肥満と炎症の根深い関係 -遺伝子レベルで因果関係が特定された件-

肥満と炎症の関係

肥満が体によろしくないのは有名な話。というのも、増えすぎた脂肪は体内で慢性的な炎症を引き起こしてこれが早死にのリスクを高めてしまうからです。ザっと挙げても、

  • 心疾患
  • がん
  • 二型糖尿病
  • うつ病

こうした有名どころの慢性病リスクを高めてしまうことが分かっておりまして、日頃の食事管理がいかに大事かを痛感させられる内容かと。

とはいえ、一方でこの肥満と炎症の関係は複雑でして因果関係をハッキリと特定するのが難しいという背景もあったり。

太っている→炎症が起きる?
炎症レベルが高い→太る?
別の要素→太る?
別の要素→炎症が起きる?
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つまり、太っているから炎症が起きるのか、炎症レベルが高い人がたまたま太っていただけなのか、と原因と結果がハッキリしていなかったということ。
万病のもと&アンチエイジングの天敵「慢性炎症」とは?メカニズムと原因を徹底解明。

遺伝子レベルの研究で“肥満”が“体内の炎症”を引き起こしていることが判明

といったところで、こうした因果関係を特定するのに優秀な実験デザインが登場。これは「メンデルランダム化」と呼ばれる実験方法でして、簡単に言うと遺伝子レベルで因果関係を調べるのに有効な手段です。詳しくはこちらで紹介しておりますが、今回で言うと..

肥満と炎症
  • 参加者の遺伝的に炎症レベルが高いか低いかを測定
  • 参加者の遺伝的な太りやすさを測定
  • それぞれが実際の炎症レベル、BMIとどのくらい相関があるか?を調べる

という感じですね。例えば遺伝的に太りやすい人ほど高い炎症レベルが確認されれば、「肥満が炎症を引き起こす原因なんじゃない?」と考えられますし、逆が起これば逆もまた然り。

前置きが長くなりましたが、まさに上のような実験を行った研究(#1)が2018年にオックスフォード大学から発表されておりまして、ザっと中身を覗いてみると、

  • 炎症サインにまつわる研究49件(840~80000名)、代謝や体型にまつわる研究20件(2447~465333名)のデータ集めた
  • 上であげたような遺伝子レベルでの肥満、炎症のリスクを比較
  • 最終的にBMIと二型糖尿病のリスクにどのくらい影響しているか?を調査

こんな様子。要は、過去の大規模なデータから炎症と肥満に関係する遺伝子を調べて、それぞれがどのように影響しあっているか?を調べたんですね。すると結果は、

結果
  • 遺伝的な炎症レベルは肥満や二型糖尿病のリスクと関係がなかった
  • 遺伝的に太りやすいと炎症レベルが高かった
  • 遺伝的な炎症レベルが高いと二型糖尿患者で慢性腎臓病のリスクが高まった
memo
  • 【C反応性たんぱく質】..肥満による炎症レベルアップの40%を占める(95% CI 0.34~0.46)
  • 【活性プラスミンインヒビター】→39%を占める(95% CI 0.19~0.59)

こんな感じに。まとめると、肥満によって体内の炎症が引き起こされることがわかったんですね。代表的な炎症サインであるCRP(C反応性タンパク質)がそのうちの40%近くを占めていることからも、なかなかズブな因果関係であることが分かります。

赤羽(Akabane)

今回の結果で、肥満はやはりアンチエイジングの大敵だと再認識しました。「最近お腹周りがちょっと..」という方は、具体的に以下をザっと見しておくとよろしいかと。

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参考文献&引用

#1 NATALIE VAN ZUYDAM, MATTHIAS WIELSCHER, MARK MCCARTHY ,MARJO-RIITTA JARVELIN,”Increased Obesity Is Causal for Increased Inflammation—A Mendelian Randomisation Study“,Diabetes 2018 Jul; 67.