プロバイオティクスなどの整腸戦略は炎症を鎮める効果があるのか?

栄養成分、物質, 考察編

プロバイオティクスなどの整腸戦略は炎症を鎮める効果があるのか?

プロバイオティクスなどの整腸戦略は炎症を鎮める効果があるのか?

今回は「腸内環境を治す戦略って炎症を抑えるのに役立つの?」というお話です。
 
 
この問題について、現状でより質の高い研究を参考に見ていきましょう。
 

高齢者を対象にプロ、プレ、シンバイオティクスの抗炎症作用を調べたメタ分析

まずは2019年に西園病院が発表したメタ分析(#1)で、10件のRCTから689名の高齢男女を対象に、腸内環境を整える治療法はどのくらい炎症に効くのか?を調べたものです。
 
 
前提として、腸内環境の悪化は慢性的な炎症と関係していることが分かっています。ですので、これを改善するのに人気の治療法はどのくらい役立つのか?というところを見ています。
 
 
まず治療法ですが、ここでは大きく次の3つが含まれました。

 

  • プロバイオティクス(5件):(生きた)善玉菌を直接サプリなどで摂取して
    腸内環境を改善する方法
  • プレバイオティクス(4件):腸内細菌のエサになる食物繊維や糖類などを摂取して間接的に腸内環境を善くする方法
  • シンバイオティクス(1件):プロバイオティクスとプレバイオティクスを組み合わせた方法

 

で各実験内では、対象者を①治療グループ、②プラセボ(偽薬)グループという風に分けて、14~180日間で効果を比較していったようです。
 
 
今回測定した炎症性サイトカインは、C反応性タンパク質(CRP)、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-10、腫瘍壊死因子(TNF-α)、単球走化性タンパク質(MCP-1)と結構幅広く調べているなという印象です。
 
 
そしてこうした実験の結果、こんなことが分かりました。

 

  • 治療グループはプラセボと比べても炎症に改善は見られず!

 

なんとプロバイオティクスなどの腸内治療は、実質何もしない場合と比べても有意な抗炎症効果は得られなかったんですね。
 
 
詳しく数値を見てみると、

 

詳しい結果
  • TNF-α(7件):(標準化平均差 -0.24; 95% CI -0.69 ~0.21; p = 0.30; I2 = 82.7%)
  • IL-10(6件):(標準化平均差 1.00; 95% CI -0.15 ~2.15; p = 0.09; I2 = 96.3%)
  • IL-6(6件):(標準化平均差 -0.13; 95% CI -0.74 ~0.49; p = 0.69; I2 = 90.7%)
  • CRP(4件):(標準化平均差 -1.28; 95% CI -2.62 ~0.06; p = 0.06; I2 = 96.2%)
  • IL-8(4件):(標準化平均差 -0.03; 95% CI -0.67 ~0.61; p = 0.93; I2 = 88.0%)
  • MCP-1(2件):(標準化平均差 -0.11; 95% CI -0.41 ~0.20; p = 0.49; I2 = 0%)
  • IL-1β(2件):(標準化平均差 -0.22; 95% CI -0.81 ~0.37; p = 0.46; I2 = 73.8%)
 

こんな結果でした。含まれた実験のうち2件でしか検証されていないモノはあまり参考にはなりませんが、全体的に見てもパッとしない改善幅です。また「I2」は結果のバラつきを表してして、どれも度合いがかなり大きいのが分かるかと思います。
 
 
「じゃあそのバラつきって期間の違いが影響してるんじゃない?」と考えられますが、実際は各実験の期間の長さはバラつきに影響してなかったみたい。とは言え、そもそもの期間がどれも1~4か月くらいなので、もう少し長期の実験があれば参考になるのに..とは思いましたが。
 
 
他にも各実験で摂るプロバイオティクスの種類や量、食事の中身、個人の腸内環境なんかでも結果はかなりバラつくので、実は正確な効果を報告するのがかなり難しい分野だという点も押さえておくとよろしいかと思います。
 
 
まとめると、現状ではプロ、プレバイオティクスなどの整腸戦略は高齢者に対してはあまり抗炎症作用がなさそうだと考えられます。シンバイオティクスに関しては1件のみなのであまり参考になりませんでした。
 
 
ただ糖尿病患者を対象に同様の実験を行ったメタ分析(#2, #3)では、プロ、シンバイオティクスはプラセボと比べてCRPやTNF-αを有意に改善するという報告が上がっています。元々体内の炎症レベルが深刻なケースだと効果が見込めるのかもしれません。
 

まとめ

では最後に今回のまとめと行きましょう。

 

ポイント
  • プロ、プレ、シンバイオティクスは高齢者に対しては抗炎症作用が見られず
  • プロ、シンバイオティクスは糖尿病患者に対しては一部抗炎症作用が見られた
  • 元々体内の炎症レベルが高い人ではこうした整腸戦略の恩恵を受けられるのかも
 

ひとまずはこんな感じで解釈しておくと良さそうです。ここ数十年でこの分野の研究はかなり進んでいますが、細かい部分の解明はこれからですね。

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赤羽(Akabane)

プロバイオティクスやプレバイオティクスについては以下にまとめてあるので、興味のある方は続きをご覧ください。

プロ&プレバイオティクスについてはこちらもどうぞ

参考文献&引用

#1 Qu H, Zhang Y, Chai H, Gao ZY, Shi DZ. Effects of microbiota-driven therapy on inflammatory responses in elderly individuals: A systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2019 Feb 6;14(2):e0211233.

#2 Zheng HJ, Guo J, Jia Q, Huang YS, et al. The effect of probiotic and synbiotic supplementation on biomarkers of inflammation and oxidative stress in diabetic patients: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Pharmacol Res. 2019 Apr;142:303-313.

#3 Tabrizi R, Ostadmohammadi V, Lankarani KB, et al. The effects of probiotic and synbiotic supplementation on inflammatory markers among patients with diabetes: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Eur J Pharmacol. 2019 Jun 5;852:254-264.