新型コロナウイルスで1ヵ月都市封鎖(ロックダウン)を食らうと心身の健康はどうなるのか?

新型コロナウイルスで1ヵ月都市封鎖(ロックダウン)を食らうとどうなるのか?

赤羽(Akabane)

今回は「新型コロナによる都市封鎖(ロックダウン)の心身の健康への影響」についてのお話です。

新型コロナウイルスで1ヵ月都市封鎖(ロックダウン)を食らうとどうなるのか?

2019年12月末、中国の武漢で初の感染者が報告されてから、新型コロナウイルス(COVID-19)は世界各国に拡大しています。

特にイタリアやスペイン、アメリカなどの感染拡大が深刻な国では、「都市封鎖(ロックダウン)」といった強硬手段に講じている地域も少なくありません。

2020年4月上旬、日本でも7都市(のちに愛知も県独自に発表)で「緊急事態宣言」が発令されました。これは都市封鎖ほどの強制力はありませんが、私たちの生活範囲がかなり制限される点では共通しています。

というわけで、この記事ではCOVID-19による都市封鎖が、私たちの心身の健康に一体どんな影響を及ぼすのか?というデータを見ていきます。

中国で起きた1ヵ月の都市封鎖(ロックダウン)が感染していない人々にもたらした影響

2020年4月にシドニー大学が発表した研究(#1)によると、1ヵ月の都市封鎖を食らうだけでも私たちの心身への影響は大きいことが判明したようです。

この研究は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が起こっていた中国の64都市を舞台に、2020年2月21~22日の間で369名の成人を対象に調査を行ったもの。彼らが置かれていた状況別に内訳を見るとこんな感じでした。

仕事の状況

  • 27%はオフィス勤務を続けていた
  • 38%は在宅勤務をしていた
  • 25%が新型コロナの影響で仕事をストップしていた
  • 8.7%は都市封鎖の期間中もそれ以前も仕事をしていなかった
  • 1.6%は都市封鎖によって仕事を失った

外出の状況

  • 34%が期間中一度も家を出ていなかった
  • 14%が期間中一度だけ外出していた
  • 31%が期間中2~4回外出していた
  • 22%が期間中5回以上外出していた

運動の状況

  • 14%が調査時点から過去1週間で一度も運動をしていなかった
  • 61%が調査時点から過去1週間で一日当たり1時間まで運動していた
  • 17%が調査時点から過去1週間で一日当たり1~2.4時間まで運動していた
  • 8%が調査時点から過去1週間で一日当たり2.5時間以上運動していた

ちなみに、64都市まで調査対象を広げた理由としては、都市によってCOVID-19の影響レベルに差があったからです。この差を汲み取ることで、調査結果にどんな違いが出るのか?も考慮したかった、という事です。

そして上記の状況別に彼らの心身の健康状態や活力、ストレスについてチェックしたところ、以下のようなことが分かりました。

結果
  • 1ヵ月の間休業を余儀なくされた人たちは、仕事を続けていた人や在宅勤務していた人よりも心身の健康が悪化し、ストレスが高まり、人生満足度や活力も低かった
  • COVID-19の感染拡大の影響を大きく受けている都市では、人生満足度が低い傾向が見られた
  • COVID-19の影響の大きさとそこに住む対象者の人生満足度の低下との相関については、一日当たりの運動時間が影響していた

まとめると、1ヵ月の都市封鎖の間にも、特に休業を余儀なくされた人々で心身の健康が悪化していたんですね。また意外なことに、COVID-19の感染拡大が強力な都市では人生満足度の指標は低い傾向が見られましたが、この相関には一日当たりの運動時間が影響していたとのこと。

これについては、「都市封鎖の期間中も運動をいっぱいしていた人の方が心身共に健康で人生満足度も高かったんでしょ?」と思われがちですが、実際はさにあらず、COVID-19の影響が深刻な都市では運動をちょっぴりするだけかそれ未満の人の方が人生満足度がプラスになる傾向が見られました。(一日当たり30分かそれ未満)

こうした結果を受けて、研究チームは次のような見解でした。

恐らく運動時間が少なかった人々は、COVID-19の深刻な影響から都市閉鎖を与儀なくされることで、元々あまり運動をしなかった暮らしを上手く正当化できたのではないかと思われる。[筆者訳]

つまり、元々大して運動していなかった人が外出を禁じられたところで痛くも痒くもないんじゃないか?と。逆に活発だった人からすれば、満足に運動ができない状況というのは苦痛でしかないですからね..。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくとよろしいかと。

注意
  • 調査結果はアンケートなので対象者らの主観が混じる
  • 子どもは対象に含まれていない
  • 「都市封鎖の期間中もその前も仕事をしていなかった人」や「都市閉鎖によって職を失った人」たちのデータは少なかった

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 1ヵ月都市封鎖を食らうだけでも、主観的な心身の健康やストレス、人生満足度、活力などに大きな影響があることが分かった
  • COVID-19の感染拡大の影響が大きい地域では人生満足度が低下する傾向が確認されていて、特に日頃から活発に運動をしていた人で悪影響があるかもしれない
  • 都市封鎖や緊急事態宣言で外出が制限される状況では、ウイルスの感染だけでなく心身の健康にも気を付けたほうが良さそうだ

赤羽(Akabane)

家でも筋トレや軽い運動くらいなら出来ますし、今ならYouTubeで有益なトレーニング情報も探せると思うので、息抜きの運動はやはりお勧めです。他にも友達や恋人と会って話せないストレスもあるかと思いますが、これについては最近だとビデオ通話を使ったリモート飲みが流行っていますね。こんな時だからこそ、何か面白い工夫をして乗り越えようという姿勢は素敵だなと思います。

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参考文献&引用

#1 Stephen X Zhang, Yifei Wang, Andreas Rauch, Feng Wei. Unprecedented disruption of lives and work: Health, distress and life satisfaction of working adults in China one month into the COVID-19 outbreak. Psychiatry Research, 2020; 112958.