【ただし条件あり】過去に他人を傷つけたことを思い出して自己嫌悪に陥るならその相手に同情を寄せるといいらしい

【ただし条件あり】過去に他人を傷つけたことを思い出して自己嫌悪に陥るならその相手に同情を寄せるといいらしい

赤羽(Akabane)

今回は「過去の過ちを思い出してメンタルを抉られる時の対処法」についてのお話です。

【ただし条件あり】過去の過ちを思い出して自己嫌悪に陥るならその被害者に同情を寄せるといいらしい

過去の過ちによるメンタルダメージを”同情”で回避できる!という実験結果

2019年にフローニンゲン大学が発表したメタ分析(#1)によると、過去に他人を傷つけた出来事を思い出してメンタルを抉られる時、その相手に同情を寄せればダメージを回避できる人、むしろ自己嫌悪に陥ってしまう人がいることが分かったみたいです。

どういうことかというと、過去の過ちを思い返す時、そこから自己嫌悪に陥らないように人それぞれ色々な対処法があるわけです。例えば当研究で挙げられているものだと、以下のような方法があります。

  • 過去の過ちの被害者に同情を寄せる(コンパッション)
  • 当事者というより第三者の視点から見る(客観視)
  • 今の自分は昔の自分とは違って成長していると考える(過去と現在の変化の強調)
  • 過去の自分と今の自分は別人であると捉える(ディスアイデンティフィケーション)

この研究では、7件の関連実験をまとめたメタ解析を行っていまして、それぞれの実験は5~10年前にあった「他人を傷つけてしまった出来事」を参加者に思い出してもらうという内容でした。実験ごとの違いは、”思い出す”ことによる自己嫌悪・非難の気持ちへの対処法で、ちょうど上記4つの対処法を各実験で一つずつ試してもらったようです。

また実験が始まる前には、参加者らの「セルフイメージが過去と今でどのくらい同じなのか?」を見極める調査を行った様子。こうした背景には、セルフイメージの類似性によって過去の過ちに対するリアクションが変わることが関係しており、例えば「自分は当時と今ではさほど変わらない」と思っている人ほど、そういった出来事に対してより当事者意識が強くなると予想されますからね。

果たして実験の結果をすべてまとめると、こんなことがわかりました。

結果
  • 上記の4つの対処法すべてで、自己非難や罪悪感、後悔、恥といった感情を弱める効果が確認された(効果は全体的に弱め)
  • 最も効果が高かったのはコンパッションだった
  • ただしコンパッションは、当時と今の自分を同じだと捉える人では逆効果となり、自己非難の気持ちを強めてしまうことが分かった

まとめると、過去と今の自分は別人だと考える人はコンパッションで自己嫌悪・非難といった気持ちが弱まり、一方で同一視している人ではかえって火に油を注ぐ結果になったんですね。当然、同一視する場合の方が”今”の自分にも関わってくるので、その分同情すればするほど自分が嫌になってくるのではないか、と。

また面白いことに、“同一視”して自己非難を強めた人たちでは、同時にその相手への非難も強まることがわかりました。理由はよくわかりませんが、今の自分にも関係があると思うからこそ、当時の記憶に没入し、結果として相手の落ち度も見えてくるのでしょうかね..?

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • メタ分析だがすべて同じ研究チームの実験を集めている: 今回の研究チームが各パターンの実験を主導し、それらの結果をメタ分析しているので、データの出どころは偏っている
  • 実験デザインの質は高くない: どの実験も、参加者から数年前の過ちを聞き出しているだけで、その解釈・回答はバラバラだった。その分、質問に対して的を得ていない回答は排除するスタンスをとっていたため、データも一回り少なくなってしまっている
  • 効果量は全体的にかなり小さい: メタ分析では全体の効果の大きさを直感的に表す「効果量」があるが、この結果がすべての対処法で軒並み小さかった

実験の手法が少々ざっくばらんな点と、効果量自体は些細なものだった点は重要かと。特に効果量の方は、上記で挙がった対処法によるバッファー効果の大きさを表しているので、これが弱いとなると、どれ程期待していいものなのか?となります。

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 過去に他人を傷つけた出来事を思い出して自己嫌悪に陥るなら、その相手に同情を寄せるといいらしい
  • 過去に傷つけてしまった相手に同情を寄せたり、当時の出来事を第三者の視点から振り返ったり、今の自分は昔の自分とは違うと考えたり、過去の自分と今の自分は全くの別人であると捉えるなど、いろいろな対処法が効果的だと判明した(ただし効果はかなり小さい)
  • 今の自分と過去の自分を切り離して考えられる人は、当時傷つけてしまった相手を思いやることで、その出来事による自己嫌悪などの感情の沸き起こりを鎮めることができるかも

赤羽(Akabane)

なかなか大がかりな研究でしたが、まだはっきりとしたことは言えないかなと思います。ただ一つ、過去に他人を傷つけた出来事を思い出すときに、当時と今の自分を同一視する人の方が自己嫌悪に陥りやすい!というのは間違いなさそうです。

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参考文献&引用

#1 Meerholz EW, Spears R, Epstude K. Having pity on our victims to save ourselves: Compassion reduces self-critical emotions and self-blame about past harmful behavior among those who highly identify with their past self. PLoS One. 2019 Dec 12;14(12):e0223945. doi: 10.1371/journal.pone.0223945. PMID: 31830055; PMCID: PMC6907768.