【腸筋軸】トレーニング効果を半減させないためには腸内環境にも気を遣ったほうが良さそうだ

「腸と筋肉は繋がっているんだ!」トレーニング効果を半減させないためには腸内環境にも気を遣ったほうが良さそうだ

赤羽(Akabane)

今回は「腸内環境が筋肉の発達に影響を与える『腸筋軸』」についてのお話です。

【腸筋軸】トレーニング効果を半減させないためには腸内環境にも気を遣ったほうが良さそうだ

腸は第2の脳とも言われていて、体のあらゆる部位の健康に関係していることがわかってきています。もはや、ただの消化器官ではありません。

というわけで、今回は「腸と筋肉は繋がっているんだ!筋肉の発達には腸内環境が大きく関係しているんだ!」というデータを見ていきます。

腸は筋肉と繋がっている!「腸筋軸」に関するレビュー研究

2020年にグダニスク医科大学が発表したレビュー研究(#1)では、腸は筋肉と繋がっている!とする「腸筋軸(Gut-Muscle Axis)」についてまとめてくれています。

このレビューでは、腸と筋肉が繋がっている!とする根拠が幾つかピックアップされていて、ザッとこんな感じです。

  • 糖代謝機能アップ: 善玉の腸内細菌が、食物繊維を代謝して産生される短鎖脂肪酸と結びつく受容体「GRP41」は、骨格筋で使われる糖代謝を高めるように機能することがわかっていて、この辺りのエネルギー供給効率がパフォーマンスに影響するなど
  • 免疫システムの正常化: 免疫システムの暴走は全身に炎症を引き起こして、筋肉の発達も阻害することになる。短鎖脂肪酸の中でも「酪酸」の抗炎症効果が高く、腸のバリアを強化したり、抗菌物質の分泌を促したり、炎症性サイトカインの発現を減らしたりして、慢性的な炎症による免疫システムの暴走、そして更なる炎症の拡大という悪循環を防ぐなど
  • 神経伝達物質の生成: 最近では「腸脳軸(Gut-Brain Axis)」という腸と脳の自律神経を介した繋がりが存在するという説も濃厚で、腸内環境の改善によって脳の神経伝達物質の生成も促進され、メンタルヘルスの安定などを介して間接的にパフォーマンスが向上するなど
  • ミトコンドリアの活性化: 善玉の腸内細菌が産み出す短鎖脂肪酸(主に酪酸)が骨格筋のエネルギー代謝回路(クレブス回路=クエン酸回路)に入って、その循環を活性化させるなど
  • ビタミンの合成: 腸内細菌はビタミンB群やビタミンKなどを合成することができ、こうしたビタミンが体内のエネルギー代謝をサポートしたり、骨格筋の基盤になる役割を担っていて、エネルギー供給の効率を高めたり、同時に代謝によって老廃物が発生するのを防いで酸化ダメージを減らすなど

*ミトコンドリア…細胞内に存在するエネルギー工場

全体的に、【腸内環境を整える&善玉の腸内細菌を増やす→腸内細菌による短鎖脂肪酸産生が増える→代謝、免疫システム、神経伝達物質まわりが改善→筋肉の発達!】といった経路がメインになっているようです。ただ、上記以外の経路もまだまだたくさんありますし、あくまで代表的なモノを取り上げたということでおひとつ。

腸筋軸のメカニズムを実戦に活かす方法

以上を踏まえて、腸内細菌を良い状態に保ったり、今よりも改善するためには、ザッと以下のような対策ができましょう。

  • 炭水化物をしっかり摂る: 腸内細菌が短鎖脂肪酸を産生するには、食物繊維の代謝が必須なので、炭水化物(糖質+食物繊維)をしっかり摂る
  • たんぱく質や脂質を摂り過ぎない: たんぱく質は筋肉の合成に欠かせない栄養素で、脂質もホルモンの材料になったりするが、摂りすぎると腸内の悪玉菌が増えたり、腸内環境が悪化するという報告がある
  • 適度なトレーニングを心がける: 適度な運動は腸内環境の改善にも効果的だが、トレーニングによって体に負荷をかけすぎると、腸のバリアの穴が広がったり(リーキーガット)、酸化ストレスや慢性的な炎症を引き起こすことがある

まとめると、腸内環境を荒らすような過度なトレーニングを避けつつ、腸内細菌のエサを十分確保できるように栄養バランスが摂れた食事を心がけよう!といったところでしょうか。他にも、睡眠の質を高めたり、生活の質を底上げする方法ならどれも効き目はあるかと思われます。

糖質制限では、炭水化物をカットする代わりにたんぱく質や脂質が増えますし、ピンポイントで腸内環境にはよろしくなさそうですね。(食物繊維はしっかり摂ろう!という糖質制限もありますが)

注意点・まとめ

ただし注意点として、こうした研究はまだ初歩段階で、ヒトを対象に検証したものは少ないです。これから追試が増えて、具体的にどんな風に腸内環境を整えれば効果的なのか?といった疑問が解明されていけばなお良しです。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 腸と筋肉は繋がっている!という「腸筋軸(Gut-Muscle Axis)」
  • 腸内環境を整えることで、エネルギー代謝や免疫システムのメンテナンス、神経伝達物質の分泌促進などを通して、筋肉のパフォーマンスや発達を高める効果があると考えられる
  • 食事の面では、糖質制限などによって腸内細菌の餌となる食物繊維を減らしてしまわないように、運動の面では、過度なトレーニングで腸内環境を荒らしてしまわないように適度なレベルを心がけることが大切かもしれない

赤羽(Akabane)

体のどの部位を調べていても、何かと話題になる「腸内環境」ですが、改めて大切さがわかる内容でした。今後はヒトでの検証も増えれば、もっと詳しいことが分かってくるんじゃないかと思います。

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参考文献&引用

#1 Przewłócka, K.; Folwarski, M.; Kaźmierczak-Siedlecka, K.; Skonieczna-Żydecka, K.; Kaczor, J.J. Gut-Muscle Axis Exists and May Affect Skeletal Muscle Adaptation to Training. Nutrients 2020, 12, 1451.