赤羽(Akabane)
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14種類の有名なダイエットの減量&健康効果を徹底比較した超規模級の研究結果
この記事では、上記の疑問について、ここ最近で最大規模の研究データを見ていきます。
121件の試験を総まとめして分かった14種類のダイエット法の減量&健康効果
2020年にマクマスター大学や蘭州大学などの研究チームが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1)によると、14種類のダイエットを比較した結果、どのダイエット法も短期的には大体同じように痩せることが分かりました。ただし細かいところで若干違いもあるので、その点はこの後詳しく見ていきます。
この研究は、121件のRCTから21,942名分(平均49歳)のデータを対象に、計14種類の有名なダイエットと3種類の一般的な食事の効果を比較したもの。今回対象に含まれたダイエットと食事管理は以下の通りです。
14種類のダイエット
- 地中海式ダイエット: 南ヨーロッパの地中海沿岸の食生活をモチーフにした食事法
- DASHダイエット: 「Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を止めるための食事介入法)」の略で、ミネラルなどを中心に積極的に摂っていく高血圧の改善に特化した食事法
- ポートフォリオ・ダイエット: 悪玉コレステロールを減らす食品を積極的に摂るスタイルで、ベジタリアンがベースのダイエット
- オーニッシュ・ダイエット: 低脂肪ダイエットの中で特に有名なダイエット
- アトキンス・ダイエット: 糖質制限ダイエットの中で特に有名なダイエット
- ゾーン・ダイエット: 糖質制限ダイエットの中で特に有名なダイエット
- パレオダイエット: 旧石器時代の狩猟採集民族の暮らしをモチーフにした食事法
- ビッゲスト・ルーザー・ダイエット: TV番組の企画から有名になったダイエットで、低カロリーを意識しつつ間食をこまめに挟むことで満腹感を維持する
- ウェイト・ウォッチャーズ・ダイエット: 独自のポイント制を採用し、カロリー摂取量よりも食品のチョイスを重視したダイエット
- ボリュメトリクス・ダイエット: カロリー密度に着目して、なるべく満足いくだけ食べながらカロリー摂取量は抑えるダイエット
- サウスビーチ・ダイエット: 糖質制限ダイエットの中で特に有名なダイエット
- スリミング・ワールド・ダイエット: カロリー摂取量よりも食品のチョイスを意識したダイエットで、一部健康的な食品群は「フリーフード」として好きなだけ食べて良いとしている
- ローズマリー・コンリー・ダイエット: 低脂肪ダイエットの中で特に有名なダイエット
- ジェニークレイグ・ダイエット: パック包装された食事が用意してあって、エントリーすることで食事管理をしてもらいながらダイエットを行う
比較対象になる通常の食事方法
- 低脂肪ダイエット
- 食事管理のアドバイス
- 通常の食事
実験期間は中央値26週間で、上記のダイエットを大きく「糖質制限」「低脂肪」「バランスの取れた三大栄養素」に分類して、それぞれの体型やその他健康の指標への効果を色々なパターンで比較していきました。
ダイエット種別 | ダイエット | 炭水化物(%kcal) | たんぱく質(%kcal) | 脂質(%kcal) |
---|---|---|---|---|
糖質制限 | アトキンス、サウスビーチ、ゾーン | ≤40 | 30 | 30-55 |
バランス三大栄養素 | 地中海、パレオ、ポートフォリオ、DASH、ビッゲスト・ルーザー、スリミング・ワールド、ボリュメトリクス、ウェイト・ウォッチャー、ジェニークレイグ | 55-60 | 15 | 21-≤30 |
低脂肪 | 低脂肪、オーニッシュ、ローズマリー・コンリー | 60 | 10-15 | ≤20 |
そしてこうした分析の結果、以下のようなことが分かりました。
- 糖質制限と低脂肪のダイエットは、通常の食事方法と比べて6ヵ月の間で同じように痩せて、同じような血圧の改善が見られた(体重:-4.63 vs. -4.37 kg; 収縮期血圧:-5.14 vs. -5.05 mmHg; 拡張期血圧:-3.21 vs. -2.85 mmHg)
