赤羽(Akabane)
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一流のアスリートのパフォーマンスを支えているのは「腸内細菌」かもしれないぞ
早速ですが、参考になるデータを見ていきます。
一流のランナーの糞便にのみ確認された「特定の腸内細菌」とは..?
2019年にが発表した研究(#1)で、どうやら一流のランナーのうんちには特定の腸内細菌が確認されたみたいです。
これは2015年にボストンマラソンを走った15名のランナーと、普段座りがちな10名を対象に行われた実験で、彼らにマラソンを走破してもらいました。
でその前後1週間で彼らの糞便を採取して、そこから腸内細菌の構成を調べたんですね。
するとこんなことが分かったようです。
- マラソン後の糞便にはベイヨネラ属の腸内細菌の増加が見られた
- マラソンのタイムが速いほど、またはマラソンランナーでベイヨネラ属細菌が多く見られた
どうやらマラソンのパフォーマンスが高いほうで「ベイヨネラ属」の細菌が多かったみたい。
で他にも、このベイヨネラ属の菌をマウス16匹に投与したところ、比較グループのマウス16匹と比べてトレッドミルの走行距離が13%伸びたようです。
考えられるメカニズムは?
こうした結果をまとめると、「ベイヨネラ属」の腸内細菌がヒトやマウスで運動のパフォーマンスを上げた可能性が高いと考えられます。
メカニズムとして挙がるのは、やはり短鎖脂肪酸の「酪酸」でしょうか。腸内細菌が「痩せる脂肪」で話題の短鎖脂肪酸を産生しているのはご存知かと思いますが、ベイヨネラ属は中でも「酪酸」をメインに作ってくれる菌(#2)であることが分かっています。
で酪酸には、運動パフォーマンスや骨格筋内のミトコンドリアを活性化させてくれる効果(#3)が報告されていて、これがエネルギー源として機能してくれているからでは?と考えられるんですね。
注意点・まとめ
では最後に今回の結果をまとめます。
- 一流マラソンランナーのマラソン後には「ベイヨネラ属」の腸内細菌がいっぱい居た
- ベイヨネラ属は短鎖脂肪酸の一種「酪酸」を主に産生してくれる
- 酪酸は骨格筋のエネルギー源になって運動パフォーマンスを上げてくれる
- 実際にベイヨネラ属の細菌を投与したマウスではトレッドミルの走行距離が伸びた
こんな感じでしょうか。メカニズムもハッキリしていて、割と信憑性はあるんではないかと思います。
ただ研究の質としてはまだまだ低いですし、他の未だ特定されていない腸内細菌も関わっている可能性は大いにあります。あくまで一つの要素として押さえて、今後も慎重に見ていく必要がありますね。
赤羽(Akabane)
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#1 Jonathan Scheiman, Jacob M. Luber, Theodore A. Chavkin, et al. Meta-omics analysis of elite athletes identifies a performance-enhancing microbe that functions via lactate metabolism. Nature Medicinevolume 25, pages1104–1109 (2019).
#2 Stephen K. C. Ng and Ian R. Hamilton. Lactate Metabolism by Veillonella parvula. J Bacteriol. 1971 Mar; 105(3): 999–1005.
#3 Joshua J Todd. Lactate: valuable for physical performance and maintenance of brain function during exercise. Bioscience Horizons: The International Journal of Student Research, Volume 7, 2014, hzu001.