21種類の抗うつ剤を総まとめ!副作用のリスクが小さいor最も効果が高いのは..?

21種類の抗うつ剤を総まとめ!副作用のリスク小&最も効果が高いのは..?

赤羽(Akabane)

今回は「抗うつ剤って色々あるけどどれが一番効くの?」というお話です。

21種類の抗うつ剤を総まとめ!副作用のリスク小or最も効果が高いのは..?

抗うつ剤ってたくさん種類あるけど、一体どれが効果的なんだろう…?

この記事では、上記テーマについて参考になるデータを見ていきます。

21種類の抗うつ剤の効果をまとめた『Lancet(ランセット)』掲載研究

2018年に医学雑誌『Lancet(ランセット)』に掲載された系統的レビュー&メタ分析(#1)では、反応率や寛解率、治療の持続性、副作用のリスクなどから総合的に判断した「優秀な抗うつ剤」「効果の薄い抗うつ剤」をまとめてくれていました。

この研究は、522件のRCT から中等〜重度のうつ病を抱える116,477名(平均44歳)のデータを集めたもので、それぞれの実験では、ザッと以下のような実験を行っています。

  • 参加者は【抗うつ剤グループ vs. プラセボ(偽薬)グループ or 他の抗うつ剤】という風にランダムで振り分けられる
  • 実験期間は中央値で8週間で、うつ病の改善レベルを比べる
  • 他にも、実験中の脱落率、抗うつ剤の反応率や寛解率、投薬治療の継続率、副作用などもチェック

続いて、今回分析対象になった抗うつ剤はザっと以下の通りです。

  • アゴメラチン
  • アミトリプチリン
  • ブプロピオン
  • シタロプラム
  • クロミプラミン
  • デスベンラファキシン
  • デュロキセチン
  • エスシタロプラム
  • フルオキセチン
  • フルボキサミン
  • レボミルナシプラン
  • ミルナシプラン
  • ミルタザピン
  • ネファゾドン
  • パロキセチン
  • レボキセチン
  • セルトラリン
  • トラゾドン
  • ベンラファキシン
  • ビラゾドン
  • ボルチオキセチン

*アルファベット順

そして上記の分析の結果をまとめると、ザッとこんな感じになります。

結果
  • 全種類の抗うつ剤は、プラセボと比べるとうつ病改善の効果が有意に高かった
  • (⇧)反応率が特に高かったのは、上位からアミトリプチリン、ミルタザピン、デュロキセチン、ベンラファキシン、パロキセチン
  • (⇧)脱落率が特に低かったのは、上位からアゴメラチン、フルオキセチン、エスシタロプラム、ネファゾドン、シタロプラム
  • (⇩)副作用による脱落率は、抗うつ剤全般でプラセボよりも高かった。特に高かったのは、上位からクロミプラミン、アミトリプチリン、トラゾドン、ベンラファキシン、フルボキサミン
  • 抗うつ剤同士を比較した実験をまとめたところ、特に効果が高かったのは、アゴメラチン、アミトリプチリン、エスシタロプラム、ミルタザピン、パロキセチン、ベンラファキシンで、特に効果が低かったのは、フルオキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、トラゾドン

以上の結果を総合すると、現時点で最も良さげな抗うつ剤は「アゴメラチン」「エスシタロプラム」「ボルチオキセチン」「ミルナシプラン」「パロキセチン」あたりだと考えられます。これらの抗うつ剤は、副作用などによるドロップアウトが少ないうえに、反応率や寛解率も全体の真ん中あたりを安定してキープしており、他の抗うつ剤との直接対決でも優位な効果が確認されています。
*ミルナシプランはデータ数が少ないので、あくまで暫定的な結果。パロキセチンは、データも多くて効果も結構高いが、同時に副作用による脱落率もやや高めな点が気になる。

「アミトリプチリンが入らないのは何故..?」この点については、副作用による脱落率を考慮しての結果でして、最も低いアゴメラチンのオッズ比1.21(95%CI 0.94, 1.56)に対して、2位のアミトリプチリンではオッズ比3.11(95%CI 2.54, 3.82)とかなり高くなっています。同じ理由で、反応率上位5位までの抗うつ剤は全て外れます。

また、この度の分析を俯瞰的に見渡してみると、「強力な効果が出ている抗うつ剤はそれなりに副作用のリスクも高い」という共通点も見て取れます。私の判断基準としても、まず副作用のリスクが小さくて、その上で効果もそれなりに見込めることが前提でした。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 子どもは対象外: 18歳以上のみを対象としているので、子どもへの効能については同じとは考えにくい。現に、同研究者による2016年のメタ分析(#2)では、フルオキセチンでしか有意な効果が確認されなかったという報告が上がっている
  • 全体の半分は北アメリカの研究: 全体の48%が北アメリカ、7%がアジア、27%がヨーロッパで行われた研究が占めている
  • 「うつ病」の細かい症状までは考慮していない: うつ病にも細かいサブタイプがあるが、今回の分析ではこれを一緒くたにしている。その為、症状を細かく分けた場合にどの抗うつ剤が効くのか?までは分からない

特に、子どもで結果が違う可能性が高いとということと、うつ病を細かい症状別に分けた時にどの抗うつ剤がベストなのかがわかっていない、というのは重要なポイントですね。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • アゴメラチン、エスシタロプラム、ボルチオキセチン辺りは、副作用のリスクが小さく、それなりに安定した効果が確認されており、データも豊富である
  • フルボキサミン、レボキセチン、トラゾドン辺りは、効果が弱い割に副作用のリスクも高く、選択肢からはまず外れそうだ
  • ただし、今回の結果は18歳以上の大人でのみ適用され、うつ病という精神疾患を一緒くたにして分析している

赤羽(Akabane)

当研究チームは、過去にも12種類の抗うつ剤の効果を同様にまとめていまして、今回の知見は言わばそのアップデート版です。まだまだ研究に課題はあるものの、現時点で最も参考になるデータなので、ひとまず大まかな格付けだけでも押さえておくと◎

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参考文献&引用

#1 Cipriani A, Furukawa TA, Salanti G, et al. Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder: a systematic review and network meta-analysis. Lancet. 2018;391(10128):1357-1366. doi:10.1016/S0140-6736(17)32802-7

#2 Cipriani A, Zhou X, Del Giovane C, et al. Comparative efficacy and tolerability of antidepressants for major depressive disorder in children and adolescents: a network meta-analysis. Lancet. 2016;388(10047):881-890. doi:10.1016/S0140-6736(16)30385-3