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瞑想と人間性、道徳性、そしてダライ・ラマ
今のダライ・ラマは、瞑想についてこのように仰ったのだそう。
もしも世界中の8歳児が瞑想を教わっていれば、この世界から一世代のうちに暴力や争いはなくなるだろう[筆者訳](#1)
こうした引用からも、瞑想が人間性や道徳、倫理観を高める手段としてかなり期待されているのがわかりますね。
実際にこうした主張を裏付ける結果として、以下のような報告が挙がっています。
- 超越瞑想を実践したら社会規模で攻撃性や暴力が減った(#2)
ちなみに超越瞑想とは、宗教的なルーツがあって念仏を唱えるようなタイプのこと。といったところで、今回は改めて「瞑想は人を道徳的にしてくれるのか?」という疑問について見ていきます。
瞑想は本当に我々の道徳観や人間性を善くしてくれるのか?
参考になるのが2018年にマッセー大学とコヴェントリー大学が発表したメタ分析(#3)で、瞑想は社会性や道徳観を高めるって言うけれど、実際にはそんなに効果ないんじゃない?という主張になっていて何とも波乱の予感が。
まず研究の内容はザッとこんな感じです。
- 21件の研究を集めて
- 瞑想が道徳観に与える影響をしらべた
- 瞑想プログラムの期間は3日間~3ヶ月
全体の3割ちかくが8週間以上瞑想を行なっていて、結構ガッツリ取り組んでる印象ですね。
更に「道徳性って具体的にどんなもの?」という点については、次の5つを調べたみたい。
- 慈愛の精神
- 共感性
- 攻撃性
- 社会的な繋がり
- 先入観、偏見
どれも道徳観を語る上で欠かせない要素かと思います。ちなみに慈愛の精神とは、生きとし生けるものに感謝の気持ちを持ったり、周囲の人たちに愛情を注ぐイメージですね。
ではこれらをまとめるとどうなったか?まず大まかな結果から言うと、
- 瞑想は道徳や社会性をわずかに改善した!(r = 0.26 CI 0.18–0.34)
どうやら全体では瞑想による道徳性向上効果が確認されたようです。が、もう少し細かくみていくと、
- 共感や慈愛の精神を育むのには効果がありそう
- 攻撃性を抑えたり先入観や繋がりの改善には効果がなさそう
こういったこともわかりました。一口に道徳性といっても効果がない部分もある、と。
注意点・まとめ
ただし、幾つか別の注意点もあって、以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 全体の6割の研究は質が低い
- 効果が高く報告されるのは、論文の著者が瞑想をレクチャーした時と、比較グループが何もしない時
この辺りは一応押さえておいたほうが良さそう。論文著者が瞑想を教えるとどうして効果が高くなるのか?はわかっておりませんが、効果を上げたくて瞑想の目的を教えたり論文著者のバイアスがかかっているんでは?との見解でした。
赤羽(Akabane)
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#1 Williamson, M. No title. at
https://mobile.twitter.com/marwilliamson/status/269092321100972032
#2 Haegelin, J. et al.”Effects of group practice of the Transcendental Meditation program on preventing violent crime in Washington, D.C.: Results of the National Demonstration Project“, June–July 1993. Soc. Indic. Res. 47, 153–201 (1999).
#3 Ute Kreplin, Miguel Farias & Inti A. Brazil ,”The limited prosocial effects of meditation: A systematic review and meta-analysis“,Scientific Reports,volume 8, Article number: 2403 (2018).