メタ分析: 水溶性食物繊維「イヌリン」の血糖値コントロール効果はいか程のものなのか?

メタ分析: 水溶性食物繊維「イヌリン」の血糖値コントロール効果はいか程のものなのか?

赤羽(Akabane)

今回は「水溶性食物繊維『イヌリン』の健康効果」についてのお話です。

水溶性食物繊維「イヌリン」の血糖値コントロール効果はいか程のものなのか?

食物繊維といえば、血糖値のコントロールなどを通して、2型糖尿病リスクの改善に役立つことが分かっています。

ただ、食物繊維と一口に言っても、ザッと以下のように種類があります。

  • 水溶性食物繊維…水に溶けるタイプの食物繊維。胃腸の中で粘着性のある液状になって、食事の消化吸収を緩やかにすることで、血糖値の上昇も緩やかにする効果がある
  • 不溶性食物繊維…水に溶けないタイプの食物繊維。胃や腸で水を吸収して、どんどんかさを増していき、腸の運動を刺激して便通を促す効果がある

というわけでこの記事では、食物繊維の中でも水溶性食物繊維の一種「イヌリン」の効果をまとめたデータを見ていきます。

水溶性食物繊維イヌリンの血糖値周りへの効果を調べたメタ分析

2019年に湖北医薬学院が発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、水溶性食物繊維イヌリンは血糖値など糖尿病関連の数値を全般的に改善する!ということが分かりました。

この研究は、33件のRCTから1,346名分のデータを集めたもので、イヌリンのサプリを飲んだ場合に血糖値やその他糖尿病に関わる指標にどんな効果があるのか?を検証しています。各実験のデザインはザッとこんな感じでした。

グループ分け

  • イヌリングループ: イヌリンのサプリ単体や、イヌリンを含むシンバイオティクスサプリを毎日5.5~30g(中央値10g)を飲む
  • コントロールグループ: 砂糖やマルトデキストリン、セルロースなどの糖質・不溶性食物繊維を毎日飲む

測定項目

  • 空腹時血糖値…33件
  • HbA1c(ヘモグロビンA1c、血中の糖と結びついたヘモグロビンの割合)…12件
  • 空腹時インスリン値…26件
  • HOMA-IR(空腹時の血糖値とインスリン値を使って算出するインスリンの効き目の指標)…18件

実験期間は20~252日間(中央値56日間)で、健康な人や過体重の人、糖尿病予備軍や二型糖尿病患者まで幅広い人が対象になりました。

そして上記の分析結果をまとめると、以下のような結果になりました。

結果
  • イヌリンのサプリで、空腹時血糖値やHbA1c、空腹時インスリン値、HOMA-IRが有意に減少した
  • 糖尿病予備軍の人や二型糖尿病患者で、特に上記の高い効果が確認された
  • イヌリンの効果を引き出すには、毎日10gを最低6週間以上飲み続ける必要があった

ここから言えるのは、イヌリンで血糖値をはじめあらゆる糖尿病関連の数値が改善し、その効果は特に糖尿病の危険性が高い人達で有効だった!ということです。副作用に関しても、大半の研究では特に報告されておらず、数件だけ「お腹の不調」や「ガスが溜まった」という報告があった程度でした。

ちなみに、糖尿病予備軍・二型糖尿病患者の人でどのくらい効き目が大きかったのか?という点については、以下の比較をご参考までに。

糖尿病予備軍・二型糖尿病患者 vs. 参加者全体

(それぞれ比較対象はコントロールグループ)

  • 空腹時血糖値…−0.60 mmol/l (95% CI − 0.71, − 0.48 mmol/l; P < 0.00001; −7.15%) vs. − 0.21 mmol/l (95% CI − 0.33, − 0.09 mmol/l; P = 0.0005; -4.68%)
  • HbA1c…−0.58% (95% CI − 0.83, − 0.32%; P < 0.00001; -7.00%) vs. −0.39% (95% CI − 0.65, − 0.13%; P = 0.003; -6.13%)
  • 空腹時インスリン値…−1.75 µU/ml (95% CI − 2.87, − 0.63 µU/ml; P = 0.002; -16.58%) vs. −1.22 µU/ml (95% CI − 1.90, − 0.54 µU/ml; P = 0.0005; -13.06%)
  • HOMA-IR…−0.69 (95% CI − 1.10, − 0.28, P = 0.001; -25.34%) vs. -0.57 (95% CI − 0.84, − 0.31; P < 0.0001; -17.83%)

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点は押さえておくと良さそうです。

注意
  • 一部結果に出版バイアスの恐れがある:空腹時インスリン値の結果において、否定的な結果より肯定的な結果ばかりが優先して出版されている可能性がある
  • 長期的な効果はどうなるか分からない:最長で9ヵ月までの実験しか行われていないので、年単位でどのような結果になるか?は不明

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 胃腸で粘性のある液状になって食べ物の消化吸収を緩やかにする水溶性食物繊維の一種「イヌリン」
  • 今回のメタ分析によると、血糖値をはじめ、あらゆると運用病関連の数値を減少(改善)させる効果が確認されたようだ
  • 特に糖尿病予備軍・二型糖尿病患者に絶大な効果が得られ、その効果を引き出すには毎日10gを6週間飲み続けるといいみたいだ

赤羽(Akabane)

今回のメタ分析は中々良いデータでしたね。血糖値やインスリン感受性に問題のない方は必要ないかもしれませんが、糖尿病のリスクが少しでも高い方は試してみて損はないかと思います。

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参考文献&引用

#1 Wang L, Yang H, Huang H, et al. Inulin-type fructans supplementation improves glycemic control for the prediabetes and type 2 diabetes populations: results from a GRADE-assessed systematic review and dose-response meta-analysis of 33 randomized controlled trials. J Transl Med. 2019;17(1):410. Published 2019 Dec 5. doi:10.1186/s12967-019-02159-0