をこなしたようで、胸や脚、お尻、腕、背中とまんべんなく鍛えたみたい。対象が高齢者であるのを考えれば納得がいきますね。
そして実験前後で筋力や身体機能のテストを実施した結果、こんなことが分かりました。
- グループ間で、筋力や歩行機能、座ったり立ち上がったり、物を運んだりといった運動機能全般には有意差が見られなかった
- RPEグループで、運動の「楽しさ」や「キツさ」といった項目のスコアが良い傾向にあった(= 楽しい、あまりキツく感じない)
- 実験を通しての筋トレのボリュームに関しては、RM・RIRグループで特に多かった
まとめると、筋トレの成果や高齢者の運動機能の改善には、どのグループでも差はなく、効果は見込めるようでしたが、主観的なキツさや楽しさはRPEによる強度調整がベストだった!という感じでしょうか。
ちなみに、トレーニングのボリュームというのは【重量 × セット数 × レップ数】で計算します。つまり、セットや回数が多いだけでなく、扱う重量が重ければボリュームはデカくなります。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- サンプルサイズが小さい: 単一の比較試験にありがちな問題で、参加者数が少ない分統計的なパワーは弱くなってしまう
- RPEの楽しさ増幅効果はトレーニングを妥協したことの裏返しかも…: RPEグループでボリュームが小さいことや、筋トレに慣れていない高齢者であることを踏まえると、RPEによって参加者が筋トレ強度を妥協した可能性がある
つまり、RPEによって筋トレが楽しく続けやすくなる可能性は高いけれど、その反面、妥協し続けると筋トレの効果が落ちてしまうかも…?ということも考えられると。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 高齢者が筋トレを無理なく楽しく続けられるための最適なアプローチは「自覚的運動強度(RPE)」だった
- 今回の実験では、RM(最大筋力)を目安にしたメニュー構成などと比べて、RPEを基準に負荷を変えていったグループで「運動が楽しくキツ過ぎない」傾向が見られた
- それでいて、他のやり方と同レベルの筋力アップ、運動機能の改善効果が確認された
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Buskard ANL, Jacobs KA, Eltoukhy MM, et al. Optimal Approach to Load Progressions during Strength Training in Older Adults. Med Sci Sports Exerc. 2019;51(11):2224–2233. doi:10.1249/MSS.0000000000002038