赤羽(Akabane)
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最大28年もの長期研究を含めた信頼性高めの研究
早速ですが、肥満は慢性炎症の原因のひとつだと言われていて、そしてうつ病の原因として、近年は慢性炎症が問題なんではないか?という説が高まってきていたりします。
でここから、「肥満とうつ病にも炎症を通じて深い関係があるんじゃないか?」という疑問が湧いてくるんですね。
大規模なメタ分析によると…
でここからが本題です。肥満とうつ病の関係について、参考になりそうなのが、2010年のメタ分析(信頼性の高い研究方法)の研究(#1)。
この研究によると肥満とうつ病がお互いに関係しあっていることが分かったようです。がその度合いが驚きで、うつ病だと肥満のリスクが58%、逆に肥満だとうつ病のリスクが55%も上がるみたい。
ではまず研究の概要をチェックしていきましょう。
- 15の関連研究を選出、比較的長期にわたる調査を優先
- 総参加者は55387人の男女
- ほとんどがアメリカン、ヨーロピアン
- 太り具合はBMI(Body Mass Index)によって決める
- 追跡期間は3~28年まで比較的長いものが選ばれてる
- うつの診断方法は医師のカウンセリング診断や自己診断形式などがあった
調査期間が比較的長い点はナイスですが、うつ病の診断が自己申告に委ねられている研究も少なからずありました。つまりうつ病の診断の精度としてはちょっと弱いかもしれないということですね。
以上を踏まえて結果は、
- うつ病で肥満のリスクが58%高まった
- 肥満でうつ病のリスクが55%高まった
- 医師の診断によってうつ症状と診断された人たちの間でよりこの傾向が強かった
- 追跡期間が長い研究でうつ病が肥満に強く関係していた
- 20歳以上の間で特に太り気味がうつ病と相関があった
はっきりと結果が出ましたね。この傾向はアメリカンの間でより多く見られ、追跡期間が長い(≒信頼性の高い)研究でハッキリ表れたようです。研究チームは、うつ病と肥満が繋がる要因として次の三つを挙げています。
- 炎症反応
- HPA axis(the Hypothalamic-Pituitary-Adrenal axis)
- 肥満による心理的なストレス
炎症に関しては冒頭で触れた通りで、肥満だと体内で炎症反応がたくさん起こったり、体重増加で体内の炎症経路が増えることも分かっています。
一方で体内の炎症がうつ病と相関関係にあるという研究もあったりして、「炎症反応」こそが「うつ」と「肥満」の仲介役である可能性が高いと考えられます。
次点の可能性としては、HPAの異常が挙げられます。HPAとは視床下部ー下垂体ー副腎系と呼ばれる体内の神経軸のことです。
ストレス応答や免疫、摂食、睡眠、情動、繁殖性行動、エネルギー代謝などを含む多くの体内活動に関して、視床下部、下垂体、副腎の間でフィードバックのある相互作用を行い制御している神経内分泌系。HPA軸(HPAじく)ともいう。
ここで異常が起きると、うつ病だけでなく糖尿病やメタボのリスクが高まります。
最後はシンプルな話で、太っていることにコンプレックスを感じてしまうと。大方の場合「太ってること」は醜く、「痩せてること」こそ理想だという考えが強い。でこうした観念にとらわれると、太ってる自分をストレスに感じてしまったり、周りの目を気にしてしまうようになる、と。
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Floriana S. Luppino, MD; Leonore M. de Wit, MS; Paul F. Bouvy, MD, PhD; Theo Stijnen, PhD,Pim Cuijpers, PhD; Brenda W. J. H. Penninx, PhD; Frans G.Zitman,MD,PhD”Overweight, Obesity, and Depression : A Systematic Review and Meta-Analysis of Longitudinal Studies“,Arch Gen Psychiatry,Vol.67,No.3,pp220-229,2010.
# Keisan 生活や実務に役立つ計算サイト 「BMIと適正体重」
http://keisan.casio.jp/exec/system/1161228732
# Wikipedia 「視床下部ー下垂体ー副腎系」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E5%BA%8A%E4%B8%8B%E9%83%A8-%E4%B8%8B%E5%9E%82%E4%BD%93-%E5%89%AF%E8%85%8E%E7%B3%BB「2018年3月14日アクセス」