瞑想によって、直感的により良い選択ができるようになるかもしれない

瞑想によって、直感的により良い選択ができるようになるかもしれない

赤羽(Akabane)

今回は「瞑想によってより良い選択ができるようになる?」というお話です。

瞑想によって、直感的により良い選択ができるようになるかもしれない

瞑想は集中力や注意力などを高めて、認知機能全般にもいいことがわかっているよ!

この記事では、瞑想の上記のような効果について、最近のデータを見ていきます。

瞑想経験が長い人ほど、脳科学レベルでより良い選択ができるようになる?

2019年にサリー大学が発表した研究(#1)によると、瞑想の経験が長い人ほど、ポジティブからネガティブまであらゆる刺激を同等に受け取って、より優れた選択をすることができるようです。

研究では、さまざまな瞑想歴を持つ35名を対象に、まず彼らの瞑想歴をチェックするためにアンケート調査を行いました。その結果、参加者は以下のように振り分けられました。

  • 瞑想未経験者(12名): 22~60歳
  • 瞑想初心者(12名): 18~59歳
  • 瞑想経験者(11名): 23~56歳

経験者の条件…1週間に30分以上の瞑想を少なくとも4年以上続けていること

そして参加者らは、脳波を測定しながら、以下のようなタスクに取り組みます。

  • アルファベットに例えると「AB」「CD」のように、ペアの平仮名がランダムで表示され、どちらかを選択するタスク(参加者は日本人ではないので、彼らにとって平仮名は意味を持たない)
  • タスクは得点制で、ペアには「当たり」と「ハズレ」がある。例えば「AB」のペアでは、Aを選ぶと80%の確率、Bを選ぶと20%の確率で+10ポイントが得られる。逆に、Aは20%の確率で、Bは80%の確率で-10となる…という感じ。CDはコレの70/30%バージョン、EFは60/40%バージョン。
  • こうした当たり/ハズレを練習の段階でタスクを進めながら学習していって、理解度が基準を超えたら本番に突入。本番では、練習で出なかった新しいペアが登場し、参加者にはなるべく高得点を目指していってもらう

*ここで言う「Aを選ぶこと」がポジティブ(正)な刺激で、「Bを避けること」がネガティブ(負)な刺激となる
*どんなペアでも、Aが出ればこれを選ぶことで最も得点を稼ぎやすく、Bが最も点数を引かれやすいことがわかる

要は、2つの選択肢が目の前にパッと表示されて、その刺激に対してどちらがより良い選択なのか?を瞬時に見極めるタスクですね。

得点は、Aの選択肢が出た時の成績(正)から、Bの選択肢が出た時の成績(負)を差し引いた点を参考に、瞑想の経験に応じてどんな差が見られるのか?をチェックしています。

脳波についても、選択後に正解が示された時の事象関連電位(ERP)を測定して、当たりの選択肢を選んで+10得た時のERPと、ハズレを選んで-10失った時のERPを差し引いた値(FRN)を参考にしていきました。つまり、当たりとハズレの場合で、脳の反応にどのくらいの落差があるのか?(どちらからより多く学習しようとしているか?)を見ているんですね。

するとこうした実験の結果、こんなことが分かりました。

結果
  • 得点の結果は、それぞれ瞑想未経験者で-0.11、初心者で0.00、経験者で0.05となり、瞑想経験者ほど得点を得ることからより多くを学ぶということを示唆している
  • 脳波の結果は、瞑想経験が長いほどFRNの値が小さく、当たり(正)からもハズレ(負)からも等しく学習していると考えられる

まとめると、瞑想を長く続けている人ほど、正と負どちらの刺激に対しても同じように学習しようとする脳の動きが見られた、と。一方で、実際の得点結果を見ると、瞑想経験者ほど正の刺激からより多くを学ぶ傾向も確認されました。

瞑想は、意思決定に深く関わる脳の「線条体」という部位を活性化させることがわかっていて、この部位は学習意欲にも関係するドーパミンを受け取って、その効果を発揮するのにも欠かせないパーツであります。この他にも、色々なメカニズムが考えられていて、長期の瞑想経験によって今回のような結果が得られることは十分に考えられるでしょう。

注意点・まとめ

ただし注意点もあって、ザッと以下の点を押さえておくとよろしくかと。

注意
  • サンプルサイズは小さい: 各群の参加者数は少ないので、統計的なパワーは弱い
  • 瞑想の経験に関しては聞き取り調査のみ: 長期的な瞑想の効果を確認するために、今回の実験では参加者らの瞑想歴を聞き取りしただけだった。きちんと瞑想を行なったわけではないので、データの正確性は微妙
  • 違った種類のタスクではどんな結果になるのか?は分からない: タスクによって結果が変わることはよくあるので、今後は別の方法でも検証する必要がありそうだ

では最後に今回のまとめを見ていきましょう。

ポイント
  • 兼ねてから、瞑想によって注意力や集中力といった認知機能が高まるという報告が多数あった
  • 今回の研究では、瞑想を長く続けている人ほどポジティブ/ネガティブどちらの刺激からも等しく学習しようとする脳の働きが確認された
  • 実際の得点結果からは、瞑想経験者ほど得点すること(ポジティブな刺激)からより多くを学ぶことが示唆された

赤羽(Akabane)

瞑想で注意力や集中力など認知機能が高まるという話は色々な実験で明らかになっています。他にも以下のような効果が報告されていて、なかなか面白いですよ。

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参考文献&引用

#1 Knytl, P., Opitz, B. Meditation experience predicts negative reinforcement learning and is associated with attenuated FRN amplitude. Cogn Affect Behav Neurosci 19, 268–282 (2019).