赤羽(Akabane)
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新型コロナウイルス(COVID-19)と最前線で戦っている現場の医療従事者たちのメンタルヘルスは大丈夫なのか?
2020年4月現在、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的な大流行によって世界中の医療現場が混乱に陥っています。
感染者数が増加するにつれて、ベッドの数は足りなくなりますし、その対応に駆り出される医療従事者の数も足りません。日本では、大手ホテル会社が軽症患者のためにホテルの一室を提供するといった緩和策も講じてはいますが、感染者数が依然増加していて予断を許さない状況に変わりはないかと思われます。
そこで気になってくるのが、現場の医療従事者の方々の心身の健康です。この記事では、現場の医療従事者たちのメンタルヘルスはどうなってしまうのか?というデータを見ていきます。
中国の病院34か所に勤める医療従事者たちの調査結果
2020年3月下旬に中国の武漢大学人民医院が発表した研究(#1)によると、COVID-19と闘う現場の医療従事者のメンタルヘルスが相当まずいことになっていると判明しました。
この研究は、中国の34か所の病院に勤める1257名を対象に、彼らのメンタルヘルスについてアンケート調査を行ったものです。期間は2020年1月29日~2月3日の間で、対象者の特徴はザっと以下の通りです。
- 813名(64.7%)が26~40歳の若者、中年
- 964名(76.7%)が女性
- 764名(60.8%)が看護師
- 493名(39.2%)が医師
- 760名(60.5%)が武漢市内の病院で働いていた
- 522名(41.5%)が医療の最前線に立っていた
具体的なアンケート調査の中身には、うつや不安症状、不眠症、ストレスなどについての診断テストが含まれました。
そしてこうしたアンケート調査の結果、こんなことが分かりました。
- うつ症状を訴えたのは634名(50.4%)
- 不安症状を訴えたのは560名(44.6%)
- 不眠症状を訴えたのは427名(34.0%)
- 精神的なストレスを訴えたのは899名(71.5%)
ここから言えるのは、COVID-19と闘っている医療従事者は軒並みメンタルをやられてしまっているということ。しかもうつ症状を訴えている割合は全体の半分、精神的なストレスに関しては7割超です。
また詳しく見てみると、現場の最前線で働く医療従事者たちは特に上記のようなメンタルヘルスを損なうリスクが高かったようです。彼らは患者の受け入れから直診、ケアまで膨大な仕事をこなさなくてはならない分、精神的な負荷も大きいのではないかと考えられます。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- アンケート調査なので主観が混じる:その分データの精度は落ちる
- どこまで一般化できるか?問題:今回の調査結果はほとんどが中国湖北省の地域から得られたデータで、他のより感染が進んでいない地域や国で同様の結果が得られるか?は分からない
- 長期的なメンタルヘルスへの影響までは分からない:6日間で行われたアンケート調査のため、メンタルヘルスへの影響がその後どうなっていくのか?までは掴めない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- COVID-19の感染拡大で医療の現場は混乱をきたしている
- 中国の病院を舞台にした調査では、COVID-19と闘っている医療従事者でうつや不安症状、不眠症状、精神的ストレスを訴える割合が多いことが確認された
- 特に医療の最前線で働いている人は、患者の受け入れから検査、その後のケアまで一手に引き受けなければいけない分、メンタルヘルスへのダメージは大きいようだ
赤羽(Akabane)
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#1 Lai J, Ma S, Wang Y, et al. Factors Associated With Mental Health Outcomes Among Health Care Workers Exposed to Coronavirus Disease 2019. JAMA Netw Open. 2020;3(3):e203976.