赤羽(Akabane)
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質の高い研究を分析して判明!「認知機能を改善する最適な運動」とは?
この記事では、上記の疑問について、最新のデータを見ていきます。
質の高い80件の研究を分析して分かった「認知機能改善に最適な運動」
2020年にバーゼル大学と筑波大学の研究チームが発表した系統的レビュー&メタ分析(#1, #2)によると、筋トレや有酸素運動よりもコーディネーショントレーニングの効果が高いことが分かりました。
この研究は、過去30年以内に出版された80件のRCTを集めて、性別や年齢別で認知機能の改善に最も効く運動の特徴について調べたものです。今回対象になった運動はザっと以下の通り。
- 有酸素運動
- 筋力トレーニング
- コーディネーショントレーニング(ボールドリブル、四肢の動きを協調させる運動、物や体をコントロールするなど)
- ミックス(上記を組み合わせた運動)
では、上記の分析の結果、分かったことをざっくり見ていきます。
認知機能を高める最適な運動
- 全体で見ると、運動の認知機能を改善する効果は僅かだったが、結果のバラつきもあまり大きくなく有意なものだった (g = 0.231; 95% CI 0.173–0.289; P < 0.001; I2 = 47%)
- 筋トレや有酸素運動、また色々な運動を組み合わせたミックスの運動よりも、コーディネーショントレーニングが最も効果が高かった
- 運動をする期間が22週間(5ヶ月弱)を超える場合、一回あたり運動時間は長時間の方が効果が高かった
- 性別で見ると、男性の場合は徐々に負荷を増やしていく漸進性トレーニングで、女性の場合は漸進性ではない低〜中強度の運動で最も効果が高かった
- こうした運動による認知機能改善効果は、年齢に関係なく確認された
まとめると、こと認知機能改善においては、今のところコーディネーショントレーニングがベスト!という結果になりました。おまけに、運動を長期間継続する場合は、毎回の運動時間を長めにした方が良いことも判明。
また、性別によっても適した運動は違うようで、男性は回を重ねるごとに強度を高めていく形式、女性はそういった漸進性がない程々の運動がいいみたいですね。
注意点・まとめ
ただし注意点もあって、ザっと以下の点は押さえておくと良さそうです。
- 一部運動の種類によってデータが少ないものがある: 現状では、コーディネーショントレーニングについて調べた研究が比較的少なく、今後データが増えた時に結果が変わるかもしれない
- 調査対象外となった大事な要素が他にもある: 運動強度や対象者の体型・健康状態などは考慮されていないので、この辺りの違いも含めるとどうなるかは分からない
- 参加者の大半は若い子どもと高齢者: 今回の分析に含まれた研究では、平均年齢は48歳であるものの、若者や中年などの世代があまり含まれておらず、こういった年齢層にとってどこまで参考になるかは分からない
では最後に今回のまとめを見ていきましょう。
- 認知機能改善に最も効果的な運動は、筋トレや有酸素を差し置いてコーディネーショントレーニングだった
- 運動で認知機能の改善を目指すならば、少なくとも6ヵ月以上は継続して1時間~1時間半くらいの運動をした方が、高い効果が見込めそうだ
- 性別では全体的に男性の方が効果が高く、男性は強度を徐々に高める漸進性トレーニング、女性は漸進性のない低~中強度のトレーニングで高い効果が出ていた
赤羽(Akabane)
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#1 Ludyga, S., Gerber, M., Pühse, U. et al. Systematic review and meta-analysis investigating moderators of long-term effects of exercise on cognition in healthy individuals. Nat Hum Behav (2020). https://doi.org/10.1038/s41562-020-0851-8
#2 筑波大学『過去30年間の知見から認知機能を改善させる運動を解明 ~運動の種類・時間、性別によって運動が認知機能に与える効果は変わる~』2020年5月19日アクセス。