赤羽(Akabane)
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慢性病の予防にも効果!筋トレで体内の脂質や炎症をガッツリ減らすための条件とは?
早速ですが、この件について参考になる研究結果を覗いてみましょう。
筋トレで慢性病のマーカーを改善!どのくらい善くなる?効果を得る為の条件は?
これは2019年にリオグランデ・ド・スル大学が発表したメタ分析(#1)で、69件の研究から2158名(18~60歳が大半)を対象に、筋トレで脂質や炎症マーカーはどのくらい改善するか?を調べたもの。
今回調査対象になった具体的なマーカーは、
- 総コレステロール(52件)
- 中性脂肪(56件)
- 悪玉コレステロール(LDL)(46件)
- 善玉コレステロール(HDL)(56件)
- C反応性たんぱく質(CRP)(22件)
- アディポネクチン(8件)
この辺りです。対象の炎症性サイトカイン(体内で炎症が起こる時に増える物質)がCRPだけなのが惜しいですが、なかなか幅広いかと思います。
ちなみにアディポネクチンとは脂肪細胞の一種で、簡単に言うと体に「脂肪を燃やせ!」と指令を出してくれる【善い細胞】です。
で各実験で筋トレによってこうしたマーカーにどんな効果があるのか?を見ていくわけですが、平均15週間の筋トレプログラムの結果、まず全体の数値は次のようになりました。
筋トレによる効果(平均15週間)
- 総コレステロール:-8.48mg/dL
- 中性脂肪:-7.26mg/dL
- LDL:-9.99mg/dL
- HDL:+2.81mg/dL
- CRP:-0.365 mg/L
- アディポネクチン:+0.81μg/mL
まとめると、全体的になかなかの改善幅になっています。例えばコレステロール値の改善幅の基準として、2013年に脂質降下薬「スタチン」の効果を検証したメタ分析(#2)を見てみると、
- 18件のRCTを含めたメタ分析を行い、78~282週間にわたる長期間のスタチン投与で脂質改善を実験した研究を総まとめしたところ、実験によってLDLは-39mg/dL、総コレステロールは-41mg/dLの改善が見られた
こういった具合になっています。脂質改善に使われる薬はさすがだなぁと思いますが、期間を比べると今回の筋トレプログラムよりも圧倒的に長いですね。筋トレも1年以上続ければ、スタチンに並ぶ効果が得られるんじゃなかろうか?という希望を抱かせてくれますね。
そしてもう一つ大事なポイント、今回の筋トレ効果を得るには次のような条件が必要だったみたい。
- 実験時に脂質降下薬を服用していないこと:今回の筋トレの効果全般は脂質降下薬を使っている場合には見られなくなった
- 筋トレは漸進的であること:総コレステロール、中性脂肪、CRPの減少とアディポネクチンの増加はボリュームや重量を徐々に高めていく筋トレじゃないと見られなかった
ここから言えるのは、脂質降下薬を使っていたり、ずっと同じ重量やボリュームでやっている生ぬるい筋トレの場合では、あまり効果が見込めないということです。
注意点・まとめ
ただし注意点として、今回の結果にはバラつきが大きかったようです。しかもこうした原因は、細かく調査したりリグレッションテストを行っても分からなかったのだとか。
全体的に研究の質は高くないですし、どうやら各論文で開示されている情報が少なくて特定できないという可能性もありそうです。
では以上を踏まえて今回のまとめといきましょう。
- 筋トレはコレステロール全般、中性脂肪、炎症、脂肪細胞などを結構改善してくれる
- ただ脂質降下薬を使っていたり、筋トレの負荷やボリュームが増えない生ぬるい内容だと効果は得られないみたい
- ただし全体的に研究の質は低くて結果もバラつきが見られる
こんな感じでしょうか。筋トレはあらゆる慢性病のリスク因子まで改善してくれる!ということでおひとつどうぞ。
赤羽(Akabane)
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#1 Costa RR, Buttelli ACK, Vieira AF, et al. Effect of Strength Training on Lipid and Inflammatory Outcomes: Systematic Review With Meta-Analysis and Meta-Regression. J Phys Act Health. 2019 Jun 1;16(6):477-491.
#2 Taylor F, Huffman MD, Macedo AF, et al. Statins for the primaryprevention of cardiovascular disease. Cochrane Database Syst Rev.2013;1(1):1–58.