- バランス三大栄養素のダイエットは糖質制限や低脂肪と比べると、6ヵ月の間で体重や血圧の改善値は少なかった
- 糖質制限のダイエットは、低脂肪やバランス三大栄養素と比べて、6ヵ月の間でLDL(悪玉コレ)の改善値は小さかったが、HDL(善玉コレ)の改善値は大きかった(LDL:-1.01 vs. -7.08 vs. -5.22 mg/dL; HDL:+2.31 vs. −1.88 vs. −0.89 mg/dL)
- ダイエット全体で見ると、6ヵ月間で体重や血圧の改善値が最も高かったのは「アトキンス」「DASH」「ゾーン」だった
- 1年の期間で見ると、「地中海式」を除く全てのダイエットで、減量や血圧、コレステロール値などの改善効果が低減していた(体重でいうと減量幅が1~2kg元に戻った)
まとめると、どのダイエットも、通常の食事と比べると、半年のスパンであれば大体同じように減量に成功していましたが、1年間の中長期で見ると全体的に改善幅が落ちることが分かったんですね。
この結果は、「やっぱりダイエットを続けるのは大変なんだなぁ~」ということを示唆しているとも言えますし、「そりゃ長く続けていれば改善のペースは当初より落ちるよね..」とも解釈できます。
また測定した指標別に、通常の食事と比べて特に高い効果を叩き出したダイエットを見てみると、ザっとこんな感じでした。
- 体重…ジェニークレイグ、アトキンス>>ボリュメトリクス、パレオ、低脂肪、ゾーン、ウェイト・ウォッチャーズ、ローズマリー・コンリー、DASH、オーニッシュ、地中海式
- 収縮期血圧…パレオ>>アトキンス、DASH、ポートフォリオ、低脂肪、ゾーン、地中海式
- 拡張期血圧…アトキンス>>DASH、ゾーン、低脂肪
- LDL…地中海式
- HDL…統計的に有意な増加を示したダイエットは該当なし
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 分析の手法的にも、実験によるダイエットの直接的な効果の比較はあまり出来ていない:今回のメタ分析は「ネットワーク・メタ分析」という手法で、直接的な比較データでは賄いきれない場合に、別の実験の結果と間接的に比較することでデータを補っていた(実験内での直接比較は59ペアのみで、別の実験との間接比較は407ペアで行われた)
- 実験期間は比較的短い:1年間の中長期まで調査している実験は少なくて、現段階では短期間での効果しか力強い裏付けができていない状態
- ダイエットへの遵守率はほとんど報告されていなかった:実験中にどこまで真摯にダイエットに取り組んでいたか?が分からない分、今回の結果がどこまで正確なデータか?が怪しくなる
3つ目の注意点を踏まえると、1年間の期間で軒並みダイエット効果が下がっているのは、もしかするとダイエットを長続きさせるのが難しくなったからかもしれませんね。
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 今回のメタ分析によると、全17種の有名なダイエットや通常の食事方法等を直接&間接的に比較した結果、6ヵ月の短期では糖質制限や低脂肪が通常の食事よりも同等に痩せやすく、血圧が改善することが分かった。三大栄養素のバランスを保ったダイエットは、上記のダイエットよりは短期的な効果が弱かった
- ただし1年の中長期間で見ると、軒並みどのダイエットも改善幅が落ち込んでいて、ダイエットを年単位で続けるのが難しい可能性を示唆している
- 結局のところ、各々の食生活に合った長続きする食事法を見つけて実践していくのが良さそうだ
赤羽(Akabane)
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参考文献&引用
#1 Long Ge, Behnam Sadeghirad, Geoff D C Ball, et al. Comparison of dietary macronutrient patterns of 14 popular named dietary programmes for weight and cardiovascular risk factor reduction in adults: systematic review and network meta-analysis of randomised trials. BMJ 2020;369:m696.